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変数変換#重心系 その2~二変数での演習~

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今回は, 前回 扱った変数変換を実際に扱って問題を解く様子を残しておく.
problem.1,2で二変数の場合の重心系使用例,problem.3で重心系の応用例を紹介する.
problem.4と末尾のメモではproblem.3を拡張した不等式を示し(これを既知とすればproblem.3はすぐに終わる),次回示す(予定)重心系という代数の拡張の方向性を示すものとして位置づけておく.
problem.1~3は入試でも十分問われるレベルだと思われる.
重心系置換の定義(再掲)は以下
$n$個の実数$x_i\ (i=1,2,\ldots,n)$について,$s=\frac{1}{n}\displaystyle\sum_{i=1}^{n}x_i,\ t_i=x_i-s\ (i=1,2,\ldots,n)$と$n+1$個の実数を定める。
尚,$\displaystyle\sum_{i=1}^{n}t_i=0$である.


problem.1
$x^2+y^2\leq1$を満たす実数$x,y$,$0$以上の実数$m$について$k=xy+m(x+y)$の最大値と最小値を求めよ.
それぞれ表すのに$m$を用いて良い.

解答を表示
$x+y=2s,\ x-y=2t$とする.
$$k=xy+m(x+y)=(s^2-t^2)+2ms=(s+m)^2-t^2-m^2\tag{1}$$
$$x^2+y^2\leq1\iff s^2+t^2\leq\frac12\tag{2}$$
(2),$t^2\geq0$より$-\frac1{\sqrt2}\leq s\leq\frac1{\sqrt2}$
(1)より$k\leq s^2+2ms\leq\frac12+\sqrt2m$で,等号は$x=y=\frac1{\sqrt2}$の時十分
(また、今回は問われていないが$m=0$の時は$x=y=-\frac1{\sqrt2}$でも等号成立する)
最小値は,少しだけ二次関数の軸で場合分けを考えなければならない
(2)より,$t^2\leq\frac12-s^2$で,これを(1)に代入すると$k\geq s^2+2ms+\left(s^2-\frac12\right)=2s^2+2ms-\frac12=2\left(s+\frac m2\right)^2-\frac{m^2+1}{2}$
(これは,$s$を固定した時の$-t^2$の最小値を求めていると解釈できる.これで$s$の一変数関数に帰着させている.)
よって,(i)$0\leq m\leq\sqrt2$の時,最小値は$s=-\frac m2$,$t$は$t^2=\frac{1}{2}-s^2$を満たすものの時$k=-\frac{m^2+1}{2}$,(ii)$\sqrt2\leq m$の時,最小値は$s=-\frac1{\sqrt2}$,$t$は$t^2=\frac{1}{2}-s^2$を満たすものの時$k=\frac12-\sqrt2m$


problem.2
実数$x,y$が$(x^2+y^2)^2=x^2-y^2$を満たす時$x+y$のとりうる最大値を求めよ.

解答を表示
$2s=x+y,\ 2t=x-y$とする.$2s$の最大値を考えれば良い.
束縛条件は,$(x^2+y^2)^2=x^2-y^2\iff(s^2+t^2)^2=st$と書き換えられる.
さて,ここからはAM-GM不等式を用いて$s$の取りうる範囲を与える.
$st\geq0$であり,$s>0$の時のみ考えれば十分で,この時$t>0$.
両辺の符号一致の下で$st=(s^2+t^2)^2\iff s^2t^2=(s^2+t^2)^4$ ($t^2$を左辺に作りたい)
次数を視て,右辺が$4$乗なので$4$変数のAM-GM不等式を用いたい,$s^2=3\left(\frac{s^2}{3}\right)$とすれば良い.
よって,$s^2t^2=(s^2+t^2)^4\geq4^4\left(\frac{s^2}{3}\right)^3t^2=\frac{256}{27}s^6t^2$
両辺を$s^2t^2>0$で割れば$\frac{27}{256}\geq s^4\iff\frac{27}{16}\geq(2s)^4$
よって$2s\leq\frac{\sqrt[4]{27}}2$でこれが求める最大値.
実際$t^2=\frac{s^2}{3}$の時例えば$s=\frac{\sqrt[4]{27}}4,\ t=\frac{s}{\sqrt3}$の時等号成立する.


problem.3
$4$つの実数$x_1,x_2,x_3,x_4$が,$\displaystyle\sum_{i=1}^{4}x_i=0,\ \sum_{i=1}^{4}x_i^2=100$を満たす時,$k=\displaystyle\sum_{i=1}^{4}x_i^3$の最小値を求めよ.

