リーマン直積多様体の一般化の一つであるWarped積多様体の曲率の公式を証明します。
Warped積多様体
を擬リーマン多様体とし、とする。とし、上の擬リーマン計量を
とする。このときをとのWarped積多様体と呼び、と表す。
の適当な座標をとし、の適当な座標をとし、の座標をとすれば、
と表されます。
をそれぞれの因子への射影とします。に対して
とし、のに関する直交補空間をとします。さらに点に部分空間を対応させる分布をとします。
に対して、でとなるものがただ一つ存在します。同様にに対して、でとなるものがただ一つ存在します。また上のスカラー関数をで上に引き戻したものも同じ記号で表すことにします。
接続の係数
曲率を計算するためにまずリーマン接続の係数を計算します。
擬リーマン多様体とに対して、Warped積をとする。をのリーマン接続とする。
このときに対して
が成り立つ。
また局所座標では接続の係数は以下のように与えられる。の適当な座標をとし、の適当な座標をとし、の座標をとする。の接続の係数をとすると、
であり、他は0である。
リーマン曲率テンソル
擬リーマン多様体においてリーマン曲率テンソルは
で与えられます。Warped積多様体のリーマン曲率テンソルは次で与えられます。
リーマン曲率テンソル
擬リーマン多様体とに対して、Warped積をとする。をのリーマン曲率テンソルとする。とするとき、次が成り立つ。
ここではのHessianである。
また局所座標では接続の係数は以下のように与えられる。の適当な座標をとし、の適当な座標をとし、の座標をとする。このとき次が成り立つ。
は明らかである。
また各ファイバーをリーマン部分多様体と見なせば第二基本形式は
であるから、ガウスの方程式
より
となる。
Ricciテンソル
擬リーマン多様体においてRicciテンソルは
で与えられます。Warped積多様体のRicciテンソルについては次が成り立ちます。
擬リーマン多様体とに対して、Warped積をとする。とする。をのRicciテンソルとする。とするとき、次が成り立つ。
また局所座標では接続の係数は以下のように与えられる。の適当な座標をとし、の適当な座標をとし、の座標をとする。このとき次が成り立つ。
断面曲率
リーマン曲率テンソル
擬リーマン多様体とに対して、Warped積をとする。をのリーマン曲率テンソルとし、をの断面曲率とする。とするとき、次が成り立つ。
例
ある多様体を定曲率空間など曲率が単純な空間と少し複雑な空間のWarped積と見なすことができれば、曲率を計算する必要のある多様体の次元が実質的には減るので計算が楽になります。
例えば、2次元のLorentz多様体と2次元定曲率リーマン多様体のWarped積を考えてみます。すなわち
とします。ここではの断面曲率です。Schwartzschild時空などもこのタイプの時空です。この場合の曲率を計算するためには実質的にはだけ計算すればよいことになります。
2次元のLorentz多様体
に対して、
となる。また断面曲率は
である。またに対して、
となる。
この補題を使ってのRicciテンソルを計算してみます。に平行な成分は
であり、に平行な成分は
である。ただし
である。