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曲線・曲面論2~種々の定義を線形代数で見直す~

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$$\newcommand{bm}[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand{DVec}[2]{\left( \begin{array}{c} #1 \\ #2 \end{array} \right)} $$

 最近リハビリで両手で杖を突きながら歩いたえだまめです.ほぼ四つん這いwでも初めて杖で歩けました.やったぜ.
 前回は平面・空間内の曲線論について解説しました.今回は曲面の話をしていきます.前回解説した空間曲線の話もするので思い出しながら頑張りましょう.

曲面論から

 まず曲面の表し方から復習しよう.2変数あれば曲面がかける.1変数で縦の糸,1変数で横の糸という感じにだ.こういう表示のことをパラメータ表示という.いろいろGeoGebraとかで描いてみよう.

楕円放物面・双曲放物面

$p=(x,y,(\frac{x}{a})^2\pm (\frac{y}{b})^2)$と置くと,その像を$+$なら楕円放物面$-$なら双曲放物面という.

また3次元空間内なので一つの制約条件を嚙ますことでも曲面を描くことができる.こういう制約条件の数を余次元と言ったりする.またこういう表示を陰関数表示という.

葉双曲面など

$\{(x,y,z)\in\mathbb{R}^3 \ |\ (\frac{x}{a})^2\pm (\frac{y}{b})^2\pm (\frac{z}{c})^2 = 1\}$とした時,
・すべてプラスなら楕円面という.
・1つマイナスなら一葉双曲面という.
・2つマイナスなら二葉双曲面という.

 さて曲線の書き方をおさらいできたので,第一基本形式や第二基本形式を定義していこう.まずは外微分からだ.
 ところで偏微分はご承知だろうか?ある変数だけで微分して残りの変数を定数と見る微分のやり方だ.要は縦の糸だけを見ようということだ.深くやると冗長になるのでやらないが,例えば関数$f(x,y)=x^2+xy+y^2$をxで編微分すれば$\frac{\partial f}{\partial x} = 2x+y$となる.

外微分

次が成立することを確認しよう.関数$f:\mathbb{R}^2\rightarrow\mathbb{R}$とする.また$u=u(x,y),v=v(x,y)$と置き$(x,y)$の変数変換されたものとする.このとき合成関数の偏微分から
$$\begin{array}{rcl} \frac{df}{dx} &=& \frac{df}{du}\cdot\frac{du}{dx} + \frac{df}{dv}\cdot\frac{dv}{dx} \\ \frac{df}{dy} &=& \frac{df}{du}\cdot\frac{du}{dy} + \frac{df}{dv}\cdot\frac{dv}{dy}\\ \end{array}$$
より,行列でまとめると
$$\left(\begin{array}{cc} \frac{df}{dx}\\ \frac{df}{dy}\\ \end{array}\right) = \left(\begin{array}{cc} \frac{du}{dx} & \frac{dv}{dx}\\ \frac{du}{dy} & \frac{dv}{dy}\\ \end{array}\right) \left(\begin{array}{cc} \frac{df}{du}\\ \frac{df}{dv}\\ \end{array}\right) $$
を得る.この行列が所謂変数変換のヤコビ行列だ.多様体論や複素関数論など,いろいろなところで顔を出すが,すべて合成関数の微分が元だ.たぶん.表記としては$\frac{\partial u,v}{\partial x,y},\ J(x,y)$などなどいろいろある.
 これを用いて次の式が得られる.$dx,dy\in\mathbb{R}$とすると,
$$(f_x, \ f_y) \left(\begin{array}{cc} dx\\ dy\\ \end{array}\right) = (f_u, \ f_v) \left(\begin{array}{cc} \frac{du}{dx} & \frac{dv}{dx}\\ \frac{du}{dy} & \frac{dv}{dy}\\ \end{array}\right) \left(\begin{array}{cc} dx\\ dy\\ \end{array}\right)$$

