この記事は、筆者が中学生の頃に書き、長いこと眠らせていたものです。
基底変換を導いて嬉しくて書いただけで、基底変換公式自体は自明なものです。(これを用いて導いた三角形の心自体は初出です。)
ですが、分かりやすくはあると思うので公開することにしました。
温かい目でスクロールしていただけるとありがたいです。
幾何の話だが初等感少ないし,前提知識ゼロで読めるためぜひご一読いただきたい.研究成果について1から解説するため少々長くはなるが.読めば三角形の心についてかなり解像度が上がると思う.末尾にはdesmosの図も載せている.
あまり認知されていないが,重心座標は三角形の心を深く考える上で必要不可欠な座標系だ.(少し紛らわしいが重心の座標ではなく,そういう名前の座標系)
三角形の心を表すとき,二次元直交座標では対称的に表しづらい,性質が分かりづらい,また頂点自体の座標を変数として扱う必要があるなど不都合な点がさまざまある.また「三角形の心」をどう定義するかという問題もある.しかし重心座標では三角形の頂点3つについて相対的に点を表すため,これを使うとうまくいく.
今日見つかっている(と言っていいのだろうか)三角形の心は7万を超える1.その多くが$\triangle ABC$(重心座標で表す基の三角形:基底)とそうでない三角形のPerspectorとして定義されている.
二つの三角形がPerspectiveであるとは,対応する頂点を結ぶ3組の直線が共点である(1点で交わる)関係にあることを言う.また,その交点のことをPerspectorと言う.
definition of Perspective
上図ではPがPerspectorである.
多角形についても同様の定義ができる.
2つの三角形の関係について,
・「Perspective$\Rightarrow$相似」とは限らない.
例えば共点である3組の直線上なら自由に頂点を移動させても構わない.
・「相似$\Rightarrow$Perspective」は成り立たない.
これは例えば合同で重なった三角形の一方を少し回転させてみるとわかる.
注意とか書いておきながら実際あまり気にする必要はないのだが,これらを見ると分かるように形状だけで決定される関係ではなく,位置関係も踏まえたものなのである.
基底となる三角形とそうでない三角形がPerspectiveであることを示す,またPerspectorを求めることは容易である.しかし私は後述するどちらも基底でない三角形2つのPerspectorについて調べていて,その証明を試みる中で,その三角形のいずれかに基底を変更すれば良いという発想に至った.要するに元の基底$\triangle ABC$とは異なる三角形をワールド(基底)に変えてしまおうと言うことだ.割と自然な発想だと思う.これについて説明していく.
重心座標を考えるインセンティブは一応説明したが,ここからはもう少し,私なりの解釈を踏まえながら詳細に述べていきたい.
いくつか三角形の心を二次元直交座標で表示してみよう.
\begin{align}
G&=\left(\frac{x_A+x_B+x_C}{3},\frac{y_A+y_B+y_C}{3}\right)\\
I&=\left(\frac{ax_A+bx_B+cx_C}{a+b+c},\frac{ay_A+by_B+cy_C}{a+b+c}\right)\\
I&=\left(\frac{ax_A+bx_B+cx_C}{a+b+c},\frac{ay_A+by_B+cy_C}{a+b+c}\right)\\
\end{align}
座標にいい感じの要素がかかっていることが分かるだろう.
しかし重心は理解に難くないが,それ以外のものはなぜそうなるのかが判然としないだろう.
ここではこれを認めることにして,次に進もう.
前節では頂点の座標を二次元直交座標で表し点を表していたが,三角形の心を考える上で非常に面倒だ.そこで,一度座標とか関係なく,次のようにおいてみる.
\begin{align}
G&=\frac{ \overrightarrow{ A } + \overrightarrow{ B } + \overrightarrow{ C }}{3}\\
I&=\frac{ a\overrightarrow{ A } + b\overrightarrow{ B } + c\overrightarrow{ C }}{a + b + c}
\end{align}
上記のような形になる.
このようにブラックボックス化してあげた時の$A$の係数を$\lambda$,$B$の係数を$\mu$,$C$の係数を$\nu$とおくと,
$$P=\frac{\lambda \overrightarrow{ A }+\mu \overrightarrow{ B }+\nu \overrightarrow{ C }}{\lambda+\mu+\nu}$$
ここでA,B,Cに突っ込むのに適切な座標を考えようと言うわけだ.
例えば先ほどまでやっていた二次元直交座標で表す場合,
\begin{align}
P&=\frac{\lambda (x_A,y_A)+\mu (x_B,y_B)+\nu (x_C,y_C)}{\lambda+\mu+\nu}\\
&=\left(\frac{\lambda x_A+\mu x_B+\nu x_C}{\lambda+\mu+\nu},\frac{\lambda y_A+\mu y_B+\nu y_C}{\lambda+\mu+\nu}\right)
\end{align}
と言う具合だ.
