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東大数理院試1977年度専門問102解答

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$$\newcommand{Aut}[0]{\operatorname{Aut}} \newcommand{CC}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{FF}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{IIm}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{NN}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{PP}[0]{\mathbb{P}} \newcommand{QQ}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{RR}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{RRe}[0]{\operatorname{Re}} \newcommand{tr}[0]{\operatorname{tr}} \newcommand{ZZ}[0]{\mathbb{Z}} $$

東大数理の院試(1977年度専門問102)の解答です.
自分が作った解答は ここ に置いてあります.

(東大数理1977年専門問102)

次の表の空白部分を補って,それを指標表とする有限群$G$が存在するかどうかを調べ,存在すればそれを生成元と基本関係で表わせ.ただし$C_n \, (1 \leq n \leq 5)$$G$の全ての相異なる共役類で$C_1$は単位元の類,
$\chi_n \, (1 \leq n \leq 5)$$G$の既約複素指標とし,$i = \sqrt{-1}$である.
$$ \begin{array}{c|ccccc} & C_1 & C_2 & C_3 & C_4 & C_5 \\ \hline \chi_1 & & & & & \\ \chi_2 & 1 & i & & & \\ \chi_3 & & & & & \\ \chi_4 & & & & & \\ \chi_5 & & & & & \\ \end{array} $$

表の上から$i$行目,左から$j$列目の数字を$a_{ij}$とする.(すなわち$a_{21} = 1, a_{22} = i.$$\chi_1$は単位指標として良いから$a_{1j} = 1.$また$C_2$の代表元を$x$とすると,$a_{21} = 1$より$\chi_2$$1$次表現であり,$\chi_2(x) = i$より$x^4 = 1.$よって$x$の位数は$4$なので$x^2 \in C_3, x^3 \in C_4$として良い.この時$a_{2j} = \chi_2(x^j) = i^j \, (j = 2, 3, 4)$である.$|C_2| = |C_3| = |C_4| = d_1, |C_5| = d_2$とおく.$(\chi_1, \chi_1) = (\chi_2, \chi_2)$より$1 + 3d_1 + d_2 = 1 + 3d_1 + d_2 |a_{25}|^2$なので$|a_{25}| = 1.$また$(\chi_1, \chi_2) = 0$より$1 - d_1 + a_{25}d_2 = 0.$これと$d_1, d_2 \in \NN$より$a_{25} = \pm 1.$もし$a_{25} = -1$なら$d_1 + d_2 = 1$となって不適.よって$a_{25} = 1, d_2 = d_1 - 1.$$\chi_2$$1$次表現ゆえ$\overline{\chi_2}, \chi_2^2$$G$$1$次表現だから,それを$\chi_3, \chi_4$とする.$d = d_1, a = a_{51}$とおく.指標の第$2$直交関係から$a_{52} = a_{53} = a_{54} = 0, a_{55} = -4 / a$である.また$\NN \ni \frac{|G|}{|C_5|} = 4 + \frac{4}{d - 1}$より$d$$2, 3, 5$のいずれかであるが,$|G|$$2$通りに数えると$4d = 4 + a^2$となるから$d = 3$は不適.$y \in C_5$を取り,$H = \braket{x}, K = \braket{y}$とおく.$G$$x, y$で生成される.$d = 2$なら$|G| = 8$より$[G : H] = 2$だから$G \rhd H.$よって$y^{-1}xy \in C_2 \cap H = \{ x\}$なので$G$はAbel群となるが,指標表のサイズは$5 < |G|$なので矛盾.従って$d = 5$なので$a = 4.$以上から$G$の指標表は以下となる.ただし$C_i$の下の数字は$|C_i|$を表す.
$$ \begin{array}{c|ccccc} & C_1 & C_2 & C_3 & C_4 & C_5 \\ & 1 & 5 & 5 & 5 & 4 \\ \hline \chi_1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \chi_2 & 1 & i & -1 & -i & 1 \\ \chi_3 & 1 & -i & -1 & i & 1 \\ \chi_4 & 1 & -1 & 1 & -1 & 1 \\ \chi_5 & 4 & 0 & 0 & 0 & -1 \\ \end{array} $$
$x, y$の関係式を求める.$y^2$の位数は$5$だが,$C_2, C_3, C_4$の元の位数はそれぞれ$4, 2, 4$なので$y^2 \in C_5.$また$G = HK$だから$x^{-j} yx^j = y^2$となる$j$が存在する.$j = 0$は明らかに不適.$j = 1$なら$x^{-1} yx = y^2.$$j = 3$なら$x^{-1}$を改めて$x$とおけば$j = 1$の場合に帰着される.$j = 2$なら$x^2 yx^2 = y^2$である.ここで$G$のSylow$5$-部分群の個数を$n$とすると,Sylowの定理より$n \equiv 1 \bmod 5, n \mid 20$だから$n = 1.$よって$G \rhd K$なので$\sigma : H \to \Aut(K)$が存在して$G = K \rtimes_\sigma H$となる.$\sigma : x \mapsto (y \mapsto y^m)$とすると$x^2 yx^2 = y^{m^2} x^4 = y^{m^2}$となるから$m^2 \equiv 2 \bmod 5.$これは矛盾.以上から
$$ G = \braket{x, y \, | \, x^4 = y^5 = 1, x^{-1}yx = y^2}. $$

$G \cong \ZZ / 5\ZZ \rtimes \ZZ / 4\ZZ$ Frobenius群 というものらしい.

投稿日:229
更新日:229
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delta
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