$\left(\begin{array}{cc} du\\ dv\\ \end{array}\right) = \left(\begin{array}{cc} \frac{du}{dx} & \frac{dv}{dx}\\ \frac{du}{dy} & \frac{dv}{dy}\\ \end{array}\right) \left(\begin{array}{cc} dx\\ dy\\ \end{array}\right)$と置くと,
$$ (f_x, \ f_y) \left(\begin{array}{cc} dx\\ dy\\ \end{array}\right) = (f_u, \ f_v) \left(\begin{array}{cc} du\\ dv\\ \end{array}\right)$$
を得る.変数変換された$(u,v)$においても,この値は変わらないことが分かる.つまりどんな座標$(u,v)$においても値が変わらないことが分かる.これは大切な値であろうということで名前がついている.

外微分

外微分/全微分$df$を次で定義する.
$$df = f_xdx+f_ydy$$

 最初は理解するのに苦しむだろう.$dx,dy$とは何か?とか.いまだに僕も正しく理解できてる自信はないwとりあえず今は何かしらの値だと思えばいいだろう.そのうち,微分形式と名前を変えて関数になる.また,ド・ラームコホモロジーを定義するにあたって複体の準同型として$d$を扱ったりする.まあ別のところで解説しよう.

第一基本形式

曲面$S$のパラメータ表示を$p:\mathbb{R}^2\rightarrow\mathbb{R}^3$とする.このとき,
$$\begin{array}{rcl} \langle dp,dp \rangle &=& \langle p_xdx+p_ydy,p_xdx+p_ydy \rangle \\ &=& \langle p_x,p_x \rangle dx^2 + 2\langle p_x,p_y \rangle dxdy + \langle p_y,p_y \rangle dy^2 \end{array}$$
この量も座標に依らない外微分からできているので,同じく座標に依らない.ということで,名前を付けよう.

第一基本形式

次で定義される式を第一基本形式$I$という
$$I=E dx^2 + 2F dx dy + G dy^2$$
ここで$E=\langle p_x,p_x \rangle$$F=\langle p_x,p_y \rangle$$G=\langle p_y,p_y \rangle$とする.
また,$E,F,G$第一基本量という.

 何のためにこの量を定義されたのか分からないだろうから,具体的な応用例を2つ挙げてみよう.

弧長

 曲面$S$上の曲線$\gamma(t)=p(x(t),y(t))$を考えよう.それの弧長を求めるとき$|\dot{\gamma}|ds$を積分するが
$$\begin{array}{rcl} |\dot{\gamma}|^2 &=& \left|\frac{d\gamma}{dt}\right|^2\\ &=& \left|\frac{dx}{dt}\frac{dp}{dx}+\frac{dy}{dt}\frac{dp}{dy}\right|^2\\ &=& E \left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + 2F\left(\frac{dx}{dt}\right)\left(\frac{dy}{dt}\right) + G \left(\frac{dy}{dt}\right)^2 \end{array} $$

要は第一基本形式の$dx,dy$を曲線の元となったものの微分を入れたものの平方根を積分すれば弧長になるということだ.

法方向の大きさ

 あとで$p_x\times p_y$の大きさが出てくるので求めておこう.スカラー四重積の公式から,
$$\begin{array}{rcl} \langle p_x\times p_y,p_x\times p_y \rangle &=& \langle p_x,p_x \rangle \langle p_y,p_y \rangle - \langle p_x,p_y \rangle \langle p_y,p_x \rangle\\ &=& EG-F^2 \end{array}$$
を得て,大きさの二乗は$EG-F^2$となる.

 こののちに面積要素や接空間と言う概念を説明して第一基本形式に慣れ親しんでもらうべきだと思うが冗長になってしまうため割愛する.調べてくれ.いずれ解説するかもね.