解答1を表示
この問題は既に4変数の重心系の見た目となっており,後述する一般的な$n$変数3乗和に関しての不等式を用いてオーバーキルできるのだが,ここでは敢えて更に重心系を重ねてみる.
(前回の記事もそうだが元々実用性/合理性というものだけを考えているのではなくなんとなくやってみて上手くいきそうだとか,好きだと思えるやつを載せている.)
さあ行こう
$2a=x_1+x_2=-(x_3+x_4),\ 2u=x_1-x_2,\ 2v=x_3-x_4$とする.
(重心系を$(x_1,x_2)$と$(x_3,x_4)$に分けて用いた.それぞれの重心を足せば$0$なので単に逆符号と書けば良い)(←苑田の声が聞こえる)
更に,$u,v$に関しても重心系を用い$2b=u+v,\ 2c=u-v$とする.
この時元々の$x_i\ (i=1,2,3,4)$はそれぞれどう書けるか見てみよう.
$x_1=a+b+c,\ x_2=a-b-c,\ x_3=-a+b-c,\ x_4=-a-b+c$
この下で,$\displaystyle\sum_{i=1}^{4}x_i^2=4(a^2+b^2+c^2)$,$\displaystyle\sum_{i=1}^{4}x_i^3=24abc$
仮定より$a^2+b^2+c^2=\frac{100}{4}=25$,よって$|k|=24\sqrt{a^2b^2c^2}\leq24\left(\frac{a^2+b^2+c^2}{3}\right)^{3/2}=\frac{1000}{\sqrt3}$
よって答えは$-$側の符号を取って$-\frac{1000}{\sqrt3}$
等号は$a^2=b^2=c^2$より$a=b=c=-\frac5{\sqrt3}$で成立

解答2[problem.4を用いる方法]を表示
problem.4の文字の定義と同様にすると,$n=4,\ q=100$である
よって,$|r|\leq\frac{2\cdot100^{3/2}}{\sqrt{12}}=\frac{1000}{\sqrt3}$
最小値は下側の端点を取れば良いので,$-\frac{1000}{\sqrt3}$が答え


problem.4
$n$個の実数$t_i\ (i=1,2,\ldots,n)$について$\displaystyle\sum_{i=1}^{n}t_i=0$が成立する時$q=\displaystyle\sum_{i=1}^{n}t_i^2,\ r=\sum_{i=1}^{n}t_i^3$とするなら$|r|\leq\frac{(n-2)q^{3/2}}{\sqrt{n(n-1)}}$が成立する事を示せ.
また,等号が成立する条件も示せ.(但し,$n$は$3$以上の整数とする)
(見ての通り,重心系置換後の$t_i$の二乗和と三乗和の不等式である.最良の評価だと思う)

