0

東大数理院試過去問解答例(2023B13)

61
0

ここでは東大数理の修士課程の院試の2023B13の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2023B13

C1級関数x,y,z:R>0Rに関する常微分方程式
{x=4γx(zx)y=y(1xy)z=x(yγx)
を考える。ここでγは正の実数である。そしてこの常微分方程式の初期値x(0)=x0,y(0)=y0,z(0)=z0は不等式
0<y0<1
0<x0<2z0
を満たしているとする。以下の問いに解答しなさい。

  1. x(t)及びy(t)は正値関数であることを示しなさい。
  2. 2z(t)x(t)は正値関数であることを示しなさい。
  3. γが十分に大きければ、この初期値問題は局所漸近安定な平衡点を持つことを示しなさい。
  1. ϕ:R>0R3ϕ(t)=(x(t),y(t),z(t))で定義する。この像がH={(x,y,z)R3|x=0}ϕ(t1)=(x1,y1,z1)に於いて交わるとする。ここでリプシッツ条件を満たす常微分方程式の解の一意性と構成により、ϕの像はt=t1の近傍に於いてはH上にある。しかしこれはϕ(0)Hに矛盾する。よってϕHと交わらず、中間値の定理からx(t)は正値関数である。
    y(t)の正値性も同様に示せる。
  2. (1)と同様に示せる
  3. この常微分方程式のヤコビアンを求めると
    (4γ(z2x)04γxy1x2y0y2γxx0)
    である。この常微分方程式の平衡点
    P=(11+γ,γ1+γ,11+γ)
    を持つが、この点に於けるヤコビアンはγを充分大きくしたとき
    (404110100)
    に収束し、この固有多項式は(X+2)2(X+1)であり、特に根は負の数である。よってγを充分大きくしたときPはこの初期値問題の局所漸近安定平衡点である。
投稿日:217
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中