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ここでは京大RIMS数学教室の2019年度の専門科目03を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2019専門03
多項式$f(X)=X^4+6X^2+2$の$\mathbb{Q}$上の最小分解体を$K$とおき、これを$\mathbb{C}$の部分体と見做し、$F={K}\cap\mathbb{R}$とおく。
- 拡大次数$[F:\mathbb{Q}]$を計算しなさい。
- $F$が$\mathbb{Q}$上アーベル拡大であることを示しなさい。
- 初めに
$$
a=\sqrt{-3+\sqrt{7}}=i\sqrt{3-\sqrt{7}}
$$
$$
L=\mathbb{Q}(a)
$$
とおく。アイゼンシュタインの規約判定法より$f$は既約多項式であるから、$[L:\mathbb{Q}]=4$であり、$[K:L]\leq2$であるから、$[K:\mathbb{Q}]\leq8$である。ここで$K$は埋め込み$K\subseteq\mathbb{C}$の取り方に関わらず$\mathbb{R}$に含まれない体であり、かつ総実$4$次拡大$\mathbb{Q}(\sqrt{2},\sqrt{7})$を部分拡大に持つから、$F=\mathbb{Q}(\sqrt{2},\sqrt{7})$かつ$[K:\mathbb{Q}]={\color{red}4}$が従う。 - (1)の議論から$F=\mathbb{Q}(\sqrt{2},\sqrt{7})$であるから、これはガロア群
$$
\mathrm{Gal}(F/\mathbb{Q})={\color{red}\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}}
$$
のアーベル拡大である。