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東大数理院試過去問解答例(2024B07)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2024B07の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2024B07

$S^n\times S^n$上の$C^\infty$級関数
$$ \begin{split} f:S^n\times S^n&\to \mathbb{R}\\ (x,y)&\mapsto \|2y-x\|^2 \end{split} $$
をとり、臨界値全体の集合を$C$、正則値全体の集合を$D$とおく。

  1. $C$の元を全て求めなさい。
  2. $a\in C$について、$O_a:=f^{-1}(\mathbb{R}\backslash\{a\})$とおく。任意の$a,b\in C$について$O_a,O_b$は微分同相であることを示しなさい。
  3. $f^{-1}(D)$$1$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}$とあるコンパクト$C^\infty$多様体の直積に微分同相であることを示しなさい。
  1. まず
    $$ f(x_1,\cdots,x_{n+1},y_1,\cdots,y_{n+1})=5-4\sum_{i=1}^{n+1}x_iy_i $$
    である。ここで$(a_1,\cdots,a_{n+1},b_1,\cdots,b_{n+1})$に於ける接空間は$(a_1,\cdots,a_{n+1},0,\cdots,0)$$(0,\cdots,0,b_1,\cdots,b_{n+1})$に直交なベクトル全体のなす空間である。ここで相異なる$i,j$についてこの接空間は$D=a_j\frac{\partial}{\partial x_i}-a_i\frac{\partial}{\partial x_j}$の型の元で生成され、
    $$ (df)D=Df=-4(a_jb_i-a_ib_j) $$
    である。この式が$0$になるにはある$s_1,\cdots,s_{n+1}$及び$(a,b)\in\mathbb{R}^2$が存在して$(a_i,b_i)=(s_ia,s_ib)$が満たされていれば良い。ここでこのような$s_i,a,b$について
    $$ a^2\sum_{i}s_i^2=b^2\sum_{i}s_i^2=1 $$
    でなければならない。よって臨界点は
    $$ \left\{(x,y)\in S^n\times S^n\middle|y=\pm x\right\} $$
    であり、この像は$\{1,9\}$である。よって臨界値は$\color{red}1,9$である。
  2. まず
    $$ I_+=\{(x,y)\in S^n\times S^n|x=y\} $$
    及び
    $$ I_-=\{(x,y)\in S^n\times S^n|x=-y\} $$
    とおく。このとき$(S^n\times S^n)\backslash I_+$$(S^n\times S^n)\backslash I_-$が微分同相であることを示せば良いが、これは微分同相写像$(x,y)\mapsto (x,-y)$で移しあうから結果が従う。
  3. まず
    $$ f^{-1}(D)=(S^n\times S^n)\backslash(I_+\cup I_-) $$
    である。このとき
    $$ \begin{split} F:(S^n\times S^n)\backslash(I_+\cup I_-)&\to (-1,1)\times X\\ (x,y)&\mapsto \left(x・y,\left(\frac{y-({x・y})x}{\|y-({x・y})x\|}\right),x\right) \end{split} $$
    を考える。但し
    $$ X=\{(u,v)\in S^{n}\times S^n|u・v=0\} $$
    である。これは$(u,v)\mapsto u・v$で定義される写像$S^n\times S^n\to (-1,1)$に正則値定理を適用することで$C^\infty$級多様体であることがわかる。ここで$(r,u,v)$に対して$G(r,u,v)=(v,\sqrt{1-r^2}v+ru)$と定義すると、これによって$F,G$は一方が他方の逆写像になっている。以上から$f^{-1}(D)$$(-1,1)\times X$に微分同相であり、写像$s\mapsto \frac{s}{1-s^2}$によって微分同相$(-1,1)\simeq \mathbb{R}$が実現できるから、$f^{-1}(D)$$\mathbb{R}\times X$に微分同相である。
投稿日:618

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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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