第二基本形式

 空間のフレームとして$\{p_x,p_y\,\bm{\nu}\}$をとる.ここで,$p_x,p_y$は一次独立とし$\bm{\nu}=p_x \times p_y$とする,このとき曲面の二回偏微分をこのフレームで表そう.まだわからないので記号で置いておく.
$$\begin{array}{rcl} p_{xx} &=& \Gamma^x_{xx}p_x + \Gamma^y_{xx}p_y + L\bm{\nu}\\ p_{xy} &=& \Gamma^x_{xy}p_x + \Gamma^y_{xy}p_y + M\bm{\nu}\\ p_{yy} &=& \Gamma^x_{yy}p_x + \Gamma^y_{yy}p_y + N\bm{\nu}\\ \end{array}$$
 $\Gamma$の添え字たちが煩いが辛抱してほしい.下が曲面を何で二回微分したかで,上が何の成分かに対応している.数字を割り当ててる書き方もあるが分かりやすいのでこちらを採用した.この$\Gamma$たちをクリストフェルの記号という.
 また$L,N,M$たちを第二基本量というがまだ定義しない.第二基本形式と一緒に定義する.
 今後はこのクリストフェルの記号らの関係式や性質を求めることが目標になる.ガッツリやるのは大変なので上手く割り引いて書いていく.書き洩らした事柄は別の機会に記事をまとめよう.
 $\langle p_x,\bm{\nu} \rangle=\langle p_y,\bm{\nu} \rangle=0$より,これを外微分すると
$$\langle dp_x,\bm{\nu} \rangle+\langle p_x,d\bm{\nu} \rangle=0, \ \ \langle dp_y,\bm{\nu} \rangle + \langle p_y,d\bm{\nu} \rangle = 0$$
を得る.これより次の量を計算すると
$$\begin{array}{rcl} -\langle dp,d\bm{\nu}\rangle &=& -\langle p_xdx+p_ydy,d\bm{\nu}\rangle\\ &=& -dx \langle p_x,d\bm{\nu}\rangle - dy \langle p_y,d\bm{\nu}\rangle\\ &=& dx \langle dp_x,\bm{\nu}\rangle + dy \langle dp_y,\bm{\nu}\rangle\\ &=& dx \langle p_{xx}dx+p_{xy}dy,\bm{\nu}\rangle + dy \langle p_{yx}dx+p_{yy}dy,\bm{\nu}\rangle\\ &=& dx^2 \langle p_{xx},\bm{\nu}\rangle + 2dxdy\langle p_{xy},\bm{\nu}\rangle + dy^2 \langle p_{yy},\bm{\nu}\rangle \end{array} $$
 また最後の内積らは$L,M,N$に一致する.なぜなら$\bm{\nu}$$p_x,p_y$に直交するため内積をとればクリストフェルの記号の部分はすべて消えるためである.
 またこの量は外微分からできているため,変数変換に不変であるため,また名前を付けよう.

第二基本形式

次で定義する式を第二基本形式$II$という.
$$II=L dx^2 + 2M dx dy + N dy^2$$
ここで$L=\langle p_{xx},\bm{\nu} \rangle$$M=\langle p_{xy},\bm{\nu} \rangle$$N=\langle p_{yy},\bm{\nu} \rangle$とする.
また,$L,M,N$第二基本量という.

この量らの意味は次で曲率らを定義するときに明らかになるだろう.

