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東大数理院試過去問解答例(2019B05)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2019B05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2019B05

$u\in\mathbb{R}^4$を単位ベクトルとする。ここで$C^\infty$級関数$f_v:\mathbb{R}P^3\to\mathbb{R}$を、$\mathbb{R}^4$の原点を通る直線$\ell$で代表される$\mathbb{R}P^3$の元に対して、$v$$\ell$への直交射影と$v$の内積を対応させる関数とする。また$C_v$$f_v$の臨界点全体のなす部分集合とする。
(1) $f_v^{-1}(\frac{1}{2})$$\mathbb{R}P^3$の部分多様体であり、$S^2$と同相であることを示しなさい。
(2) $C_v$の連結成分を全て挙げ、これらが$\mathbb{R}P^3$の部分多様体であることを示しなさい。
(3) 点$p\in C_v$をとり、$p$を含む$C_v$の連結成分の次元を$d$とする。埋め込み$\iota:\mathbb{R}^{3-d}\hookrightarrow \mathbb{R}P^3$で以下の条件
(i) $\iota(0)=p$
(ii) $\det\begin{pmatrix} \frac{\partial^2(f_v\circ\iota)}{\partial x_i\partial x_j}(0)\\ \end{pmatrix}_{i,j}\neq0$
を満たすものが存在することを示しなさい。

  1. まず$v=(a,b,c,d)$とする。
    $$ \begin{split} f:\mathbb{R}P^3=S^3/{\pm1}&\to \mathbb{R}\\ [x,y,z,w]&\mapsto{(ax+by+cz+dw)^2} \end{split} $$
    と表される。ここで
    $$ f_v^{-1}\left(\frac{1}{2}\right)=\left\{[x,y,z,w]\in S^3/\{\pm1\}\middle|(ax+by+cz+dw)^2=\frac{1}{2}\right\} $$
    である。ここで$|v|=1>\frac{1}{\sqrt{2}}$であることから$ax+by+cz+dw=\pm\frac{1}{\sqrt{2}}$$S^3$の交点は二つの$S^2$の非交和と同相であり、このことと上の$f_v^{-1}\left(\frac{1}{2}\right)$の表示から、これが$S^2$と同相であることが従う。
  2. まず$f_v:\mathbb{R}P^3=S^3/\{\pm1\}\to\mathbb{R}$は(1)で表示したように与えられる。ここで$T\mathbb{R}P^3$は以下の式の左辺の切断たちで生成される自明束である。これらの切断の$df_v$によって
    $$ -y\frac{\partial}{\partial x}+x\frac{\partial}{\partial y}+w\frac{\partial}{\partial z}-z\frac{\partial}{\partial w}\mapsto 2(-ay+bx+cw-dz)(ax+by+cz+dw) $$
    $$ -z\frac{\partial}{\partial x}-w\frac{\partial}{\partial y}+x\frac{\partial}{\partial z}+y\frac{\partial}{\partial w}\mapsto 2(-az-bw+cx+dy)(ax+by+cz+dw) $$
    $$ -w\frac{\partial}{\partial x}+z\frac{\partial}{\partial y}-y\frac{\partial}{\partial z}+x\frac{\partial}{\partial w}\mapsto 2(-aw+bz-cy+dx)(ax+by+cz+dw) $$
    と移るから、$f_v([x,y,z,w])$が臨界点であることと以下の条件
    (i) $ax+by+cz+dw=0$
    (ii) $-ay+bx+cw-dz=-az-bw+cx+dy=-aw+bz-cy+dx=0$
    のいずれかを満たすことは同値である。後者を満たすのは$[a,b,c,d]$のみ、前者を満たすのは平面$ax+by+cz+dw=0$上の点である。よって$C_v$の連結成分は一点$\{[a,b,c,d]\}$$ax+by+cz+dw=0$を満たす集合であり、いずれも$\mathbb{R}P^3$の部分多様体である。
  3. まず$p=[x,y,z,w]$が(i)を満たす場合を考える。このとき
    $$ \begin{split} \iota:\mathbb{R}&\to \mathbb{R}P^3\\ r&\mapsto [x+ra,y+rb,z+rc,w+rd] \end{split} $$
    とおく。このとき
    $$ \begin{split} (f_v\circ\iota)(r)=&\frac{(a(x+ra)+b(y+rb)+c(z+rc)+d(w+rd))^2}{(x+ra)^2+(y+rb)^2+(z+rc)^2+(w+rd)^2}\\ =&\frac{r^2(a^2+b^2+c^2+d^2)^2}{(x^2+y^2+z^2+w^2)+r^2(a^2+b^2+c^2+d^2)} \end{split} $$
    であるが、分母の$1$階微分及び分子の$0,1$階微分が$r=0$に於いて$0$になっていることを考慮すると、$\frac{d^2f}{dr^2}(0)\neq0$を満たしていることがわかる。次に$p=[x,y,z,w]$が(ii)を満たす場合を考える。このとき
    $$ \begin{split} \iota:\mathbb{R}^3&\to \mathbb{R}P^3\\ (s,t,u)&\mapsto [x+sb+tc+ud,y-sa+td-uc-a,z-sd-ta+ub-d,w+sc-tb-uac] \end{split} $$
    と定義する。このとき
    $$ \begin{split} (f_v\circ\iota)(s,t,u)=&\frac{(a(x+sb+tc+du)+b(y-sa+td-cu)+c(z-sd-ta+ub)+d(w+sc-tb-ua))^2}{(x+sb+tc+du)^2+(y-sa+td-cu)^2+(z-sd-ta+ub)^2+(w+sc-tb-ua)^2}\\ =&\frac{(ax+by+cz+dw)^2}{(x+sb+tc+du)^2+(y-sa+td-cu)^2+(z-sd-ta+ub)^2+(w+sc-tb-ua)^2} \end{split} $$
    であるが、分母は異なる$2$つのベクトルで$1$回ずつ方向微分したときの$(s,t,u)=(0,0,0)$での値が$0$である一方同じベクトルで$2$回微分したときの$(s,t,u)=(0,0,0)$での値が$a^2+b^2+c^2+d^2$であることと分子が定数であることを考慮すると、$0$に於けるへシアンは正則である。以上で結果が示せた。
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佐々木藍(Ai Sasaki)です。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。X(旧Twitter)→@sasaki_aiiro

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