以下に示す二項係数の和・平方和はよく知られている.
では, 二項係数の立方和についてはどのくらい知られているのだろか?
次に, Strehlによって得られた魅力的な関係式([2.1],[2.2])を証明付きで紹介する. これは私のお気に入りの公式の1つである.
Vandermondeの恒等式と上の関係式を使って,
Dixonによる以下の関係式([3])は非常に有名である. (いろいろな書き方があるが, 本テーマに合わせた表現にしてある)
また, 私も以下の二項係数の立方を含む和についての関係式を見つけることができた.
上記の内容をイタリアの数学者Taurasoがうまく拡張し, Amer. Math. Monthlyに共著問題 ([4])として提供した.
確かに, この関係式において
AMM2017年3月号には, Stong (solution I)とAmdeberhan and Ekhad (solution Ⅱ)によるエレガントな証明が掲載されている.
ところで, 二項係数の指数部分を下げることにも興味がある. Rockettは二項係数の逆数和についてある関係式を見つけている ([5]). それを証明付きで紹介しよう.
整数
以下はRockettの証明をより読みやすく書き直したものである.
この関係式を用いて,
上記の式を
したがって, 目的の関係式は成り立つ.
その後, SuryとTrifは独立にベータ関数を使った証明を与えている([6,7]).
(参考文献)
[1] J.Franel, "On a question of Laisant." L’intermédiaire des mathématiciens 1.3(1894)
[2.1] V.Strehl, "Binomial Sums and Identities" Maple Technical Newsletter 10(1993)
[2.2] V.Strehl, "Binomial Identities--Combinatorial and Algorithmic Aspects", Discrete Math. 136(1994)
[3] A.C.Dixon, "On the sum of the cubes of the coefficients in a certain expansion by the binomial theorem", Messenger of mathematics 20(1891)
[4] H.Ohtsuka and R.Tauraso, Problem 11844, Amer. Math. Monthly 122.5(2015)
[5] A.M.Rockett, "Sum of the inverse of binomial coefficients" Fibonacci Quarterly 19.5(1981)
[6] B.Sury, "Sum of the reciprocals of the binomial coefficients." European journal of combinatorics 14.4(1993)
[7] T.Trif, "Combinatorial sums and series involving inverses of binomial coefficients." Fibonacci Quarterly 38.1(2000)