曲率ベクトル

 曲面の曲率はいろいろある.まずは曲面上に曲線を這わせたものの曲率から説明しよう.曲面$S$上の曲線$\gamma(t)$をとる.このとき$\gamma(t) = p(x(t),y(t))$が成立する.次を計算してみよう.
$$\begin{array}{rcl} \frac{d\gamma}{dt} &=& p_x\frac{dx}{dt} + p_y\frac{dy}{dt} \end{array}$$
$$\begin{array}{rcl} \frac{d^2\gamma}{dt^2} &=& \frac{d}{dt}\left(p_x\right)\frac{dx}{dt} + p_x\frac{d}{dt}\left(\frac{dx}{dt}\right) + \frac{d}{dt}\left(p_y\right)\frac{dy}{dt} + p_y\frac{d}{dt}\left(\frac{dy}{dt}\right)\\ &=& p_x\frac{d^2x}{dt^2} + p_y\frac{d^2y}{dt^2} + p_{xx}\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + 2p_{xy}\frac{dx}{dt}\frac{dy}{dt} + p_{yy}\left(\frac{dy}{dt}\right)^2\\ &=& \left(\frac{d^2x}{dt^2} + \Gamma_{xx}^x \left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + 2\Gamma_{xy}^x \frac{dx}{dt}\frac{dy}{dt} + \Gamma_{yy}^x \left(\frac{dy}{dt}\right)^2 \right)p_x\\ && +\left(\frac{d^2y}{dt^2} + \Gamma_{xx}^y \left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + 2\Gamma_{xy}^y \frac{dx}{dt}\frac{dy}{dt} + \Gamma_{yy}^y \left(\frac{dy}{dt}\right)^2\right)p_y\\ && +\left(L \left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + 2M \frac{dx}{dt}\frac{dy}{dt} + N \left(\frac{dy}{dt}\right)^2 \right)\bm{\nu} \end{array}$$
大変そうな計算そうだが,二回微分のフレームごとの係数を覚えていれば単純な同類項の括りだしで終わる.
 加速度ベクトル$\frac{d^2\gamma}{dt^2}$のことを曲率ベクトルと呼ぶ.二種の曲率を内包しているからだろう.この曲率ベクトルを法方向$\bm{\nu}$とそれ以外の方向$\bm{n}_g$に分ける.
$$\frac{d^2\gamma}{dt^2} = \kappa_g \bm{n}_g + \kappa_n\bm{\nu}$$
このとき,それぞれの係数を測地的曲率$\kappa_g$,法曲率$\kappa_n$と呼ぶ.
 測地的という言葉に少し言及しておこう.$\bm{n}_g$は法方向以外なので曲面に沿ったような平面の曲がり具合を指す.このようにその曲面に沿った平面上の性質はかなり気にされる.測地線しかりだ.

主曲率

 さてやっと主題の話ができる.この法曲率を曲線の接ベクトルの大きさ$|\dot{\gamma}|$を1に制限して最大・最小を求めてみよう.
 なぜ大きさを制限するかというといくらでも大きいベクトルが取れて最大値が存在するかも怪しくなる.
 一方,接ベクトルの大きさを1に制限すれば$S^1$から$\kappa_n$への写像と考えられるので,最大値・最小値原理からその値が存在する.
 それらを求める前に主方向たちの形を整理しておこう.曲線のパラメータとして弧長変数をとって別のパラメータ$t$を用意しておくと,
$$\begin{array}{rcl} \kappa_n &=& L \left(\frac{dx}{ds}\right)^2 + 2M \frac{dx}{ds}\frac{dy}{ds} + N \left(\frac{dy}{ds}\right)^2\\ &=& \left(\left. L \left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + 2M \frac{dx}{dt}\frac{dy}{dt} + N \left(\frac{dy}{dt}\right)^2\right) \right/ \left(\frac{ds}{dt}\right)^2\\ &=& \left(\left. L \left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + 2M \frac{dx}{dt}\frac{dy}{dt} + N \left(\frac{dy}{dt}\right)^2\right) \right/ |\dot{\gamma}(t)|^2\\ &=& \frac{L \left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + 2M \frac{dx}{dt}\frac{dy}{dt} + N \left(\frac{dy}{dt}\right)^2}{E \left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + 2F\frac{dx}{dt}\frac{dy}{dt} + G \left(\frac{dy}{dt}\right)^2} \end{array}$$
またこの$dt$を形式的にキャンセルして
$$\kappa_n =\frac{L dx^2 + 2M dxdy + N dy^2}{Edx^2 + 2Fdxdy + G dy^2}$$
と書かれることもしばしばある.
 また接ベクトル$|\dot{\gamma}(t)|=1$より第一基本形式の意義を説いた計算から
$$1 = E \left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + 2F\frac{dx}{dt}\frac{dy}{dt} + G \left(\frac{dy}{dt}\right)^2$$
形式的に分母を払っておこう.
$$1 = E dx^2 + 2Fdxdy + G dy^2$$
の条件下で最大・最小を求める.何が変数になってるかというと$dx,dy$ということが分かる.
 さてその最大値と最小値を求めるため,ラグランジュの未定乗数法を使おう.

