$a,b$を正の実数とし,$a>1$とする。定義域を$x\geqq0$とする連続関数$f(x),g(x),h(x)$が次の$3$つの等式を満たしているとする。
\begin{align}
&f(x)=a\exp(-h(x))\\
&g(x)=b\exp\left(\int_{0}^{x} (f(y)-1)dy\right)\\
&h(x)=\int_{0}^{x}g(y)dy
\end{align}
ただし,$\exp(x)=e^x$とする。このとき,$g(x)$の最大値を求めよ。
求めるのは$g(x)$の最大値なので,増減の情報が欲しいので$g^{\prime}(x)$の符号を追う。$g(x)$の式を$x$で微分すれば$f(x)$と$1$の大小でそれが決まることが分かるので,今度は$f(x)$のグラフを追う。$g(x)$の最大値を追う部分の議論は与式の微分後の式の形に注目すれば鮮やかに求まる。
条件の$3$つの式を上から順に$ ①,②,③$とおく。
まず,$②,③$を$x$で微分すると,
\begin{align}
&g^{\prime}(x)=g(x)(f(x)-1)~,~g(0)=b\\
\\
&h^{\prime}(x)=g(x)~,~h(0)=0
\end{align}
また,$①$を$x$で微分すると,$h(0)=0$より,
\begin{align}
&f^{\prime}(x)=-f(x)h^{\prime}(x)~,~f(0)=a\\
\end{align}
$h^{\prime}(x)=g(x)$より$f^{\prime}(x)=-f(x)g(x)$であり,$f(x)>0,g(x)>0$ なので$f^{\prime}(x)<0$を得る。したがって,$f(x)$は単調減少である。
さて,ここで$x\geqq0$で常に$f(x)\geqq1$と仮定すると, $g^{\prime}(x)\geqq0$より$g(x)\geqq g(0)=b>0$なので,
\begin{align} h(x)=\int_{0}^{x}g(y)dy\geqq bx \to\infty~(x\to\infty) \end{align}
これより,$f(x)=a\exp(-h(x))\to0~(x\to\infty)$となり,仮定に矛盾。よって,$x\geqq0$で$f(x)<1$なる$x$が存在する。
これと$f(0)=a>1$,および$f(x)$が連続関数かつ単調減少であることより,$f(\alpha)=1$なる$\alpha$が唯一つ存在する。
$ g^{\prime}(x)=g(x)(f(x)-1)$において,$g(x)>0$であり,$f(x)-1$については先述の議論より$\alpha$の前後で正から負に変化するので,$g(x)$が定義域内で連続かつ微分可能であることに注意すれば,$g(x)$は$x=\alpha$で最大値をとる。
最後に,$f^{\prime}(x)+g^{\prime}(x)+h^{\prime}(x)=0$なので,
\begin{align} &f(x)+g(x)+h(x)=f(0)+g(0)+h(0)=a+b \end{align}
$1=f(\alpha)=a\exp(-h(\alpha))$を踏まえると,$g(x)$の最大値は${g(\alpha)=a+b-\log a-1}$である。
ちなみに本問は数理生物学などでよく登場するLotka-Volterra方程式の形をしてますね。つまり,今回の問題は,
\begin{align}
&f^{\prime}(x)=-f(x)g(x)\\
\\
&g^{\prime}(x)=f(x)g(x)-g(x)
\end{align}
という形ですが,これは,被食者$u$と捕食者$v$の個体数をモデル化したモデル
\begin{align}
&\frac{du}{dt}=\alpha u-\beta uv\\
\\
&\frac{dv}{dt}=\delta uv-\gamma v\\
\end{align}
において,$u=f,v=g,\alpha=0,\beta=\delta=\gamma=1$としたものになります。$1$つ目の方程式は被食者の自然増加から捕食による減少を引いたもので,$2$つ目の方程式は捕食者の捕食による増加から自然減少を引いたものになります。今回の問題だと被食者$f$は自然増殖せず$(\alpha=0)$,捕食者$g$によってのみ減少することになりますね。
あと,解答では$f(x)+g(x)+h(x)=0$っていう結構アクロバティックなことをしたんですが,保存量を作るのはODE(常微分方程式)では結構やる操作です。ODEを解くという意味においては次元削減的な意味を持ちます。実際,物理,特に解析力学やハミルトン系では,系のエネルギー保存則や運動量保存則を見つけることが問題を解くこととほぼ同義であり・力学系を解くための強力な手法の$1$つとなっています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。