定義について
正方行列において、のどちらかで定義する必要があるのですが、今回はが可換であるときに定義されるものとして計算します。
解法について
指数の底に当たる行列において、行列が対角化が可能な場合、任意の固有値がを満たすようなが存在するなら、下記に書かれる解法を適用できます。不等式を満たすを取れない場合の回避方法も以下に書いています。
問題
の値を求める
を級数展開する
平行移動して
収束半径は
を対角化する
固有ベクトルを求める
を単位行列として
の値をそれぞれ代入して固有ベクトルを求めると
が固有ベクトルである。
を計算する
とおく
このときの値は
両辺をで割ってから乗すると
を求める
をで割った理由
さて、メインパートを始めていきたいところなのですが、
ここでなぜ下準備2でをで割ったかを説明します。
例
をで割らずにそのまま乗すると
の級数展開よりとすると
総和は行列の各成分に分配して計算ができるのですが...
級数の終息半径はであり、各成分の級数はこのとき収束しません
そのため、あらかじめで割ることで級数が適応できるようにします。
の分解
まず、級数が収束するようにを分解しましょう。
「よし、計算できる形になったぞ!」と言いたいところなのですが、実はの方はまだ級数が収束しません。の計算にはもう少し工夫が必要になりますが、を先に計算していきます。
の計算
確かには収束半径に入っているので、これは収束して
よりを代入して
の計算
においてについて考えます。
のとき、これは収束して
となる。
ここでとおくと、より
左辺、右辺の式をそれぞれ倍すると
よって
の値を計算する
を求める
の可換性を調べる
より の可換性を調べればよい。
よって、つまりである。
の乗を求める
より
をで割った余りを求める。
を代入して
これを解いて
ケイリー・ハミルトンの定理よりが成り立つから
よって
を計算する
よりはただ一つの値に定まる。
のマクローリン展開より
に置き換えると
のマクローリン展開の収束半径は無限大であるから、各成分に分配すると
解答
の級数展開の収束半径を回避する方法
解法1でネックだったのマクローリン展開の収束半径を回避して、の逆算で求める方法です。
からを求める
を対角化して
ここでが存在して、対角化が可能であるとすると
のマクローリン展開より収束半径は無限大であるから
を代入して
を対角化したものと比較して
もちろんであるから、が成り立つ。
より
定理
とおく
を示す
の場合
の場合
より
次にを示す。
よって
対数をとって
したがって
より
を示す
次に
よって
対数をとって
を足して
より
において
が成立する
類題 の固有多項式が重解のパターン
ジョルダン標準形を求める
単位行列をとする。
固有ベクトルを求めると
広義固有ベクトルを求めると
を以下のように定める。
よって、は
となる。
を求める
ここでまた、二項定理より
これよりを求めると
を求める
今、これを計算するには二つの級数を求めればよい
定数のみの項は
を代入して
一方、が含まれる部分は
以上より
定理1より
を求める
の積の可換性
の乗からを計算する
このときをで割った余りは
である。
ケイリー・ハミルトンの定理より
であるから
のマクローリン展開より 収束半径は無限大であるから
この式を用いると
ここで求める級数2つは
となる。