これについてはHurdiaさんが分かりやすくまとめてくださっている2.
ここでは計算上のことは控えめに,私なりの解釈にも軽く触れながら解説してみたい.
一言で言えば,三角形ありきで点を表す座標系だ.点が区切る三角形の面積の比で点を表す.
(平面の情報なのに3つの要素が現れる代わりに,「比」だから全ての要素を定数倍することができる)
もう少し詳しくみていこう.
先ほどの位置ベクトルでの表示の$A,B,C$に座標を代入するのだが,この表示は$A,B,C$の重み付き平均となっていることに注目したい.
$\triangle ABC$に,$A$に$\lambda$,$B$に$\mu$,$C$に$\nu$の重みがついている.
$P$はこの三角形の釣り合い点だと考えることができ,これは$A,B,C$の重みと$P$が区切る向かい側の三角形の面積の比が対応している.また,重みを全て定数倍しても表される点は変わらない.
このことから,一旦この重みの比(面積の比)を要素として持つ座標系を考えてみよう.
\begin{align}
P&=(\lambda:\mu:\nu)\\
&=(k\lambda:k\mu:k\nu)\hspace{10pt}\text{(比だから)}
\end{align}
一般に重みの総和を$k\in \mathbb{R}\backslash\{0\}$とすると,
$A=(k:0:0)$,$B=(0:k:0)$,$C=(0:0:k)$を代入してみよう.
\begin{align}
P&=\frac{\lambda A+\mu B+\nu C}{\lambda+\mu+\nu}\\
&=\frac{\lambda (k:0:0)+\mu (0:k:0)+\nu (0:0:k)}{\lambda+\mu+\nu}\\
&=\frac{(k\lambda:k\mu:k\nu)}{\lambda+\mu+\nu}\\
&=\left(k\frac{\lambda}{\lambda+\mu+\nu}:k\frac{\mu}{\lambda+\mu+\nu}:k\frac{\nu}{\lambda+\mu+\nu}\right)\\
&=\left(\lambda:\mu:\nu\right)
\end{align}
3つの要素があるが,1つ目がA,2つ目がB,3つ目がCのの向かい側の三角形の面積が要素となっている.A,B,Cについて綺麗に記述できそうな見た目だ.
注意してほしいのは,ここで三角形の面積は例えば$P$が$AB$より内側にある場合正だが,外側にある場合負となる,符号付き面積である.
例をみてみることにしよう.
<内心の図>
上図は内心を表している.
\begin{align}
I&=\left(\frac{a}{a+b+c}:\frac{b}{a+b+c}:\frac{c}{a+b+c}\right)\\
&=(a:b:c)
\end{align}
このように各要素をスカラー倍することができる.
Encyclopedia of Triangle Centers (ETC)1よりいくつかより複雑な三角形の心の座標をあげてみる.
心の表記はこのサイトに倣った.
\begin{align}
X(4)&=\left(\frac{1}{b^2+c^2-a^2}:\frac{1}{c^2+a^2-b^2}:\frac{1}{a^2+b^2-c^2}\right)\\
&=(\tan A:\tan B:\tan C)\\
X(6)&=\left(a^2:b^2:c^2\right)\\
X(21)&=\left(\frac{a}{\cos B+\cos C}:\frac{b}{\cos C+\cos A}:\frac{c}{\cos A+\cos B}\right)\\X(316)&=\left(b^4+c^4-a^4-b^2c^2:c^4+a^4-b^4-c^2a^2:a^4+b^4-c^4-a^2b^2\right)\\
\end{align}
以上のものを見てみると,Aの(1つ目の)要素にはb,c(または$\angle B,C$)について対称な式があり,B,Cの要素についても同様の形式の式がある.より正確には,B,Cの要素はAの要素をa,b,cについて巡回置換した形となっている.このようなものを三角形の心と呼ぶ.定式化してみよう.
・$f(a,b,c)=f(a,c,b)$
・$f(ka,kb,kc)=k^nf(a,b,c)$ where $k\in\mathbb{R}^+, n\in\mathbb{Z}\backslash\{0\}$
を満たす$f$について,
$$P=(f(a,b,c):f(b,c,a):f(c,a,b))$$
を満たすPを,三角形の心と呼ぶ.
本題の基底変換を考えたきっかけを紹介していく.
重心座標の基底変換(後述の本題)は,ある2つの三角形のPerspectorを導出する際に用いた.
その2つの三角形とは,次のようなものである.
