さて,いよいよ既約多項式の個数を数えます.ある次多項式を因数分解することでの約数である次数の既約多項式が全てちょうど1回出てくるということを見ます.すると,約数を渡る和に対しては後述するメビウスの反転公式が使えるので個数を求めることができます.
に対して次が成り立つ.
(1)の全ての約数に対しはを因子にもつ.
(2)の全ての約数に対しは次数の全ての既約多項式を因子にもつ.
(3)がの約数でなければ,は次数の既約多項式を因子にもたない.
(4)は次以上の多項式の平方を因子にもたない.
- がの代数閉包に含まれるとしてよい.のときであり,,はそれぞれ,の解集合なのではを割り切る.
- (1)によってなるに対し,次数の既約多項式を全て因子にもつことを示せば十分.もしの因子にない次数の既約多項式が存在するとする.はPIDだから素イデアルは極大イデアルであり,は体である.これは拡大次数がなので位数は.前回の命題3からこの体の元はを満たす.
,を考える.この写像の核は全体ではなく,はこの核に含まれる.さらになのでもこの核に含まれる.はPIDでは既約だから,核はで与えられる.よってはで割り切れる.これは矛盾である. - がの約数でなく,上既約な次数の多項式がの因子になると仮定する.(2)からはの因子にも含まれ,の全ての解は,の両方に属する.とおくとは加減乗除で閉じているので,の共通の部分体である.よって前回の定理5によりあるが存在して,,である.一方での全ての解がに属することからはを因子にもち,は上既約で次数だから.従ってであり,となって矛盾する.
(4)もし,が次以上の多項式の平方を因子にもったと仮定すると
,と表され,この両辺を微分すると,標数がであることからとなって矛盾する.
これでの因数分解に現れる既約多項式の個数を数えればよいことがわかりました.因数分解に現れる既約多項式の次数全ての和がに一致することがわかっているのでこれを使って個数を求めます.
メビウス関数
メビウス関数とは,がある素数の乗で割り切れるとき,が相異なる素数ならと定めることで得られる関数である.
メビウス関数は次の著しい性質を持ちます.
まず,が互いに素であるときであることを示す.またはがある素数の乗で割り切れればもその素数の乗で割り切れるのでである.がどの素数の乗でも割り切れなければ,異なる素数,により,と表せる.の素因子の数はとなるので,,.よって.
次にとおく.が互いに素であるときであることをみる.,を素因数分解とする.ただし,は全て異なる素数で.の約数と,の約数の組が一対一に対応することをみる.がの約数なら,()という形である.,とおくと,,である.逆に,,ならなのでの素因数分解でのべきは以下だが,より真に小さければはの素因数分解に現れなければならない.しかし,なのでこれは矛盾である.
従って,.また,なら.よって
.は互いに素なので
である.従って
.
これによりは素数べきであるとして示せばよい.を素数,として
.
上の証明内で示した次の性質を持つ関数を乗法的関数といいます.
乗法的関数
が乗法的関数であるとはであり互いに素な整数に対しを満たすもののことをいう.
つまり,メビウス関数は乗法的関数です.さらに,上で示したメビウス関数のの約数に渡る和が再び乗法的関数になるという事実は,一般の乗法的関数に対して成り立ちます.証明も同様です.
さらに,次の反転公式によりの約数を渡る総和がわかっていればでの値がわかります.
をで置き換えることによりとなる.よってを示す.の定義よりとなる.との組を考えることはとおくとと(をで割った値)を考えることと同じである.よって
.
命題2からとなるつまりだけ考えればよい.従って
.
こうしてついに目標であった式を得ます!
既約多項式の個数
上のモニックで既約な次多項式の個数をとする.
である.
定理1からの因数分解にはの約数であるに対し次既約多項式が全てちょうど1回現れ,他の次数の既約多項式は現れない.それらの次数を足し合わせればであるから.これにメビウスの反転公式を用いて.よって.
位数をに置き換えることで他の有限体上の既約多項式でも同様だと考えられます.
最後に任意にをとるときをならをみたすようにとるとであることがわかります.実際とおくときは高々,も高々なので以下で割られた数が高々個出ます.
参考文献:
元祖ワシ的日記 有限体の既約多項式の数を求める
大阪うたら通信 有限体の勉強 〜素体上の既約多項式への分解〜
wikipedia 素数定理
整数論1,雪江明彦,日本評論社,2013