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大学数学基礎解説
文献あり

アティマク第5章演習問題25番

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Aを環とする.次の条件は同値であることを示せ.

  1. Aはジャコブソン環である.
  2. 体であるすべての有限生成A-代数BA上有限である.

(i)(ii)の証明
Bを体である有限生成A-代数とする.
f:ABA-代数の射とする.
Bが有限生成A-代数であることから,ある自然数nが存在して,
全射ϕ:A[X1,X2,Xn]Bが存在する.
ι:AA[X1,X2,Xn]を包含写像とすると,f=ϕιが成り立つ.
p:=kerfとおくと,準同型定理より,自然な全射π:AA/pに対して、g:A/pBが唯一つ存在して,gπ=fが成り立つ.
gによってA/pBの部分環とみなせるので、Bが体であることからA/pは整域.つまりpは素イデアルである.
ϕι(p)=f(p)=0より,ι(p)kerϕ.
従って,ι(p)A[X1,X2,Xn]=p[X1,X2,Xn]kerϕ.
準同型定理より,自然な全射πp:A[X1,X2,Xn]A[X1,X2,Xn]/p[X1,X2,Xn]に対して,ϕ~:A[X1,X2,Xn]/p[X1,X2,Xn]Bが唯一つ存在して,ϕ=ϕ~πpが成り立つ.
また,Imϕ~Imϕ=Bよりϕ~は全射で,さらに同型A[X1,X2,Xn]/p[X1,X2,Xn]A/p[X1,X2,Xn]があるので,Bは有限生成A/p-代数である.
 よって第5章演習問題21番より,あるsA/p{0}が存在して,任意の代数閉体Ωと任意のh(s)0を満たす準同型写像h:A/pΩに対してある準同型写像h¯:BΩが存在して,h¯g=hを満たす.()
 ここで,pAの極大イデアルであることを背理法で示す.
pAの極大イデアルでないと仮定する.
第5章演習問題23番(ii)とA/pが整域であることよりJac(A/p)=0なのであるAの極大イデアルmが存在して,sπ(m)pmを満たす.
k:=A/mは体.
pmから誘導される準同型写像をπk:A/pkとする.
kの代数閉包をk¯とし,i:kk¯を包含写像とすると,
πk(s)0よりiπk(s)0.従って()より,ある準同型写像α:Bk¯が存在してαg=iπkを満たす.
Bが体であることからαは単射なので,
ker πk=ker iπk=ker αg=ker g=0.
よって同型射πkによってA/pkなので,pが極大イデアルとなり,矛盾.
従ってpは極大イデアルである.
 これにより,体Bは体A/p上有限生成なので,
第5章演習問題18番より,BA/p上有限.
さらにA/pA上有限なので,BA上有限.
(ii)(i)の証明
 Aが第5章演習問題23番(iii)の条件を満たすことを示す.
pAの極大イデアルでない素イデアルとする.
B:=A/pとおく.
すべてのtB{0}に対して,射影A[x]B[x]と代入写像B[x]B[1t]=Btの合成A[x]Btが存在するのでBtは有限生成A-代数.
 Btが体でないことを背理法により示す.
Btが体であると仮定する.
(ii)よりBtA上有限で,特にB上有限.
命題5.1より,1tB上整.つまりBtB上整.
よって命題5.7からBは体.
これはpAの極大イデアルでないことに矛盾する.
従ってBtは体でない.
 これより各tB{0}に対してBtの極大イデアルmt0を取れる.ABBtによるmtの縮約をptとおく.
p0の縮約より,pptが成り立つ.
 以下p=tB{0}ptが成り立つことを示す.
ptB{0}ptは明らかなので,逆の包含を示す.
xpとする.
f:ABを自然な全射とすると,f(x)B{0}.
命題3.11(iv)よりBBf(x)によるmf(x)の縮約はf(x)を含まない.
従ってxpf(x).つまりxtB{0}pt.
よってp=tB{0}ptが示された.
 特に,p=pppが成り立つのでAはジャコブソン環である.

Aを環,BA-代数とする.
BA上有限
  Bは有限生成A-加群
(p.45参照)

参考文献

[1]
M.F.Atiyah, I.G.MacDonald 著, 新妻 弘 訳, Atiyah-MacDonald可換代数入門, 共立出版, 2006
投稿日:312
更新日:315
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