傍接円を$A,B,C$の向かい側の順から$\Gamma_a,\Gamma_b,\Gamma_c$と定める.また,傍接円全てに接する円のうち下図のピンク色の円(1つに内接,2つに外接するもの)を同じノリで$K_a,K_b,K_c$と定める.
この時,$\Gamma_i$と$K_j$の接点を,$T_{ij}$と定義する.
$T_{ij}$
また下図のように,
$\mathcal{T_1},\mathcal{T_2}$
ここで,$\mathcal{T_1}$を次のように定義する.
$$\mathcal{T_1}=\triangle T_{aa}T_{bb}T_{cc}$$
$$\mathcal{T_2}=\triangle PQR$$
ここで$\mathcal{T_1}$と$\mathcal{T_2}$はPerspectiveであることを示し,またそのPerspectorを求めたかった.
実は前節で述べたPerspectorは従来の方法では導出できない.
もう少し辛抱いただくとして,その従来の方法とはどのようなものか説明する.
その方法を補題の形で述べておく.証明はこちらを参照3
基底(重心座標で表す元となる三角形)を$\triangle ABC$,そうでない三角形を$\triangle DEF$とすると,次のようになる.
\begin{align}
D&=(*:y:z)\\
E&=(x:*:z)\hspace{5pt}\text{と表せる}\\
F&=(x:y:*)
\end{align}
$$\Longleftrightarrow\triangle ABC\text{と}\triangle DEF\text{がPerspective}\ $$
この時,Perspector$P=(x:y:z)$である.
$D,E,F$の座標は定数倍で調整する.
垂心Hを,補題1を用いて存在を示し,重心座標で表せ.
垂心は基底と,対辺への垂線の足で構成されるとのPerspectorに他ならない
(面積比を直に出す方法もありだが題意に反する)
垂心は基底と非基底(?)のPerspectorで表される.存在を示すと言うのはつまり,そもそもこれらがPerspectiveであることである(尤も,補題1の形で導出できると言うのはすなわちPerspectiveであることなのだが).
垂線の足を順に$D,E,F$とおくとき,三平方でも使ってもらえれば,
\begin{align}
D&=(0:a^2+b^2-c^2:c^2+a^2-b^2)\\
E&=(a^2+b^2-c^2:0:b^2+c^2-a^2)\\
F&=(c^2+a^2-b^2:b^2+c^2-a^2:0)
\end{align}
とわかる.ここで,各要素を揃えるために定数倍して調整すると次のようになる.
\begin{align}
D&=\left(0:\frac{1}{c^2+a^2-b^2}:\frac{1}{a^2+b^2-c^2}\right)\\
E&=\left(\frac{1}{b^2+c^2-a^2}:0:\frac{1}{a^2+b^2-c^2}\right)\\
F&=\left(\frac{1}{b^2+c^2-a^2}:\frac{1}{c^2+a^2-b^2}:0\right)
\end{align}
$$\therefore H=\left(\frac{1}{b^2+c^2-a^2}:\frac{1}{c^2+a^2-b^2}:\frac{1}{a^2+b^2-c^2}\right)$$
($(\tan A:\tan B:\tan C)$でも可)
そして何を隠そう.垂心は
先ほど挙げた例
で言う$X(4)$に他ならない!
ここまででは,基底と非基底のPerspectorの求め方を紹介してきたが,本来の目的はいずれも非基底の三角形間のそれを求めることだ.
ではどうするか.答えは単純だ.
非基底の三角形のいずれかを基底にしてしまえばいいのだ.
具体的には,次のようにする.
$\triangle XYZ$を基底に持つ重心座標を$(*:*:*)_{XYZ}$と表すと,
\begin{align}
P=&(x_p:y_p:z_p)_{ABC}\\
=&\left(\sigma_d
\begin{vmatrix}
x_p & y_p & z_p\\
x_e & y_e & z_e\\
x_f & y_f & z_f
\end{vmatrix}
:\sigma_e
\begin{vmatrix}
x_p & y_p & z_p\\
x_f & y_f & z_f\\
x_d & y_d & z_d
\end{vmatrix}
:\sigma_f
\begin{vmatrix}
x_p & y_p & z_p\\
x_d & y_d & z_d\\
x_e & y_e & z_e
\end{vmatrix}
\right)_{DEF}
\end{align}
where $\sigma_x=x_x+y_x+z_x$,$D=(x_d:y_d:z_d)_{ABC},E=(x_e:y_e:z_e)_{ABC},F=(x_f:y_f:z_f)_{ABC}.$
逆変換は次のようにできる:
\begin{align}
P=&\left(\lambda:\mu:\nu\right)_{DEF}\\
=&\left(\frac{x_d}{\sigma_d}\lambda + \frac{x_e}{\sigma_e}\mu + \frac{x_f}{\sigma_f}\nu:\frac{y_d}{\sigma_d}\lambda + \frac{y_e}{\sigma_e}\mu + \frac{y_f}{\sigma_f}\nu:\frac{z_d}{\sigma_d}\lambda + \frac{z_e}{\sigma_e}\mu + \frac{z_f}{\sigma_f}\nu\right)_{ABC}.
