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春休みなので、今年の授業内容の復習します。
まず、複素関数の極限の定義は、実関数の極限の定義の拡張みたいな感じで、以下のように定義されます。
簡単のために、f(z)が開集合領域D上で定義された複素関数であるとする。
\begin{equation}
\lim_{\Delta z \to 0}f(z+\Delta z) = w
\end{equation}
であるとは、任意の$\varepsilon >0$についてある$\delta >0$が存在し、$0<|\Delta z|<\delta$であるならば、$|f(z+\Delta z) -w|<\varepsilon$が成立することをいう。
それでは、複素関数の微分はどのようにして定義されるでしょうか?これも、実関数の時の自然な拡張を考えると、
f(z)が開集合領域D上で定義された複素関数であるとする。f(z)のzについての微分は下のように定義される。
\begin{equation}
f'(z)=\lim_{\Delta z \to 0}\frac{f(z+\Delta z)-f(z)}{\Delta z}
\end{equation}
になります。
実関数は、右側微分と左側微分の値が両方定義できて、かつそれが一致するときに微分可能でした。実関数は、実軸上に定義された関数、つまり定義域が一次元の関数だったので、右側からと左側からだけの2通りの近づき方を考えれば良かったわけですが、お察しの通り、複素関数は、複素数平面上に定義されており、定義域が二次元です。つまり、360度どの方向から近づいてもいいので、$\Delta z \to 0$の近づき方が無数にありますね。これら全ての近づき方で$f'(z)$が計算でき、かつ同じ値になれば微分可能なわけです。
そこで、$\theta$の方向から近づける場合を考えて、
\begin{equation} \lim_{\Delta z \to 0}\frac{f(z+\Delta z)-f(z)}{\Delta z}= \lim_{r \to 0}\frac{f(z+r e^{i\theta})-f(z)}{r e^{i\theta}} \end{equation}
とします。
\begin{equation}
\lim_{r \to 0}\frac{f(z+r e^{i\theta})-f(z)}{r e^{i\theta}}
=e^{-i\theta}\lim_{r \to 0}\frac{f(x+r\cos{\theta},y+r\sin{\theta})-f(x,y)}{r}
\end{equation}
ここで、$z=x+iy$のように実部と虚部を区別して考え、
\begin{equation}
\lim_{r \to 0}\frac{f(x+r\cos{\theta},y+r\sin{\theta})-f(x,y+r\sin{\theta})}{r\cos{\theta}} =\partial_x f(x,y)
\end{equation}
\begin{equation}
\lim_{r \to 0}\frac{f(x,y+r\sin{\theta})-f(x,y)}{r\sin{\theta}} =\partial_y f(x,y)
\end{equation}
を用いれば、
\begin{equation}
\lim_{r \to 0}\frac{f(z+r e^{i\theta})-f(z)}{r e^{i\theta}}
=e^{-i\theta}(\cos{\theta} \partial_x f(x,y)+\sin{\theta} \partial_y f(x,y) )
\end{equation}
となります。どの方向から近づけてもこれらの値が一致すればいいので、それぞれの偏微分の値は存在するとして、$\theta$の依存性を考えます。
そこで、$\cos{\theta}=\frac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2}$ ,$\sin{\theta}=\frac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}$ と書き換えてみましょう。すると、
\begin{equation}
\lim_{r \to 0}\frac{f(z+r e^{i\theta})-f(z)}{r e^{i\theta}}
=\frac{1+e^{-2i\theta}}{2}\partial_x f(x,y)+\frac{1-e^{-2i\theta}}{2i}\partial_y f(x,y)=\frac{1}{2}(\partial_x f(x,y)-i\partial_y f(x,y))+\frac{1}{2}(\partial_x f(x,y)+i\partial_y f(x,y))e^{-2i\theta}
\end{equation}
になります。$\theta$に依存する第二項が0になることが、$f(z)$が微分可能であるための必要十分要件で、$f'(z)$の値は第一項のものになります。
この条件を、もう少し使いやすい形で書き直すことを考えます。
複素関数についても実部と虚部を分けて、
\begin{equation} f(z)=u(x,y)+iv(x,y) \end{equation}
としてみましょう。すると、先ほどの必要十分条件である$\partial_x f(x,y)+i\partial_y f(x,y)=0$は、
\begin{equation}
(\partial_x u(x,y)-\partial_y v(x,y))+i(\partial_x v(x,y)+\partial_y u(x,y))=0
\end{equation}
という条件に書きかわります。
実関数の微分は実数なので、複素数の相等条件から実部と虚部の値がそれぞれ0になることがこの方程式の成立の必要十分条件であることがわかります。
以上より、次の命題が導けます。
f(z)が開集合領域D上で定義された複素関数であるとする。f(z)がzについて微分可能であることは、次のCauchy-Riemann条件が成立することと必要十分である。
\begin{equation}
\partial_x u(x,y)=\partial_y v(x,y)
\end{equation}
\begin{equation}
\partial_x v(x,y)=-\partial_y u(x,y)
\end{equation}
今度は、$x,y$を$z,\bar{z}$で書き換えることを考えます。
\begin{equation}
\partial_z f(z)=\frac{\partial x}{\partial z}\partial_x f(z)+\frac{\partial y}{\partial z}\partial_y f(z)
=\frac{1}{2}\partial_x f(x,y)-\frac{i}{2}\partial_y f(x,y)
\end{equation}
\begin{equation}
\partial_{\bar{z}} f(z)=\frac{\partial x}{\partial_ \bar{z}}\partial_x f(z)+\frac{\partial y}{\partial _\bar{z}}\partial_y f(z)
=\frac{1}{2}\partial_x f(x,y)+\frac{i}{2}\partial_y f(x,y)
\end{equation}
すると、
\begin{equation}
\lim_{r \to 0}\frac{f(z+r e^{i\theta})-f(z)}{r e^{i\theta}}
=\partial_z f(z)+\partial_{\bar{z}} f(z)e^{-2i\theta}
\end{equation}
が得られるので、次の命題も示せます。
f(z)が開集合領域D上で定義された複素関数であるとする。f(z)がzについて微分可能であることは、$\partial_{\bar{z}} f(z)=0$と同値である。
複素関数f(z)が開集合D全体で微分可能なとき、「f(z)は開集合D上で正則である」といいます。
今日はこの辺で失礼します。最後までお読みくださりありがとうございました!次回は留数定理とかグルサの定理とかまでいけたらなーって思います!