って書くとインパクト強くてインプレッション数稼げていいってtiktokで見た気がする.まぁこうして記事を書くのも集合知への寄与と承認欲求を満たすためだけっていうのもあるしね,そういう意識は大事.
モノイド環の普遍性とついでに代入写像について.
正式なタイトルは上に書いてある通りです.元ネタは参考文献の[1]に書いてありますが,あまりに読みにくいので自分の慣れ親しんだ形に書き直したものになります.前提知識は環とかmoduleとか準同型の定義くらい.途中で読めなくなったら最後にまとめが書いてあるので,そちらだけでも目を通してくださいな.あと二日くらいでぴゃって書いた記事なので,誤字脱字ミス等あったらすいません.
なっがーい準備
この記事中では環と言えば可換です.ただ以降の議論は可換性を課してなくても成り立つ部分がほとんど(自分が分かっている限りだと3,4か所は可換性が必要)なので,環は可換でない人は可換でないと思ってもらって構わないです.その場合は加群はすべて左加群で置き換えて読んでください.
自由加群の持つ普遍性
を環としを集合とする.写像であって有限個のを除いてとなるようなもの全体の集合をと書き,これを上の自由加群と呼ぶ.
有限個のを除いてとなるとは,が有限集合となること.この集合に次で加法とスカラー倍を入れる:とに対して,各点ごとに
で定義する.ここでとはの積である.区別のために今後はを明記する.
定義を確かめればよい.任意のとに対して
であるので,確かに加群となる.
各に対して,が次で定まる.
そうすると各に対してを対応させることで,写像が定義できる.これが加群の準同型になっていることを確認しよう(当たり前だがは自身の持つ積により加群の構造を持つ).任意のに対して
ゆえ,確かに加群の準同型になる.
まずは有限集合だからも有限個のを除いてとなる.つまり上の等式の右辺はにおける有限和であるからwell-defined.任意にをとると,
であるから,確かに等式が成り立つ.
上の自由加群と加群の準同型の族は次の普遍性を持つ:任意の加群と,で添え字づけられた加群の準同型の族に対して,ある加群の準同型であって任意のに対してが成り立つものがただ一つ存在する.
となるようなは有限個しかないから右辺は有限和になる.したがってこの写像はwell-defined.任意にをとって固定する.このとき任意のに対して
が成り立つから,が成り立つ.は任意だったから,任意のに対してとなる.
次にが加群になることを示す.まず任意のに対して
が成り立つが,この和は有限和だから分けることができて,
となる.次に任意のとに対して
となるので,確かにはの加群の準同型になる.最後に一意性を示す.ほかに任意のに対してが成り立つ写像が存在するとすれば,補題2.から任意のは
と書けるのだから,
となって,一意性も成り立つと分かる.
任意に加群と写像をとる.このとき各に対して写像をで定義すれば,これは加群の準同型となる.実際,任意のに対して
が成り立っている.すると命題3.からこの準同型の族とに対して,加群の準同型であって任意のに対してを満たすものが一意的にとれる.具体的には,任意のに対して
で与えられる.さらに写像をで定義すれば,任意のに対して次の等式が成り立つ.
つまりが成り立つ.これをまとめると次のようになる.
を環,を集合とする.このとき任意の加群と写像に対して,ある加群の準同型であってを満たすものが一意的に存在する.
自由加群の間の準同型
を集合とし,を写像とする.このとき合成が取れるわけだから,先ほどの構成により加群の準同型
が次の式で定まる.
ただしはで与えられている.
まずとおく.もしが成り立てば,先に示した準同型の一意性からが成り立つと分かる.ところで
が成り立つから,を得る.また
であるから,同様にしてが成り立つ.
自由加群に入る代数構造
積演算の導入
が群になる場合を考える(実はモノイドでよい).を一つ固定して,写像をとおく.このとき各に対してを
で与えれば,加群の準同型は
与えられるのであった.これらをある程度計算しておくと,
となる.つまりに対してが取れると分かった.この写像をとおけば,は可換環ゆえは加群になる.各に対してを
で定めれば,普遍性によって加群の準同型が
で与えられる.ただし.この右辺を計算すると
となる.特にこの和は有限だから,任意のに対して
である.ここで
であるから,
を得る.さていま,写像を
で定義すると,この写像によっては可換モノイドになる.すなわち,
- あるが存在して,任意のに対してが成り立つ.
- 任意のに対してが成り立つ.
- 任意のに対してが成り立つ.
1.を示そう.の単位元をとおく.このとき写像をとれば,任意のに対して
となる.についても同様.続いて2.を示す.まず
であるが,簡単のためにとおく.このとき任意のに対して
が成り立つ.いま,任意のに対して
が成り立ち,これらの和が有限和であることに注意すれば
となる.同様にして
となるから,(と置き直せば)が任意ので成り立つ.したがってを得る.3.に関しては積の定義からただちに従う.
