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ここでは東大数理の修士課程の院試の2006B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2006B02
体$K$及び$K$代数$R$に対して次の主張を考える。
- $R$の任意の部分$K$代数は有限生成$K$代数である。
次の問いに解答しなさい。
- $R=K[X]$のとき、主張(i)は正しいことを示しなさい。
- $R=K[X,Y]$のとき、主張(i)は成り立たない。この反例をひとつ挙げなさい。
- 部分$K$代数を$S$とする。まず$f_1\in S$を一つとる。このとき$K[X]$は有限生成$K[f_1]$加群である。よって$K[X]$の任意の部分$K[f_1]$加群も有限生成$K[f_1]$加群である。特に$S$も有限生成$K[f_1]$加群であり、その生成元を$f_2,\cdots,f_n$とすれば、$S=K[f_1,\cdots,f_n]$が従う。
- $K[X,Y]$の部分代数$S$を
$$
S=K[X,XY,XY^2,XY^3,\cdots]
$$
ととる。ここで$S$のイデアル$I_n$を
$$
I_n=(X,XY,XY^2,\cdots,XY^n)
$$
とおく。このとき$XY^{n+1}\in I_n$であったと仮定する。このときある$f_i\in S$が存在して、
$$
Y^{n+1}=\sum_{i=1}^{n}Y^if_i
$$
と表せる。ここで両辺に$X=0$を代入すると、$a_i:=f_i(0,Y)\in K$たちは
$$
Y^{n+1}=\sum_{i=1}^{n}Y^ia_i
$$
を満たすことになるが、これはあり得ない。よって仮定は誤りであり、これにより$I_1\subsetneq I_2\subsetneq I_3\subsetneq\cdots$が示された。特に$S$はネーター環でないから、特に有限生成$K$代数ではない。