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東大数理院試過去問解答例(2011B01)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2011B01の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。 

2011B01

正整数$k$に対して
$$ \mu_k:=\{z\in\mathbb{C}|z^k=1\} $$
とおく。これは乗法群である。非自明な有限アーベル群$G$に対して群同型
$$ G\simeq \mu_{k_1}\times\cdots\times\mu_{k_\ell} $$
が成り立つような正整数の組$k_1,\cdots,k_\ell$が存在するような最小の$\ell$$t(G)$とおく。

  1. 群同型$G\simeq \mu_{k_1}\times\cdots\times\mu_{k_\ell}$が成り立っているとき、不等式
    $$ |\{x\in G|x^p=1\}|\leq p^\ell $$
    が成り立つことを示しなさい。
  2. 群同型$G\simeq \mu_{k_1}\times\cdots\times\mu_{k_\ell}$が成り立っているとき、$\ell=t(G)$であることと$\gcd(k_1,\cdots,k_\ell)>1$であることが同値であることを示しなさい。
  3. $H$$G$の非自明な部分群とする。このとき不等式$t(H)\leq t(G)$が成り立つことを示しなさい。
  4. $G$$\mathrm{GL}(n,\mathbb{C})$の非自明な有限アーベル群とする。このとき不等式$t(G)\leq n$が成り立つことを示しなさい。
  1. まず
    $$ G=\mu_{k_1}\times\cdots\times\mu_{k_\ell} $$
    であるとすると、各$\mu_{k_i}$は巡回群であるから、各成分に含まれる位数$p$の元は高々$p$個である。よって所望の結果
    $$ |\{x\in G|x^p=1\}|\leq p^\ell $$
    が従う。
  2. まず任意の素数$p$に対して$p\nmid k_i$なる$i$が存在するとする。ここで$k_1$を割り切る素数たち全体を$p_1,p_2,\cdots,p_s$とおく。そして$p_j\nmid k_{i(j)}$なる$i(j)$を各$j$に対してひとつ取ったとき、
    $$ G_i=\mu_{k_i}\times \prod_{i(j)=i}H_{j} $$
    とおく(但し$H_j$$\mu_{k_1}$$p_j$シロー部分群)と、これは
    $$ G_i=\mu_{k_i\prod_{i(j)=i}|H_j|} $$
    $$ G\simeq \prod_{i=2}^\ell G_i $$
    であるから$t(G)<\ell$が示せた。一方ある素数$p$について任意の$i$に対して$p|k_i$とする。このとき(1)より
    $$ t(G)\geq \log_p\{x\in G|x^p=1\}=\ell $$
    が従い、$t(G)$の最小性より$t(G)=\ell$が分かる。よって所望の同値性が示せた。
  3. まず$G$$p$シロー部分群を$G_p$とし、$H$$p$シロー部分群を$H_p$とする。このとき$G_p\otimes_\mathbb{Z}\mathbb{F}_p$の次元は$H_p\otimes_\mathbb{Z}\mathbb{F}_p$の次元以上であるから、各$p$に対して$t(H_p)\leq t(G_p)$になる。$t(G)=\max_{p}t(G_p)$であるから、$t(H)\leq t(G)$が従う。
  4. まず$\mathrm{GL}(n,\mathbb{C})$の対角化不可能な元は位数有限でないから、$G$の元は全て対角化可能であり、$G$の可換性から$G$の元たちは同時対角化可能である。よって適切な共役を取ることで$G$$\mathrm{GL}(n,\mathbb{C})$の対角行列全体の為す群の部分群として良い。ここで任意の$g\in G$に対して$g^N=1$になるような$N$を取ったとき、
    $$ G\subseteq \mu_N^n $$
    であるから、(3)より$t(G)\leq n$が従う。
投稿日:322
更新日:322
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藍色日和
藍色日和
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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