ここでは東大数理の修士課程の院試の2023B10の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
中の人の専門は解析でなく測度論に慣れていないので、数学的な誤りはもちろん慣例から外れた書き方・分かりづらい表現などがあるかもしれません。もしそのようなものを見つけられた場合、本記事へのコメントかX(旧Twitter)の
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2023B10
測度空間でであるようなものを考える。上可積分であるような実数値関数の為すバナッハ空間をと表す。以下の問いに答えなさい。
- 任意の正の数とについて不等式
が成り立つことを示しなさい。 - の間数列が以下の条件を満たしているとする。
(i)
(ii)
(iii) 任意のについて
このとき極限
が成り立つことを示しなさい。 - (2)の条件(i)(ii)(iii)及び不等式
を満たすような測度空間及び関数列の例を一つ挙げなさい。
- 初めに
とおく。このとき
であるから所望の結果が得られた。 - 初めにを任意にとる。
とおく。ここでがより大きいに収束するような数列が取れたとすると、条件(iii)から任意のに対して
が成り立つ。であったとすると、ヘルダーの不等式及び条件(ii)からが成り立つ。しかしこのときと置けば、上の等式の右辺は充分大きいに対して以上の値しか取らないようになってしまい上の等式に矛盾する。よってあるについて
はに収束しない。しかしこのときは上でに収束しないから(i)に矛盾する。よって任意のについて収束
が成り立つ。同様にして
も成り立つから、の測度もに収束することがわかる。このとき条件(ii)及びヘルダーの不等式から
が従う。は任意に取っていたから、以上から所望の結果が従う。 - を上のルベーグ測度の閉区間への制限とし、その上で定義された実数値関数
を考える。これはの元であり、更に直接計算することで
であるから条件(i)(ii)(iii)及びを満たしていての積分も常にである。よって上記で構成した及びは所望の例になっている。