$p$ を奇素数で $p \equiv 3\mod4$ とする. このときの 方程式 $y^2+p^2=x^3$ の整数解を求める.
この問題はかの有名な雪江整数Ⅰを読んで類題として得られた.
まず, 与式は $\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$ 上で $(y+p\sqrt{-1})(y-p\sqrt{-1})=x^3$ と分解される.
$(y+p\sqrt{-1})$ と $(y-p\sqrt{-1})$ は$\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$ のイデアルとして互いに素である
ここで, $(y+p\sqrt{-1})$ と $(y-p\sqrt{-1})$ が互いに素でないとする. 共通の素イデアルを $P$ とすると, $P$ は
\begin{equation}
2p\sqrt{-1} = (y+p\sqrt{-1}) - (y-p\sqrt{-1})
\end{equation}
を割る. つまり, $(2p)=(1+\sqrt{-1})^2(p)$ を割る. またこの等式は $(2p)$ の素イデアル分解になっている.
$(p)$ が素イデアルであることは $p\equiv3\mod4$ という仮定よりわかる. また, $(1+\sqrt{-1})$ が素イデアルであることは $\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]/(1+\sqrt{-1})\cong\mathbb{F_{2}}$ であることよりわかる.
よって, $P=(1+\sqrt{-1})$ or $(p)$ である.
$y$ が偶数のとき,
\begin{equation}
y-p=(y+p\sqrt{-1})-p(1+\sqrt{-1})\in P.
\end{equation} である. $y-p$ は奇数であり, $2\in P$ より, $1\in P$ となり矛盾.
$y$ が奇数のとき, 与式より $x$ は偶数である. 与式の両辺を $\mod4$ で考えると $y^2+p^2\equiv2\mod4$ と $x^3\equiv0\mod4$ より矛盾.
$y$ が奇数のときは(i)と同様に矛盾.
$y$ が偶数のとき,
\begin{equation}
y=(y+p\sqrt{-1})-p\sqrt{-1}\in P.
\end{equation}
であるので, $y=2pz$ ($z\in \mathbb{Z}$) と書ける. また与式より $x=pw$ ($w\in \mathbb{Z}$) と書け, これを与式に代入すると,
\begin{eqnarray}
4p^2z^2 + p^2 &=& p^3w^3 \\
4z^2 + 1 &=& pw^3 \\
4z^2 + 1 &\equiv& 0 \mod p \\
(2z)^2 &\equiv& -1 \mod p
\end{eqnarray}
となるが $p \equiv3\mod4$ なので, 平方剰余の法則に矛盾.
よって, $(y+p\sqrt{-1})$ と $(y-p\sqrt{-1})$ は互いに素である.
ここで, 与式はイデアルとして $(y+p\sqrt{-1})(y-p\sqrt{-1})=(x)^3$ となることと素イデアル分解の一意性より, $\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$ のイデアル $I$ があり
\begin{equation}
(y+p\sqrt{-1}) = I^3
\end{equation}
と書ける.
また, $\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$ はPIDなので, $I=(a+b\sqrt{-1})$ ($a,b\in \mathbb{Z}$) と書ける. よって, $\varepsilon \in \mathbb{Z}[\sqrt{-1}]^{\times}=\{\pm1,\pm\sqrt{-1}\}$ を用いて,
\begin{equation}
y+p\sqrt{-1} = \varepsilon(a^3-3ab^2+(3a^2b-b^3)\sqrt{-1})
\end{equation}
となる. $\varepsilon = -1, \pm\sqrt{-1}$ のときは, $a, b$ の符号や場所を変えることで, $\varepsilon = 1$ の場合に帰着できるので, $\varepsilon = 1$ の場合のみを考えればよい. (例. $\varepsilon = \sqrt{-1}$ のとき, 上の等式の右辺は $(b^3-3a^2b)+(a^3-3ab^2)\sqrt{-1}$ となるが, これは $I=(b-a\sqrt{-1})$ としたときの $\varepsilon = 1$ である.)
よって,
\begin{equation}
y+p\sqrt{-1} = (a^3-3ab^2+(3a^2b-b^3)\sqrt{-1}) \tag{1}
\end{equation}
となり, $\sqrt{-1}$ の係数を比較すると, $p=b(3a^2-b^2)$ となる. よって $(b,3a^2-b^2) = (\pm1,\pm p),(\pm p,\pm1)$. ここで, $(b,3a^2-b^2)=(-1,-p),(p,1)$ のとき $a^2$ を計算すると, それぞれ負, 非整数となり矛盾. よって, $(b,3a^2-b^2)=(1,p),(-p,-1)$ である.
$a^2$ を計算すると, $a^2=\frac{p+1}{3}$ となるので $a^2$ が整数となるために $p\equiv-1\mod3$ が必要. また仮定より, $p\equiv-1\mod4$ なので, $p=12s-1$ ($s\in \mathbb{Z}$) と書ける. これを $a^2=\frac{p+1}{3}$ に代入すると, $a^2=4s$ となり, $s=t^2$ ($t \in \mathbb{Z}$) とおくと, $a=\pm2t$ となる. $(a,b)=(\pm2t,1)$ を $y=a^3-3ab^2$ ((1)より) に代入すると, $y=\pm2t(4t^2-3)$ となり, このとき $x=4t^2+1$ である. よって, $p=12t^2-1$ と書けるとき, 方程式の解の組 $(x,y)=(4t^2+1,\pm2t(4t^2-3))$ を得る.
