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東大数理院試過去問解答例(2026B04)

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$ $ここでは東大数理の修士課程の院試の2026B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。   

2026B04

可換環$A$とそのイデアル$I$について$I$を含む$A$の極小素イデアル全体の為す集合を$\mathrm{Min}_{A}(I)$とおき、
$$ \sigma_A(I):=\bigcap_{p\in\mathrm{Min}_{A}(I)}(IA_p\cap A) $$
とおく。

  1. $A=\mathbb{Z}[X_1,\cdots,X_n]$のとき、$I$が単項イデアルであれば等式
    $$ \sigma_A(I)=I $$
    が成り立つことを示しなさい。
  2. $R:=\mathbb{Z}[X^3Y^3,Y^3Z^3,XY^2Z]$とおき、$R$のイデアル$J$
    $$ J=\langle3,X^3Y^3,XY^2Z\rangle $$
    で定義する。このとき$R$のイデアル$\sigma_{R}(J^3)$の生成系を一つ挙げなさい。
  3. $S,T$$S=\mathbb{Z}[XY,YZ]$及び$T=\mathbb{Z}[X,Y,Z]$で定める。このとき包含$R\subseteq S\subseteq T$が成り立っている。$T$のイデアル
    $$ \sigma_{T}(JT) $$
    及び
    $$ \sigma_{T}(\sigma_{S}(JS)T) $$
    の生成系をそれぞれ一つずつ挙げなさい。
  1. $I=(f)$とし、$f$の素因数分解を$f=\prod_ip_i^{n_i}$とおく。ここで$p\in \mathrm{Min}_A(I)$を取ったとき、ある$i$について$p_i\in p$である。ここで$(p_i)\subseteq p$であるが、$p$の極小性により$p=(p_i)$である。ここで各$p=(p_i)$に対して
    $$ IA_p=\left\{\frac{fh}{g}\middle| g\notin(p_i)\right\} $$
    $$ IA_p\cap A=p_i^{n_i}A $$
    が従う。よって
    $$ \sigma_A(I)=\bigcap_i p_i^{n_i}A=I $$
    が示せた。
  2. まず$A=XY$及び$B=YZ$とおくと、$R=\mathbb{Z}[A^3,B^3,AB]$及び$J=(3,A^3,AB)$である。ここで$J^3$を含む極小素イデアルは$p=(3,A^3,AB)$のみである。ここで
    $$ J':=J^3R_p\cap R=\left\{\frac{f}{g}\in R\middle|f\in J^3,g\notin p\right\} $$
    である。右辺の元$h=\frac{f}{g}$$A=3A'$を代入すると、$h$の全ての係数は$27$の倍数である。$h=\sum_{i,j,k}a_{i,j,k}A^{k+3i}B^{k+3j}$がこのような条件を満たすためには、任意の$j$に対して$27|a_{0,j,0}$及び$9|a_{0,j,1}$及び$3|a_{0,j,2}$を満たさなければならない。よってこのような元たちは
    $$ 27h_0(B^3)+9ABh_1(B^3)+3A^2B^2h_2(B^3)+A^3H(A^3,B^3,AB) $$
    と書き表せ、特に$J'$の元は$27,A^3,9AB,3A^2B^2$で生成されることがわかる。一方
    $$ 27,9AB,3A^2B^2,A^3=\frac{(AB)^3}{B^3} $$
    はいずれも$J'$の元である。よってこれらを$X,Y$についての式に書き直せば、$\sigma_R(J^3)$の生成系は${\color{red}27,X^3Y^3,9XY^2Z,3X^2Y^4Z^2}$である。
  3. まず$JT=(3,X^3Y^3,XY^2Z)$を含む$T$の極小素イデアルは$p_x=(3,X)$及び$p_y=(3,Y)$である。ここで
    $$ JA_{p_x}\cap A=\left\{\frac{f}{g}\in A\middle|f\in JT,g\notin p_x\right\}=(3,X) $$
    $$ JA_{p_y}\cap A=\left\{\frac{f}{g}\in A\middle|f\in JT,g\notin p_x\right\}=(3,Y^2) $$
    であるから、これにより
    $$ \sigma_{T}(JT)=(3,X)\cap(3,Y)={\color{red}(3,XY^2)} $$
    である。次に$XY=A$及び$YZ=B$と置いたとき、$R=\mathbb{Z}[A^3,B^3,AB]$及び$J=(3,A^3,AB)$であり、$S=\mathbb{Z}[A,B]$及び$JS=(3,A^3,AB)$である。ここで$JS$を含む$S$の極小素イデアルは$p=(3,A)$のみである。ここで
    $$ JS_p\cap S=\left\{\frac{f}{g}\middle|f\in JS,g\notin p\right\}=(3,A) $$
    である。次に$J':=\sigma_T(JT):=(3,XY)$を含む$T$の極小素イデアルは$(3,X)$及び$(3,Y)$である。よって
    $$ J'A_{p_x}\cap A=\left\{\frac{f}{g}\middle|f\in J',g\notin p_x\right\}=(3,X) $$
    $$ J'A_{p_y}\cap A=\left\{\frac{f}{g}\middle|f\in J',g\notin p_y\right\}=(3,Y) $$
    であるから、これにより
    $$ \sigma_{T}(JT)=(3,X)\cap(3,Y)={\color{red}(3,XY)} $$
    が従う。
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藍色日和
藍色日和
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