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【リーマン幾何学】Warped積多様体の曲率

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 リーマン直積多様体の一般化の一つであるWarped積多様体の曲率の公式を証明します。

Warped積多様体

(B,h),(F,k)を擬リーマン多様体とし、fC2(B)とする。M=B×Fとし、M上の擬リーマン計量を
g=h+f2k
とする。このとき(M,g)BFWarped積多様体と呼び、M=B×fFと表す。

Bの適当な座標を{xi}とし、Fの適当な座標を{yα}とし、Mの座標を{xi,yα}とすれば、
g=hijdxidxj+f(x)2kαβdyαdyβ
と表されます。

 πB:MB, πF:MFをそれぞれの因子への射影とします。TpMに対して
Fp:=kerπB
とし、Fpgに関する直交補空間をBpとします。さらに点pに部分空間Fp,Bpを対応させる分布をF,Bとします。

 XΓ(TB)に対して、XΓ(B)πB(X)=Xとなるものがただ一つ存在します。同様にξΓ(TF)に対して、ξΓ(F)πF(ξ)=ξとなるものがただ一つ存在します。またB,F上のスカラー関数をπB,πFM上に引き戻したものも同じ記号で表すことにします。

接続の係数

 曲率を計算するためにまずリーマン接続の係数を計算します。

擬リーマン多様体(B,h),(F,k)fC2(B)に対して、Warped積を(M=B×fF,g=h+f2k)とする。g,h,k(M,g),(B,h),(F,k)のリーマン接続とする。
このときX,YΓ(B),ξ,ζΓ(F)に対して
gXY=hXYgXξ=gξX=1fX(f)ξgξ¯ζ¯=kξζ1fg(ξ,ζ)gf
が成り立つ。

また局所座標では接続の係数は以下のように与えられる。Bの適当な座標を{xi}とし、Fの適当な座標を{yα}とし、Mの座標を{xi,yα}とする。g,h,kの接続の係数をgΓBCA,hΓjki,kΓβγαとすると、
gΓjki=hΓjkigΓiβα=1fifδβαgΓβγα=kΓβγαgΓβγi=1fifgαβ
であり、他は0である。

gΓjCi=12gim(jgmC+CgmjmgjC)
より
gΓjli=12gim(jgml+lgmjmgjl)=12him(jhml+lhmjmhjl)=hΓjligΓjαi=0
また
gΓαβi=12gim(αgmβ+βgmαmgαβ)=12gimm(f2kαβ)=1f(if)gαβ
となる。

さらに
gΓiCα=121f2kαγ(igγC+CgγiγgiC)
より
gΓijα=121f2kαγ(igγj+jgγiγgij)=0gΓiβα=121f2kαγ(igγβ+βgγiγgiβ)=121f2kαγi(f2kγβ)=1fifδ βα
となる。

最後に
gΓβδα=121f2kαγ(βgγδ+δgγβγgβδ)=kΓβδα
となる。

リーマン曲率テンソル

 擬リーマン多様体(M,g)においてリーマン曲率テンソルは
R(X,Y)Z=XYZYXZ[X,Y]Z
で与えられます。Warped積多様体のリーマン曲率テンソルは次で与えられます。

リーマン曲率テンソル

擬リーマン多様体(B,h),(F,k)fC2(B)に対して、Warped積を(M=B×fF,g=h+f2k)とする。gR,hR,kR(M,g),(B,h),(F,k)のリーマン曲率テンソルとする。X,Y,ZΓ(B),U,V,WΓ(F)とするとき、次が成り立つ。
gR(X,Y)Z=hR(X,Y)ZgR(V,X)Y=Hf(X,Y)fVgR(X,Y)V=gR(V,W)X=0gR(X,V)W=g(V,W)fhXhfgR(V,W)U=kR(V,W)U+||hf||h2f2(g(V,U)Wg(W,U)V)
ここでHf(X,Y)=(df)(X,Y)fのHessianである。

また局所座標では接続の係数は以下のように与えられる。Bの適当な座標を{xi}とし、Fの適当な座標を{yα}とし、Mの座標を{xi,yα}とする。このとき次が成り立つ。
gR(i,j)l=hR(i,j)lgR(α,i)j=1fHf(i,j)αgR(i,j)α=gR(α,β)i=0gR(i,α)β=1fgαβhihfgR(α,β)γ=kR(α,β)γ+||hf||h2f2(gαγβgβγα)

gR(i,j)l=hR(i,j)lは明らかである。

gR(α,i)j=αijiαj=α(gΓijll)i(gΓαjββ)=gΓijlgΓαlββi(1fjfα)=gΓijlgΓαlββ+1f2ifjfα1fijfα1fjfiα=gΓijl1flfα1fijfα+1f2ifjfα1f2jfifα=1f(ijfgΓijllf)α=1fHf(i,j)αgR(i,j)α=ijα(i,j)=i(1fjfα)(i,j)=1f2ifjfα+1fijfα+1fjf1fifα(i,j)=0gR(α,β)i=αβi(α,β)=α(1fifβ)(α,β)=1fifkΓαβγγ(α,β)=0gR(i,α)β=iαβαiβ=i(kΓαβγγ+gΓαβjj)α(gΓiβγγ)=kΓαβγ1fifγ+i(1fgαβjfj)α(1fifβ)=kΓαβγ1fifγ1f2gαβgradf1fgαβigradf1fi(kΓαβγγ+Γαβjj)=1f2gαβgradf1fgαβigradf+1fgαβigradf=1fgαβigradf
また各ファイバーをリーマン部分多様体と見なせば第二基本形式は
II(α,β)=Hαβii=gΓαβii=1fifgαβi
であるから、ガウスの方程式
gRγαβδ=kRγαβδgijHiβγHjα   δ+gijHiαγHjβ   δ
より
gR(α,β)γ=kR(α,β)γ+1f2||gradf||g2(gαγβgβγα)
となる。