これによって群上の自由加群には加群の構造と,そこから誘導される可換モノイドの構造が入ると分かった.これらの構造の間に整合性がある,つまり両側分配法則が成り立つことを確認しよう.任意のに対して
が成り立つことを示せばよい.しかしこれはは加群の準同型であり,任意のに対してもまた加群の準同型であることから直ちに従う.以上をまとめれば,次が成り立つ.
を環とする.群(モノイド)上の自由加群は以上の構成により環になる.
代数
を環とする.環と環準同型の組を上の代数,あるいは単に代数と呼ぶ.また二つの代数に対して,写像がからへの代数の準同型であるとは,が環準同型であってが成り立つときをいう.
加法を保つことは既に見た.また単位元に関してもが成り立つからよい.示すことはに対して
である.この右辺を計算すると
となる.
以上に見るように,群/モノイド上の自由加群にはの積から誘導される積が定まり,それにより環,特に代数の構造を持つことが分かった.これを次のように定義しよう.
を環,を群,あるいはモノイドとする.このとき上の自由加群を,の上の群環,あるいはの上のモノイド環と呼ぶ.
以降は話の都合上,モノイド環について見ていく.
準備が終わったので,本題に.
モノイド環の普遍性
ここから群環/モノイド環の普遍性について見ていく.ただどちらもやり方は同じだから,とりあえずすぐに使うモノイド環のほうだけ.まず次が成り立つ.
すると任意の代数とモノイド準同型に対して(ただしはその積によって可換モノイドとみなして),(は特に写像なのだから)加群の準同型であってを満たすものが取れるわけだが,実はこのは代数の準同型になる.これを示そう.
まず任意にをとってその積をで送ると,
となる.ここでとは各に対してで定義された写像のことで,これは加群の準同型になるのであった.これを計算すると,
となる.ここでについて,
であるから,
となる.一方でにおける積を計算すると,有限和であることに注意すれば
となる.この最後の式について,とおいて,を固定してを動かして和を取ってからに関して総和をとる操作とそれぞれについて総和を取る操作は一致するから
となって,したがってが成り立つと分かる.の単位元はであったから,
が成り立つ.したがってが環準同型になることが分かった.最後にが成り立つことを確認する.任意のに対して
であるので,となる.以上により,次を得る.
を環,をモノイドとする.このとき任意の代数とモノイド準同型に対して,ある代数の準同型であってを満たすものがただ一つ存在する.
そうするとを集合として見たときと同様にして,モノイド準同型に対して代数の準同型が取れるし,次の命題も成り立つことが分かる.
をモノイドとし,をモノイド準同型とする.このとき
が成り立つ.
代入写像の一意性
とれば,の元は
と書ける.さらに任意の自然数に対して
とできるから,帰納的にはの回の積によって書き表される.したがってからの環準同型はの行き先だけ分かればすべて決定される.
また,を代数とする.このときに対して写像をで定義する.これに対応する代数の準同型を具体的に表示すると,任意のに対して
となる.特にとすればの場合だけが残って,
が成り立つ.したがって次が分かる.
任意の代数に対して,を満たす代数の準同型はただ一つしか存在しない.
ぶっちゃけここまで書いたらとかが何かって分かっちゃうよね.だから(慣習に沿って)次のように定義します.
を環とする.の上のモノイド環を上の多項式と呼び,各に対してをを代入する写像,あるいは単に代入写像という.
の場合に"代入写像"と呼べるものはあるか?逆に,モノイドにどのような性質を課せば"代入写像"と呼べるものが得られるか?
まとめ.
- 代入写像とは普遍性(から自然に導入できる写像)である!
- 多項式環とは普遍性(を持つような数学的対象)である!
以上.タイトルに詐欺なし,(そんなに極端な)嘘は言ってない.
まじめなまとめ
関手だとか随伴だとかそういう難しい(?)言葉を使わないようにして普遍性の話をしよう,と思って書いてみたわけですが,間違いなく読みづらいと思います.ごめんね.ここまで頑張って読んでくださった方,本当に感謝です.
参考文献[1]ではsec.「自由加群に入る代数構造」におけるモノイドをすぐにでとることで多項式環の普遍性などに言及しています.ただ圏論に慣れていないと読み解けない文章になっているので,この記事のどの部分が関手の話でどの部分が随伴の話をしているのか分からないなら,おそらく読んでも実入りは少ないんじゃないかなと思います.あと(記憶が正しければ)ぽつぽつ証明に穴があるので,通読する本と思うとやっぱり苦しいんじゃないかなと思います.悪い本じゃあないんだけどね…….
あと最後の問題はおまけです.自分もまだわかってないので,みんなに考えてもらって完全に解決出来たら嬉しいな~とか考えていたり.問題設定が雑なので,気が向いた時にでもぜひ.