陰関数定理

$\varphi:\mathbb{R}^2\rightarrow\mathbb{R}$という$C^1$-級関数をとり$\varphi(p,q)=0$$\frac{\partial \varphi}{\partial y}\not=0$を満たす点$(p,q)\in\mathbb{R}^2$をとる.
このとき,$(p,q)$の近傍上で定義された関数$g(x)$が存在して$\varphi(x,g(x))=0$となる.

ある関数$f:\mathbb{R}^2\rightarrow\mathbb{R}$をとり,$\varphi(x,y)=0$の条件下で極致を求める.$f(x,g(x))$を合成関数の微分で$x$に関する偏微分をすると
$$\frac{\partial}{\partial x} f(x,g(x)) = \frac{d x}{d x}\frac{\partial f}{\partial x} + \frac{dg}{d x}\frac{\partial f}{\partial y} = f_x + g_xf_y$$

また$\varphi(x,g(x))=0$$x$で偏微分すると
$$0 = \frac{\partial}{\partial x} \varphi(x,g(x)) = \frac{d x}{d x}\frac{\partial \varphi}{\partial x} + \frac{dg}{d x}\frac{\partial \varphi}{\partial y} = \varphi_x + g_x\varphi_y$$

これを$g_x$に対して解いて上の式に代入すると,
$$\frac{\partial}{\partial x} f(x,g(x)) = f_x - \frac{\varphi_x}{\varphi_y}f_y$$
よって,極値であるような$x$をとれば偏微分が0になる.よって次が成立する.
$$\DVec{f_x}{f_y} = \frac{f_y}{\varphi_y} \DVec{\varphi_x}{\varphi_y}$$
この$\lambda=f_y/\varphi_y$と置けばこの式を所謂ラグランジュの未定乗数法という.この$\lambda$は大抵計算が面倒くさいので文字で置かれることが多い.
ここで$f=\kappa_n$$\varphi=|\dot{\gamma}(t))|-1$と置く.仮定を満たしているかチェックをしよう.$|\dot{\gamma}(t)|=1$の条件下で解いてるので$\varphi=0$となり,偏微分を計算すると
$$\frac{d\varphi}{ddx} = 2E dx + 2F dy,\ \ \frac{d\varphi}{ddy} = 2F dx + 2G dy$$
これが両方とも0になるには
$$\DVec{0}{0} = \DVec{\frac{d\varphi}{ddx}}{\frac{d\varphi}{ddy}} = \left(\begin{array}{cc} 2E & 2F\\ 2F & 2G \end{array}\right) \DVec{dx}{dy}$$
となるので,逆行列の存在条件は$F^2-GE\not=0$となりこのとき$(dx,dy)=(0,0)$となる.このとき,接ベクトルの大きさが0になるため考慮に入れなくていい.またこの条件下で考えていく.($p_x\times p_y$の大きさが$EG-F^2$の平方根に相当するので0にならないという仮定は空間のフレーム$\{p_x,p_y,\bm{\nu}\}$が存在するという意で蓋然性がある.)
 ということで,仮定を満たしているためラグランジュの未定乗数法より偏微分を計算していく.
$$\DVec{2Ldx+2Mdy}{2Mdx+2Ndy} = \lambda \DVec{2Edx+2Fdy}{2Fdx+2Gdy}$$
この$dx,dy,\lambda$が存在する条件を求めよう.上の式を変形して,
$$\left(\begin{array}{cc} L & M\\ M & N \end{array}\right) \DVec{dx}{dy} = \lambda \left(\begin{array}{cc} E & F\\ F & G \end{array}\right) \DVec{dx}{dy}$$
$$\leadsto \left(\begin{array}{cc} L-\lambda E & M-\lambda F\\ M - \lambda F & N - \lambda G \end{array}\right) \DVec{dx}{dy} = \DVec{0}{0}$$
これが非自明な解が存在するかは,行列式が0になればいい.
$$ \begin{array}{rcl} 0 &=& \left|\begin{array}{cc} L-\lambda E & M-\lambda F\\ M - \lambda F & N - \lambda G \end{array}\right|\\ &=& \left|\begin{array}{cc} E & F\\ F & G \end{array}\right| \lambda^2 + \left( \left|\begin{array}{cc} L & F\\ M & G \end{array}\right| + \left|\begin{array}{cc} E & M\\ F & N \end{array}\right| \right)\lambda + \left|\begin{array}{cc} L & M\\ M & N \end{array}\right| \end{array} $$