Ricciテンソル

 擬リーマン多様体(M,g)においてRicciテンソルは
Ric(X,Y)=tr[ZR(Z,X,Y)]
で与えられます。Warped積多様体のRicciテンソルについては次が成り立ちます。  

擬リーマン多様体(B,h),(F,k)fC2(B)に対して、Warped積を(M=B×fF,g=h+f2k)とする。dF=dimFとする。gRic,hRic,kRic(M,g),(B,h),(F,k)のRicciテンソルとする。X,YΓ(B),V,WΓ(F)とするとき、次が成り立つ。
gRic(X,Y)=hRic(X,Y)dFfHf(X,Y)gRic(X,V)=0gRic(V,W)=kRic(V,W)g(V,W)(hΔff+(dF1)||hf||h2f2)

また局所座標では接続の係数は以下のように与えられる。Bの適当な座標を{xi}とし、Fの適当な座標を{yα}とし、Mの座標を{xi,yα}とする。このとき次が成り立つ。
gRicij=hRicijdFfHijfgRiciα=0gRicαβ=kRicαβgαβ(hΔff+(dF1)||hf||h2f2)

gRic(i,j)=gABg(gR(A,i)j,B)=glmg(gR(l,i)j,m)+gαβg(gR(α,i)j,β)=hRic(i,j)dFfHf(i,j)gRic(i,α)=gABg(gR(A,i)α,B)=glmg(gR(l,i)α,m)+gβγg(gR(β,i)α,γ)=1fgαβgβγg(igradf,γ)=0gRic(α,β)=gABg(gR(A,α)β,B)=glmg(gR(l,α)β,m)+gγδg(gR(γ,α)β,δ)=1fglmgαβg(lgradf,m)+1f2kRic(α,β)+1f||gradf||g2gδγ(gγβgαδgαβgγδ)=hΔffgαβ+1f2kRic(α,β)dF1f2||gradf||g2gαβ

断面曲率

リーマン曲率テンソル

擬リーマン多様体(B,h),(F,k)fC2(B)に対して、Warped積を(M=B×fF,g=h+f2k)とする。gR,hR,kR(M,g),(B,h),(F,k)のリーマン曲率テンソルとし、Kg,Kh,Kk(M,g),(B,h),(F,k)の断面曲率とする。X,YΓ(B),U,VΓ(F)とするとき、次が成り立つ。
Kg(X,Y)=Kh(X,Y)Kg(V,X)=Hf(X,Y)f||X||h2Kg(V,W)=Kk(V,W)f2||hf||h2f2

X,Y,V,Wなどはgに関して正規直交とする。
Kg(X,Y)=||X||g2||Y||g2g(gR(X,Y)Y,X)=||X||h2||Y||h2h(hR(X,Y)Y,X)=Kh(X,Y)Kg(V,X)=||X||g2||V||g2g(gR(V,X)X,V)=Hf(X,X)f||X||g2Kg(V,W)=||V||g2||W||g2g(gR(V,W)W,V)=||V||g2||W||g2g(kR(V,W)W,V)||hf||h2f2=||V||g2||W||g2||V||h2||W||h2f2k(kR(V,W)W,V)||V||h2||W||h2||hf||h2f2=Kk(V,W)f2||hf||h2f2

 ある多様体を定曲率空間など曲率が単純な空間と少し複雑な空間のWarped積と見なすことができれば、曲率を計算する必要のある多様体の次元が実質的には減るので計算が楽になります。

 例えば、2次元のLorentz多様体(B,gB)と2次元定曲率リーマン多様体(F,gF)のWarped積(M=B×rF,g)を考えてみます。すなわち
gB=e2λdt2+e2νdr2gF=dθ2+χ(θ)2dϕ2χ(θ)={sinθ (k=1)θ (k=0)sinhθ (k=1)g=gB+r2gF
とします。ここでkFの断面曲率です。Schwartzschild時空などもこのタイプの時空です。この場合Mの曲率を計算するためには実質的には(B,gB)だけ計算すればよいことになります。

2次元のLorentz多様体(B,g)
g=ϵe2λ(t,r)dt2+e2ν(t,r)dr2, ϵ=±1
に対して、
Γttt=tλΓtrt=rλΓrrt=ϵe2(λν)tνΓttr=ϵe2(λν)rλΓtrr=tνΓrrr=rν
となる。また断面曲率は
K=e2νr(λrλ)+e2νrλrνϵe2λt(νtν)+ϵe2λtλtν
である。またfC2(B)に対して、
Httf=t2ftλtf+ϵe2(λν)rλrfHtrf=trfrλtftνrfHrrf=r2f+ϵe2(λν)tνtfrνrf
となる。

 この補題を使って(M,g)のRicciテンソルを計算してみます。Bに平行な成分は
MRictt=BRicttdFrHttr=K(gB)tt2rHttr=Ke2λ+2re2(λν)rλMRictr=K(gB)tr2rHtrr=2rtνMRicrr=K(gB)rr2rHrrr=Ke2ν+2rrν
であり、Fに平行な成分は
MRicαβ=FRicαβgαβ(Δrr+||r||2r2)=(krΔr||r||2)(gF)αβ
である。ただし
||r||2=grr=e2ν, Δr=e(λ+ν)r(eλ+νe2ν)=e2νr(λν)
である。

投稿日:20231014
更新日:2024312
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Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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