ここでは東大数理の修士課程の院試の2023B13の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2023B13
級関数に関する常微分方程式
を考える。ここでは正の実数である。そしてこの常微分方程式の初期値は不等式
を満たしているとする。以下の問いに解答しなさい。
- 及びは正値関数であることを示しなさい。
- は正値関数であることを示しなさい。
- が十分に大きければ、この初期値問題は局所漸近安定な平衡点を持つことを示しなさい。
- をで定義する。この像がにに於いて交わるとする。ここでリプシッツ条件を満たす常微分方程式の解の一意性と構成により、の像はの近傍に於いては上にある。しかしこれはに矛盾する。よってはと交わらず、中間値の定理からは正値関数である。
の正値性も同様に示せる。 - (1)と同様に示せる
- この常微分方程式のヤコビアンを求めると
である。この常微分方程式の平衡点
を持つが、この点に於けるヤコビアンはを充分大きくしたとき
に収束し、この固有多項式はであり、特に根は負の数である。よってを充分大きくしたときはこの初期値問題の局所漸近安定平衡点である。