この方程式の解から$\lambda$を得られる.得られたからなんだと言うと,
$$\begin{array}{rcl} \kappa_n &=& \frac{L dx^2 + 2M dxdy + N dy^2}{Edx^2 + 2Fdxdy + G dy^2}\\ &=& \frac{(L dx + M dy)dx + (Mdx + N dy)dy}{(Edx + Fdy)dx + (Fdx + G dy)dy}\\ &=& \frac{\lambda(Edx + Fdy)dx + \lambda(Fdx + G dy)dy}{(Edx + Fdy)dx + (Fdx + G dy)dy}\\ &=& \lambda \end{array}$$
となるため,主曲率と$\lambda$が一致する.しかも極値となり端も無いため最大・最小に一致するということが分かる.ということで先ほどの二次方程式の解に法曲率の最大・最小という意味があるのが分かったので名前を付けよう.

主曲率

二次方程式
$$ \left|\begin{array}{cc} E & F\\ F & G \end{array}\right| \lambda^2 + \left( \left|\begin{array}{cc} L & F\\ M & G \end{array}\right| + \left|\begin{array}{cc} E & M\\ F & N \end{array}\right| \right)\lambda + \left|\begin{array}{cc} L & M\\ M & N \end{array}\right| = 0$$
の解$\lambda_1,\lambda_2$主曲率という.またその$\lambda$たちに対応する$(du,dv)$が張る方向を主方向という.

ふぅ…これで一仕事おしまい.

その他いろいろな定義たち

主曲率を定義できたのでそれを使った様々な定義を紹介していこう.

ガウス曲率・平均曲率

曲面$S$と点$p\in S$を取り,その点上の主曲率を$\lambda_1,\lambda_2$とする.
ガウス曲率$K$平均曲率$H$を次で定義する.
$$\begin{array}{rcccl} K &=& \lambda_1\lambda_2 &=& \frac{LN-M^2}{EG-F^2}\\ H &=& \frac{1}{2}(\lambda_1+\lambda_2) &=& \frac{EN-2FM+GL}{2(EG-F^2)} \end{array}$$

ガウス曲率と平均曲率の第一基本量と第二基本量の公式は2次方程式の解と係数の関係より成立する.また,ガウス曲率の意味づけとして次の定義がある.

ガウス曲率の意味付け

$K>0$となる点を,楕円的な点という.
$K=0$となる点を,放物的な点という.
$K<0$となる点を,双曲的な点という.

意味合いを説明しておこう.主曲率は法曲率の最大・最小,つまり一番曲がってる方向の曲がり具合と曲がってない方向の曲がり具合(負の方向によく曲がることがあるのに注意したい)を指す.
 ガウス曲率はそれの積なので,例えば放物的なら片方が0ということで曲がってない方向があるということだ.また楕円的なら両方向とも同じ方向に曲がり,双曲的なら違う方向に曲がっているということだ.ここら辺は例を見て理解していこう.次のページで説明しよう.

臍点(せいてん)

$\lambda_1=\lambda_2$となるような点を臍点という.

