前回
、超微分の定義をし、また、それにより導出のできる定理を証明しました。
今回は、超微分の意味について考えていきたいと思います。
さて、まず必要な定理を一つ紹介しておきます。定理
$(x^n)^`=n\ (x^n>0)$
これを見て気づくことといえば、右肩にある指数部分が操作の結果として返されているということです。
ということはつまり、ある関数$f(x)$において、$O(x^{f^`(x)})$はその関数のオーダーを表すと言えるのではないでしょうか。
しかし、これには難点が二つあります。
まず一つ目。
この点を話すために、もう一つ必要な定理を紹介します。定理
$$f^`(x)=\frac{xf'(x)}{f(x)}$$
これを使って$x+1$の超導関数を求めてみます。
$$(x+1)^`=\frac{x\cdot1}{x+1}=\frac{x}{x+1}$$
となりますが、この関数のオーダーは$O(x)$です。
これは一致しません。
他の例は挙げませんが、ほかの多項式でも基本は同様に整数にならないはずです。
ということで必要になるのが次の定理です。
$f(x)$を$x$の最大次数が$m$の式とする。(ただし$(n,m)\in\mathbb{R}^2,0\leq m< n$)
この時、
$$\lim_{x\to\infty}\{ax^n+f(x)\}^`=n$$
(ただし$a$は$x$に無関係な定数)
$$\{ax^n+f(x)\}^`=\frac{x\cdot\{nax^{n-1}+f'(x)\}}{ax^n+f(x)}=\frac{nax^{n}+xf'(x)}{ax^n+f(x)}$$
ここで、$f(x),xf'(x)$はともに$m$次なため、
$$\lim_{x\to\infty}\frac{f(x)}{x^n}=\lim_{x\to\infty}\frac{xf'(x)}{x^n}=0$$
$$\therefore\lim_{x\to\infty}\{ax^n+f(x)\}^`=n$$
よって、以上の定理より、ある$x$の多項式$f(x)$において、$c=\lim_{x\to\infty}f^`(x)$とした時にその関数のオーダーは$O(x^c)$となるということがわかりました。
さて、オーダーという言葉が出た時点で察した方もいると思いますが、超微分の定義の際にかけていた、「常に正」という制限についての話です。
そもそも、オーダーというのは「無限大への発散のスピードがどのくらいであるか」という意味です。
ということは、無限大に発散する側の符号のみ考えればいいということになります。
そして、今回は簡単のため、正に制限をしようということになったのです。
また、今回考えていない負の無限大に発散する場合も、正の無限大に発散する場合を考えれば解決します。
例えば、$f(x)=-x$という関数は$g(x)=x$のオーダーと同じです。
以上の理由から、負の符号の範囲、また負の無限大に発散する場合は、今回は考えないでも問題はない、ということです。
ここまでで、難点の一つ目は解決したのですが、解決できていない二つ目があります。
それは、多項式ではなくなった時のことです。
例を挙げるとすると$f(x)=e^x$の時。
$f^`(x)=x$より$c=\infty$となりますが、$O(x^\infty)$というオーダーはありません。
(確かに、$x^n$の指数部分がいくら大きくても、$e^x$の発散速度はそれより早いという意味では的を得ていますが。)
これに対する解決策はいくつかあると思いますが、ここでは自分の思いついたものを提示しておきます。
まず、$c=\lim_{x\to\infty}f^`(x)$が収束するときは、$O(x^c)$はオーダーと一致する。
しかし、$c$が収束しない場合はオーダーと一致しない、別の指標と考えます。
ここで一つ用語を定義しておきます。
$f(x)$を超微分可能とする。
この時、$f^`(x)$を$f(x)$のレベルと言うこととする。
そして、レベルの比較方法ですが、極限を取ることとします。
具体的には次の通りです。
$f(x),g(x)$を超微分可能とする。
この時、$\lim_{x\to\infty}\{f^`(x)-g^`(x)\}$を$f(x)$と$g(x)$のレベルの比較と言うこととする。
そして、これに関して一つ予想が立ちます。
$f(x),g(x)$を超微分可能とする。
$c$を$f(x)$と$g(x)$のレベルの比較とした時、以下が成り立つ。
$c<0$の時、$g(x)$の方が$f(x)$よりオーダーが大きい
$c=0$の時、$f(x)$と$g(x)$のオーダーは等しい
$c>0$の時、$f(x)$の方が$g(x)$よりオーダーが大きい
この証明はまた後日とさせてください。
ですが、多項式範囲、また指数関数範囲では成り立つはずです。
今回は超微分の意味を考えてきました。
正直、意味に関してはわかっていないことが多すぎるため、今後も折に触れて考えていきたいと思います。