この記事はかなり議論が雑であることが頂いたコメントによって分かりました.読み始める前に,まずコメントのやり取りを見ていただけたらと思います.申し訳ありません.(追記)
有理数体や実数体には絶対値が定義されている以外に著しい性質,全順序がありました.私見ですが,順序構造に注目してデデキントの切断の方法で完備化したものが実数体で,絶対値から定義される距離構造に注目してコーシー列の方法で完備化したものが$p$進数体なのではないかなと思います(もちろんコーシー列の方法でも実数体を作れますが).
代数函数体において全順序というのは定義されていなかったので,完備化するとしたらコーシー列の方法しか残されていないということなのだと思います.個人的にはデデキントの切断の方が好きなので残念です.
以下,距離が定義された位相体$K$における完備化を考えます.
$K$におけるコーシー列の全体を$C$とします.
$C$の元$\{a_n\},\{b_n\}$が次の条件を満たすとき,$\{a_n\}\sim\{b_n\}$と定義する:
$\forall\epsilon>0,\exists N\in\mathbb{N}$ s.t. $m,n\ge N\Rightarrow d(a_n,b_m)<\epsilon$
これは同値関係になっています(演習).
$C$を同値関係で割ったものを$\overline{K}$と書くことにする.
$\overline{K}$で足し算・掛け算が定義できる.
補題1における演算によって$\overline{K}$は可換体になる.
上の二つの補題の詳細は原隆先生の「実数の構成に関するノート」を見てもらえれば良いのではないかと思います.
$\overline{K}$上に距離関数$\overline{d}$を次のように拡張する:
$\alpha,\beta\in\overline{K}$について,$\overline{d}(\alpha,\beta)=\lim_{n\to \infty} d(a_n,b_n)$と定義すれば($\{a_n\},\{b_n\}$は$\alpha,\beta$)の代表元),これはwell-definedである.
松坂位相270ページを参照してもらえればいいかなと思います.
$\overline{K}$において,足し算・掛け算・マイナスを取る操作・逆数を取る操作が$\overline{d}$について連続である.
やってみると,要するに$f$が連続,$\{a_n\}$が$a$に収束する時,$\lim_{n\to\infty} f(a_n)=f(a)$を使えばよいことが分かります(演習).[なんかここ怪しいですね.$\lim a_n$が$K$に含まれていないので,これだけでは言えないような気がしてきました(追記)]
明らかに,$\overline{K}$ではコーシー列が収束するので,$\overline{K}$は完備です.
実際にこのように体を完備化する際には,まずもともと位相体になっていることを確認する必要があります.もう,本当にルーチンワークなので頑張ってください!最初に定義を書き下すとやりやすかったです.あと,距離空間の直積にどうやって距離を入れるかですが,僕は$d_{X\times Y}((x,y),(x',y'))=d_X(x,y)+d_Y(x',y')$でやりました.『代数函数論』では多分$d_{X\times Y}((x,y),(x',y'))=\max (d_X(x,y),d_Y(x',y'))$と定義されたものを使っていると思います.
定義すらきちんとできていないところがありますが,なんとなく完備化の道筋が分かればいいかなと思って記事にしました.ここまで見ていただきありがとうございました.ちなみに,$\mathfrak{p}$進位相で完備化すると,なんとLaurent展開ができます.なんか複素解析の匂いもしてきましたね.