こいつは要は最大と最小の曲がり方が一致するときのことだ.つまりどの方向の曲がり方も同じになるような点ということだ.
 実は僕はこれの研究もしてるのでもしかしたらこれの記事を書くかもしれない.
 また2次方程式$ax^2+bx+c=0$を取り,その解を$\alpha,\beta$と置くと,
$$\begin{array}{crcl} & (\alpha-\beta)^2 &=& 0\\ \leadsto & (\alpha +\beta)^2 -4\alpha\beta &=& 0\\ \leadsto & \left(\frac{\alpha + \beta}{2} \right)^2 - \alpha\beta &=& 0 \end{array}$$
となり和の部分が平均曲率$H$で、積がガウス曲率$K$とすれば臍点になる必要十分条件として$H^2-K=0$を得る.
 平均曲率は定義が意味が謎であるが,全点で$H=0$であるような曲面を極小曲面という.極小曲面についてはよく調べられてていろいろな曲面が見つけられている.また$p(x,y)+tH\bm{\nu}$という曲面$p(x,y)$の変形を考えれば,平均曲率$H$が0でなければ面積が減少する方向に進む.これが多分極小の名前の由来だと考えられる.
 これらの曲率の具体例を次のページで見てみよう.

ベクトル解析をちょっこと

 弧長パラメータの導入で線積分を出してしまったので,その周りの定義を確認しておこう.

スカラー場

スカラー場を$\varphi:\mathbb{R}^2\rightarrow \mathbb{R}$というスカラー値関数とする.

2変数$f:\mathbb{R}^2\rightarrow \mathbb{R}$の積分を考えよう.2変数なので1変数みたいに短点を決めればルートが決まるわけではない.そのルートとなるパスをとる必要がある.その曲線を$\gamma(t)$と置く.その上の関数の積分を考えるため集積される値は$f\circ \gamma(t)$となる.また先に説明したようにパスが早くなったり遅くなったりすると値がガタガタになってしまうので,弧長パラメータをとってパスの速度を一定にする.本当に値はガタガタになるだろうか?計算してみよう.

速度が違う経路積分

$\gamma_1 = (t,t)$$\gamma_2=(t^2,t^2)$と置く.この$\gamma$たちは直線$y=x$を表す.また$f(x,y)=x^2+y^2$と置いてこの$\gamma$上で$[0,1]$区間で積分してみる.
$$\int_0^1 f\circ\gamma_1 dt = \int_0^1 2t^2 dt = \frac{2}{3}$$
$$\int_0^1 f\circ\gamma_2 dt = \int_0^1 2t^4 dt = \frac{2}{5}$$
このように値がずれてることが確認できる.

弧長を取ればパラメータは一定になるのか?計算してみよう.

弧長パラメータでの積分

先ほどの$\gamma$を取り,それぞれの弧長パラメータを求める.それを$s_1,s_2$と置く.するとそれぞれ
$$s_1 = \int_0^t \sqrt{1^2+1^2}dt=\sqrt{2}t$$
$$s_2 = \int_0^t \sqrt{(2t)^2+(2t)^2}dt=\sqrt{2}t^2$$
となる.これで変数変換すると
$$\gamma_1=\left(\frac{s_1}{\sqrt{2}},\frac{s_1}{\sqrt{2}}\right),\ \ \ \gamma_2=\left(\frac{s_2}{\sqrt{2}},\frac{s_2}{\sqrt{2}}\right)$$
また,積分範囲はどちらも$[0,\sqrt{2}]$となり積分するまでもなく一致することが分かる.

こういうのは手を動かしまくって理解するのが早いと思っている.

曲線$\gamma(t)$をとり,$t\in [a,b]$上で関数$f:\mathbb{R}^2\rightarrow \mathbb{R}$を積分する.これを経路積分という.
$$\int_{t=a}^{t=b}f\circ\gamma(s) \ ds = \int_a^bf\circ\gamma(t)\ \frac{ds}{dt}dt = \int_a^bf\circ\gamma(t)\ |\dot{\gamma}|dt$$

 以上で曲面論の説明を終えよう.曲率ベクトル,測地的曲率,法曲率,主曲率,ガウス曲率,平均曲率とこの記事の中だけでも6個の曲率がある.本当はベクトル場の積分までやろうと思ったが,長くなりすぎたのでとどめておこう.

参考
・福井敏純,”曲線と曲面の基礎,基本”
・千葉逸人,”ベクトル解析からの幾何学入門”

投稿日:83
更新日:84
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たぶん微分幾何をやってるねこです

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