\end{align}
Find (x,y,z) when ((\lambda_p:\mu_p:\nu_p)_{ABC}) is ((x:y:z)_{DEF}).
\begin{align} P&=\dfrac{\lambda_p A+\mu_p B+\nu_p C}{\lambda_p+\mu_p+\nu_p}\\ P&=\dfrac{xD+yE+zF}{x+y+z}\\ &=\cfrac{x \dfrac{\lambda_d A+\mu_d B+\nu_d C}{\lambda_d+\mu_d+\nu_d}+y \dfrac{\lambda_e A+\mu_e B+\nu_e C}{\lambda_e+\mu_e+\nu_e}+z \dfrac{\lambda_f A+\mu_f B+\nu_f C}{\lambda_f+\mu_f+\nu_f}}{x+y+z} \end{align}
Focusing on the coefficients of A, B, and C, respectively, we obtain
\begin{align} \lambda_p(x+y+z)&=(\lambda_p+\mu_p+\nu_p)\left(\dfrac{\lambda_d}{\lambda_d+\mu_d+\nu_d}x+\dfrac{\lambda_e}{\lambda_e+\mu_e+\nu_e}y+\dfrac{\lambda_f}{\lambda_f+\mu_f+\nu_f}z\right),\\ \mu_p(x+y+z)&=(\lambda_p+\mu_p+\nu_p)\left(\dfrac{\mu_d}{\lambda_d+\mu_d+\nu_d}x+\dfrac{\mu_e}{\lambda_e+\mu_e+\nu_e}y+\dfrac{\mu_f}{\lambda_f+\mu_f+\nu_f}z\right),\\ \nu_p(x+y+z)&=(\lambda_p+\mu_p+\nu_p)\left(\dfrac{\nu_d}{\lambda_d+\mu_d+\nu_d}x+\dfrac{\nu_e}{\lambda_e+\mu_e+\nu_e}y+\dfrac{\nu_f}{\lambda_f+\mu_f+\nu_f}z\right). \end{align}
\begin{align} \begin{split} \frac{\sigma_p\lambda_d-\sigma_d\lambda_p}{\sigma_d}x+\frac{\sigma_p\lambda_e-\sigma_e\lambda_p}{\sigma_e}y+\frac{\sigma_p\lambda_f-\sigma_f\lambda_p}{\sigma_f}z&=0,\\ \frac{\sigma_p\mu_d-\sigma_d\mu_p}{\sigma_d}x+\frac{\sigma_p\mu_e-\sigma_e\mu_p}{\sigma_e}y+\frac{\sigma_p\mu_f-\sigma_f\mu_p}{\sigma_f}z&=0,\\ \frac{\sigma_p\nu_d-\sigma_d\nu_p}{\sigma_d}x+\frac{\sigma_p\nu_e-\sigma_e\nu_p}{\sigma_e}y+\frac{\sigma_p\nu_f-\sigma_f\nu_p}{\sigma_f}z&=0. \end{split} \end{align}
Therefore, particular solution of (x,y,z) is
\begin{align} x&=\sigma_d\left(\lambda_p(\mu_e \nu_f-\mu_f \nu_e)+\mu_p(\nu_e \lambda_f-\nu_f \lambda_e)+\nu_p(\lambda_e \mu_f-\lambda_f \mu_e)\right),\\ y&=\sigma_e\left(\lambda_p(\mu_f \nu_d-\mu_d \nu_f)+\mu_p(\nu_f \lambda_d-\nu_d \lambda_f)+\nu_p(\lambda_f \mu_d-\lambda_d \mu_f)\right),\\ z&=\sigma_f\left(\lambda_p(\mu_d \nu_e-\mu_e\nu_d)+\mu_p(\nu_d \lambda_e-\nu_e \lambda_d)+\nu_p(\lambda_d \mu_e-\lambda_e \mu_d)\right). \end{align}
We can prove the inverse version by solving (1) for $\lambda_p, \mu_p, \nu_p$.
2つ目の図には奮闘していた形跡が残っている(ほとんどが車輪の再発明だったが).
ぜひみてってね
重心座標をいじる:
https://www.desmos.com/calculator/huuxahxk7d?lang=en
Application:
https://www.desmos.com/calculator/34gcczu5lb?lang=en
Main Theorem:
https://www.desmos.com/calculator/1mhbiaw9zh?lang=en