東大数理の院試(2025年度専門B問11)の解答です.自分が作った解答は ここ に置いてあります.
開区間(−1,1)上の関数f(t)=1−tに対し,f(t)=∑n=0∞cntnをfのt=0を中心とするテイラー展開とする.以下の問に答えよ.
∑n=0∞|cn|<∞を示せ.
Hをヒルベルト空間とする.有界線形作用素A:H→Hに対し,∥A∥≤1ならば,級数∑n=0∞cnAnは作用素ノルムに関して収束することを示せ.ただし,∥A∥はAの作用素ノルムを表す.
実数列x=(xi)i=1∞で∥x∥ℓ22=∑i=1∞|xi|2<∞を満たすもの全体のなす実ヒルベルト空間ℓ2を考える.ヒルベルト空間ℓ2上の等長作用素T:ℓ2→ℓ2をTx=(0,x1,x2,x3,…)(x=(x1,x2,x3,…)∈ℓ2)で定め,B=∑n=0∞cnTnとする.ℓ2の単位ベクトルの列{vk}k=1∞でlimk→∞∥Bvk∥ℓ2=0となる例を一つ与えよ.
(1)n≥1に対しcn=(−1)n(1/2n)<0だから,t∈(0,1)に対し∑n=0N|cn|tn=1−∑n=1Ncntn≤1−∑n≥1cntn=1−(1−t−1)≤2.よってt→1とした後にN→∞として∑n≥0|cn|≤2.
(2)‖∑n>NcnAn‖≤∑n>N|cn|∥An∥≤∑n>N|cn|∥A∥n≤∑n>N|cn|→0(N→∞)だから示された.
(3)∥⋅∥ℓ2を∥⋅∥と書く.まず∥(T−I)vk∥→0なら∥Bvk∥→0となることを示す.f(1)=0より(∗)∥Bvk∥=‖∑n≥0cn(Tn−I)vk‖≤∑n≥0|cn|∥(Tn−I)vk∥である.∥(Tn−I)vk∥≤(∥T∥n+1)∥vk∥=2と (1) より,(∗)の右辺でk→∞とする時 Lebesgue の収束定理が使える.k→∞の時∥(Tn−I)vk∥≤∑j=1n∥(Tj−Tj−1)vk∥≤∑j=1n∥T∥j−1∥(T−I)vk∥=n∥(T−I)vk∥→0より(∗)の右辺は0に収束するので示された.ここでvk=(0,…,0⏟k−1,ckk,ckk+1,…),ck=(∑j≥k1j2)−1/2とおけば∥vk∥=1である.また∥(T−I)vk∥2=2(1−∑j≥kck2j(j+1))=2(1−1k∑j≥kj−2)→0(k→∞)だから,これが一例である.
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