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q超幾何級数のqモーメント2

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br:=q
μ(w):=0n(a1,,ar;q)n(b1,,br;q)ntn1wqn
とする. 前の記事 0Nに対し, μ(wqN)μ(w)で表す公式を与えた. 今回はμ(wqN)について考える. 前の記事 の命題1は以下のようなものだった.

br:=qとする.
μ(w):=0n(a1,,ar;q)n(b1,,br;q)ntn1wqn
と定義すると, μは差分方程式
(wqb1)(wqbr)μ(w)(wqa1)(wqar)tμ(wq)=0n((wqb1)(wqbr)(wq)r(1b1qn1)(1brqn1))cn1wqn0n((wqa1)(wqar)(wq)r(1a1qn1)(1arqn1))tcn11wqn
を満たす. ここで, 右辺はwに関する多項式である.

この右辺の多項式をp(w)として
(wqb1)(wqbr)μ(w)(wqa1)(wqar)tμ(wq)=p(w)
となる. wwqnとして,
(1b1qn1/w)(1brqn1/w)(1a1qn1/w)(1arqn1/w)tμ(wqn)μ(wq1n)=p(wqn)(wq1na1)(wq1nar)t
の両辺に
(b1/w,,br/w;q)n1(a1/w,,ar/w;q)n1tn1
を掛けると,
(b1/w,,br/w;q)n(a1/w,,ar/w;q)ntnμ(wqn)(b1/w,,br/w;q)n1(a1/w,,ar/w;q)n1tn1μ(wq1n)=(b1/w,,br/w;q)n1(wq)r(a1/w,,ar/w;q)n(qrt)np(wqn)
を得る. これをn=1からn=Nまで足し合わせると
(b1/w,,br/w;q)N(a1/w,,ar/w;q)NtNμ(wqN)μ(w)=1(wq)rn=1N(b1/w,,br/w;q)n1(a1/w,,ar/w;q)n(qrt)np(wqn)=1wrtn=0N1(b1/w,,br/w;q)n(a1/w,,ar/w;q)n+1(qrt)np(wqn1)
となる. よって,
μ(wqN)=(a1/w,,ar/w;q)N(b1/w,,br/w;q)NtN(μ(w)+1wrtn=0N1(b1/w,,br/w;q)n(a1/w,,ar/w;q)n+1(qrt)np(wqn1))
を得る. 以下に命題としてまとめておく.

br:=q
μ(w):=0n(a1,,ar;q)n(b1,,br;q)ntn1wqn
とする. 0Nに対し,
μ(wqN)=(a1/w,,ar/w;q)N(b1/w,,br/w;q)NtN(μ(w)+1wrtn=0N1(b1/w,,br/w;q)n(a1/w,,ar/w;q)n+1(qrt)np(wqn1))
が成り立つ. ここで, p(w)
p(w)=0n((wqb1)(wqbr)(wq)r(1b1qn1)(1brqn1))cn1wqn0n((wqa1)(wqar)(wq)r(1a1qn1)(1arqn1))tcn11wqn
によって定義されるwに関する多項式である.

r=2の場合を考える.
cn:=(a,b;q)n(c,q;q)ntnμ(w)=0ncn1wqn
とする. このとき, 前の記事 で求めたように, p(w)は一次式
p(w)=0n(cqtab+wq((ctab)qn+(a+b)tcq))cn
である. 命題2を用いると,
μ(wqN)=(a/w,b/w;q)N(c/w,q/w;q)NtN(μ(w)+1w2tn=0N1(c/w,q/w;q)n(a/w,b/w;q)n+1(q2t)np(wqn1))
を得る. 前の記事 t=cqabのときは
p(w)=q2(c/a,c/b;q)(c,cq/ab;q)w
となることを示した. よってその場合は
μ(wqN)=(a/w,b/w;q)N(c/w,q/w;q)N(cqab)N(μ(w)(c/a,c/b;q)(c,cq/ab;q)abwcn=0N1(c/w,q/w;q)n(a/w,b/w;q)n+1(abc)n)
となる. まとめると以下を得る.

0Nに対し,
μ(wqN)=(a/w,b/w;q)N(c/w,q/w;q)NtN(μ(w)+1w2tn=0N1(c/w,q/w;q)n(a/w,b/w;q)n+1(q2t)np(wqn1))
が成り立つ. ここで,
p(w):=0n(cqtab+wq((ctab)qn+(a+b)tcq))(a,b;q)n(c,q;q)ntn
である. 特にt=cqabのとき,
μ(wqN)=(a/w,b/w;q)N(c/w,q/w;q)N(cqab)N(μ(w)(c/a,c/b;q)(c,cq/ab;q)abwcn=0N1(c/w,q/w;q)n(a/w,b/w;q)n+1(abc)n)
が成り立つ.

今回の場合は分母に(c/w;q)Nがあるのでwcとしても上手く求まることは期待できなさそうである. パラメーターが特別な場合でμ(w)が上手く求まる場合を調べることは今後の研究課題である.

投稿日:22日前
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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