今週も積分・級数botの積分を解きましょう。
$$ \int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\cos\ln\tan{x}\,dx=\frac{\pi}{4\cosh{\frac{\pi}{2}}} $$
かなり原始関数がイカツいですが、どうやって求めるのでしょうか。
場合によっては$\cos{x}$をテイラー展開したくなりますが、今回は悪手です。
困った時は、三角関数の位相(今回は$\ln\tan{x}$)を丸ごと置換してみましょう。
$$\begin{align} I&=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\cos\ln\tan{x}\,dx\\[5pt] &=\int_{-\infty}^{0}\frac{e^t\cos{t}}{1+e^{2t}}dt \qquad \ln\tan{x}\mapsto t\\[5pt] &=\frac{1}{2}\int_{-\infty}^{0}\frac{\left(e^{it}+e^{-it}\right)e^t}{1+e^{2t}}dt\qquad\because\;\cos{t}=\frac{e^{it}+e^{-it}}{2}\\[5pt] &=\frac{1}{2}\int_{0}^{1}\frac{y^i+y^{-i}}{1+y^2}dy\qquad e^t\mapsto y\\[5pt] &=\frac{1}{2}\int_{0}^{1}\sum_{n=0}^{\infty}\left(-y^2\right)^n\left(y^i+y^{-i}\right)dy\\[5pt] &=\frac{1}{2}\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n\int_{0}^{1}y^{2n+i}+y^{2n-i}dy\\[5pt] &=\frac{1}{2}\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n\left(\frac{1}{2n+i+1}+\frac{1}{2n-i+1}\right)\\[5pt] &=\frac{1}{2}\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n\frac{(2n+1-i)+(2n+1+i)}{(2n+1+i)(2n+1-i)}\\[5pt] &=\frac{1}{2}\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n\frac{2(2n+1)}{(2n+1)^2-i^2}\\[5pt] &=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n(2n+1)}{1+(2n+1)^2}\\[5pt] &=\frac{1}{4}\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n(2n+1)}{\left(\frac{1}{2}\right)^2+\left(n+\frac{1}{2}\right)^2} \end{align}$$
※最後の式変形で、わざわざ$4$で割った理由については後で分かります。
積分が級数に変形出来ました。
僕が初めてこの問題を見たときは、この後の式変形がわかりませんでしたが、三角関数の部分分数展開を使うと上手くいくことを教えてもらい、解くことが出来ました。
そのためにまず、$\sin{x}$の無間乗積展開を導入します。
$$ \sin{\pi x}=\pi x\prod_{n=1}^{\infty}\left(1-\frac{x^2}{n^2}\right)\\ $$
※$x$は複素数を代入しても成り立ちますが、今回は実数で十分なので文字は$x$としておきます。
フーリエ級数などを使えば証明できますが、
$\sin{x}$は$x=0,\pm n\pi$を零点に持ち、テイラー展開したときの$x$の係数が$1$なので成り立ちそうだなぁと思えば大丈夫です。
これを使うと様々なことが分かります。
命題5を目指して以下の補題、命題を順番に証明していきましょう。
$$ \pi\cot{\pi x}=\frac{1}{x}+\sum_{n=1}^{\infty}\frac{2x}{x^2-n^2} $$
$$ \frac{\pi}{\sin{\pi x}}=\frac{1}{x}+\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-1)^n2x}{x^2-n^2}=\sum_{n=-\infty}^{\infty}\frac{(-1)^n}{x+n} $$
$$ \frac{\pi}{\cos{\pi x}}=-\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n(2n+1))}{x^2-\left(n+\frac{1}{2}\right)^2}=\sum_{n=-\infty}^{\infty}\frac{(-1)^n}{x+\frac{1}{2}+n} $$
$$ \frac{\pi}{\cosh{\pi x}}=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n(2n+1)}{x^2+\left(n+\frac{1}{2}\right)^2} $$
※補題3,4の右辺は、同じ速度で$-\infty$から$\infty$に極限を飛ばします。
ここで、$I$をあの形に変形した理由が見えてきます。
$$ I=\frac{1}{4}\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n(2n+1)}{\left(\frac{1}{2}\right)^2+\left(n+\frac{1}{2}\right)^2} $$
だったことを思い出すと、
命題5の$x$に$1/2$を代入したものと等しいことが分かります。
よって、
$$ I=\frac{1}{4}\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n(2n+1)}{\left(\frac{1}{2}\right)^2+\left(n+\frac{1}{2}\right)^2}=\frac{\pi}{4\cosh{\frac{\pi}{2}}} $$
となって求めたかった積分が示せました。
三角関数の部分分数展開は今回初めて使ったので、
誤植等を見つけたらコメント欄で指摘してください。
それではまた来週。