符号付き測度に対する Hahn の分解定理を,超限帰納法を用いて証明します.以下選択公理を仮定します.
$(X,\mathcal{B})$を可測空間とする.$\mu \colon \mathcal{B} \to \mathbb{R} \cup \{\infty\}$が符号付き測度であるとは,以下を満たすことである:
$(X,\mathcal{B})$を可測空間,$\mu \colon \mathcal{B} \to \mathbb{R} \cup \{\infty\}$を符号付き測度,$E \in \mathcal{B}$とする.
$\omega_1$ から $\mathbb{R}\cup\{\infty\}$ への単調写像で単射なものは存在しない.
$f \colon \omega_1 \to \mathbb{R}\cup\{\infty\}$が単調かつ単射であるとする.任意の可算順序数$\alpha$に対し,$(f(\alpha),f(\alpha+1))$は$\mathbb{R}$の空でない開集合であり,これらは互いに素であるが,これは$\mathbb{R}$が第二可算であることに矛盾する.
$(X,\mathcal{B})$を可測空間,$\mu \colon \mathcal{B} \to \mathbb{R} \cup \{\infty\}$を符号付き測度とする.このとき,正集合$P$,負集合$N$で$X = P \sqcup N$なるものが存在する.
可算順序数$\alpha$に対し,正集合$P_\alpha$を以下のように超限帰納法により定める:
$f \colon \omega_1 \to \mathbb{R} \cup \{\infty\}$を$f(\alpha) = \mu(P_\alpha)$と定めると,定義より$f$は単調であるから,補題 1 より$f$は単射でない.特に,$P_\alpha = P_{\alpha+1}$なる可算順序数$\alpha$が存在する.$P := P_\alpha$とおくと$P$は正集合である.
$N := X \setminus P$とおく.$N$が負集合であることを示せばよい.任意の$E \in \mathcal{B}, E \subseteq N$をとり,$\mu(E) > 0$であると仮定して矛盾を導く.
可算順序数$\alpha$に対し,$E$の部分集合$E_\alpha$で$E_\alpha \in \mathcal{B},\mu(E_\alpha) \leq 0$なるものを以下のように超限帰納法により定める:
$g \colon \omega_1 \to \mathbb{R}$を$g(\alpha) = -\mu(E_\alpha)$と定めると,定義より$g$は単調であり,任意の可算順序数$\alpha$に対し$g(\alpha) < g(\alpha+1)$であるから$g$は単射である.これは補題 1 に矛盾する.