解答1を表示
コーシー・シュワルツの不等式を用いる方法
$q=0$の時 成立
$q\neq0$の時,即ち$q>0$の時$a=\sqrt{\frac{q}{n(n-1)}}$と定める.
各$i$について$t_i^2=\left(\displaystyle\sum_{j\neq i}t_j\right)^2\leq(n-1)\displaystyle\sum_{j\neq i}t_j^2=(n-1)(q-t_i^2)$が成立.
よって,$|t_i|\leq\sqrt{\frac{q(n-1)}{n}}=(n-1)a$
これより上限との差に平方を掛けて$t_i^3$を作ると
$\bigl((n-1)a-t_i\bigr)(t_i+a)^2\geq0$
これを全ての$i=1,2,3,\ldots,n$について足し合わせる事で以下を得る.
$$0\leq\sum_{i=1}^{n}\bigl((n-1)a-t_i\bigr)(t_i+a)^2=-r+(n-3)aq+n(n-1)a^3=-r+(n-2)aq$$
($\displaystyle\sum_{i=1}^{n}t_i=0$や$q=n(n-1)a^2$を用いた)
即ち$r\leq(n-2)aq=\frac{(n-2)q^{3/2}}{\sqrt{n(n-1)}}$
$(-t_1,-t_2,\ldots,-t_n)$についても同じ議論を行うことで下限も同様
よって題意の不等式が成り立つ.
等号成立条件は,(i)$q=0$の時,全ての$t_i$が$0$が必要で,この時等号も成立,(ii)$q>0$の時,順序は自由に$(t_1,t_2,t_3,\ldots,t_n)=\pm\bigl((n-1)a,-a,-a,\ldots,-a\bigr)$
但し$a=\sqrt{\frac{q}{n(n-1)}}$である.

解法1の心を表示
ここでは,等号成立条件の読み方の一例を挙げる.
等号成立条件が分かれば解法1の様に天下り式に有名不等式を用いる事も可能だからだ.
まず,$n$個の偏差$t_i$について,$n-3$個を固定し,残り$3$個の偏差に着目してみる.
これが全て異なるとして,それぞれ$a,b,c$とする.
この時これを解に持つ方程式$(z-a)(z-b)(z-c)=0$を考え,これを少しだけ変えた方程式$(z-a)(z-b)(z-c)=\varepsilon$について,$\varepsilon$が十分小さい時$(z-a)(z-b)(z-c)=\varepsilon$は$3$個の異なる実数解$a',b',c'$を持つと言える.
さて,解と係数の関係を見て$a+b+c=a'+b'+c',\ ab+bc+ca=a'b'+b'c'+c'a',\ abc=a'b'c'-\varepsilon$だが,前半$2$つのみで平方和(これは問題で与えられた束縛条件)が決まり,後半の解の積で立方和が求まる.
よって,$\varepsilon$を少しずつ変える事で条件を満たしながら題意の立方和の値を(大きくも小さくも)変える事が出来るので,この「3個の偏差がいずれも異なる」状態は最大値も最小値も取らないといえる.
よって,等号成立の時の偏差の値は高々$2$種類で,和が$0$な事から正の実数$a$が$k$個,負の実数$b$が$(n-k)$個あるとしてよい.
一乗和,二乗和の束縛条件から$ak+b(n-k)=0,\qquad ka^2+(n-k)b^2=q$で,これを解いて$a=\sqrt{\frac{(n-k)q}{nk}},\ b=-\sqrt{\frac{kq}{n(n-k)}}$
この時$r=\frac{(n-2k)q^{3/2}}{\sqrt{nk(n-k)}}$で,$r$が最大値を取るような$k$は$n-2k\geq0$の範囲で$k=1$
よって,上側の等号成立条件は$a,b$に$k=1$を代入した$\sqrt{\frac{(n-1)q}{n}}$が$1$個,$-\sqrt{\frac{q}{n(n-1)}}$が$n-1$個と$t_i\ (i=1,2,\ldots,n)$の並び替えが等しい時で,下側はこれの符号を反転させたものと分かる.
もっとも極値において取りうる$t_i$の値が高々$2$種類であり,その上で具体的な値の候補を求めるには未定乗数法を用いたほうが速いらしい.
(しかし,書いた人が未定乗数法を分かっていないので具体的な内容は書けなかった,また精進します)


メモ(恒等式,絶対不等式集)
二乗和:$\displaystyle\sum_{i=1}^{n}x_i^2=\sum_{i=1}^{n}(s+t_i)^2=ns^2+\sum_{i=1}^{n}t_i^2$
三乗和:$\displaystyle\sum_{i=1}^{n}x_i^3=\sum_{i=1}^{n}(s+t_i)^3=ns^3+3s\sum_{i=1}^{n}t_i^2+\sum_{i=1}^{n}t_i^3$
二乗和,三乗和の絶対不等式[→problem.4]

投稿日:5日前
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