$a^2$ を計算すると, $a^2=\frac{p^2-1}{3}$ となるので, $a^2$ が整数となるためには $p\equiv\pm1\mod3$ が必要.
$p\equiv-1\mod4$ より, $p=12k-1$ ($k\in\mathbb{Z}$) と書け, $a^2=\frac{p^2-1}{3}=8k(6k-1)$ となる. 右辺が平方数となるためには $k\in2\mathbb{Z}$ が必要. $k=2m$ ($m\in\mathbb{Z}$) とおくと, $a^2=16m(12m-1)$ となる. $m(12m-1)$ が平方数となるが, $m$ と $12m-1$ は互いに素なので, それぞれが平方数, つまり $n,l\in\mathbb{Z}$ を用いて $m=n^2, 12m-1=l^2$ と書ける. $m$ を消去すると, $12n^2-1=l^2$ となる これより$l$ は奇数なので, $l=2v+1$ ($v\in\mathbb{Z}$) とすると, $6n^2=2v^2+2v+1$ となるが, これは偶奇が異なるので矛盾.
$p\equiv-1\mod4$ より, $p=12k-5$ ($k\in\mathbb{Z}$) と書け, $a^2 = \frac{p^2-1}{3}=8(6k^2-5k+1)$ となる. 右辺が平方数となるには, $6k^2-5k+1$ が偶数となることが必要. また, これが偶数となるためには, $k$ が奇数となることが必要. よって, $k=2l+1$ ($l\in\mathbb{Z}$) とおくと, $a^2 = 16(12l^2+7l+1)=(3l+1)(4l+1)$ となる. $(3l+1)(4l+1)$ が平方数となるが, $3l+1$ と $4l+1$ は互いに素であるので,それぞれが平方数となる.
$3l+1$ が平方数となるのは $3l+1=(3t\pm1)^2$ ($t\in\mathbb{Z}$) より, $l=t(3t\pm2)$ となるときであり, $4l+1$ が平方数となるのは, $4l+1=(2s+1)^2$ ($s\in\mathbb{Z}$) より $l=s(s+1)$ となるとき. ここで一つ補題を示す.
$l=s(s+1)=t(3t\pm2)$ を満たす $s,t\in\mathbb{Z}$ に対して $l\in7\mathbb{Z}$ である.
$s^2+s = 3t^2\pm2$ を変形すると,
\begin{equation}
(6t\pm2)^2-3(2s+1)^2=1
\end{equation}
という式が得られる. ここで, $x=6t\pm2$, $y=2s+1$ とおくと $x^2-3y^2=1$ となる. ここで連分数展開を用いたペル方程式の解の定理を用いると, $\epsilon=2+\sqrt{3}$ にたいして, $\epsilon^n=x_{n}+y_{n}\sqrt{3}$ ($n\in\mathbb{Z}$) とかけるとき, $(x_n,y_n)$ は方程式 $x^2-3y^2=1$ の解となる.
$n$ が偶数のとき, $y_n$ は偶数となるが, $y=2s+1$ は奇数なので不適.
$n$ が奇数のとき, $x_n\equiv\pm2, y\equiv\pm1\mod7$ となる. 実際, $x_{1}=2, y_1=1$ に関しては成立. $n$ を奇数として,
\begin{eqnarray}
x_{n+2}+y_{n+2}\sqrt{3}&=&(x_{n}+y_n\sqrt{3})\epsilon^2 \\
&=& (x_{n}+y_n\sqrt{3})(7+4\sqrt{3}) \\
&=& 7x_n+12y_n +(4x_n+7y_n)\sqrt{3}
\end{eqnarray}
となるので, 帰納法より $x_{n+2}=7x_n+12y_n\equiv-2y_n\equiv\pm2$, $y_{n+2}=4x_n+7y_n\equiv4x_n\equiv\pm1$ となる. $\epsilon^{-2}$ をかける時も同様に示せる.
よって,
\begin{eqnarray}
y&\equiv&\pm1 \mod7 \\
2s+1&\equiv& \pm1 \\
2s &\equiv& 0,-2 \\
s &\equiv& 0,-1
\end{eqnarray}
となるので, $l=s(s+1)\in7\mathbb{Z}$ である.
ここで, $p=12k-5$, $k=2l+1$ より $p=24l-7$ なので, 補題より $p$ は $7$ の倍数だが, $p$ は素数なので $p=7$ のみ成立.
$p=7$ のとき, $(a,b)=(\pm4,-7)$ となり $x$ と $y$ を計算すると方程式の解 $(x,y) =(65, \pm524)$ という解を得る.
以上より,
$p$ が $p \equiv 3\mod4$ である奇素数のとき 方程式 $y^2+p^2=x^3$ の整数解は $(x,y,p)=(65,\pm524,7),(4t^2+1,\pm2t(4t^2-3),12t^2-1)$ である. ただし, $t$ は $12t^2-1$ が素数となるような 整数 $t$ である.
今回は,$p\equiv3\mod4$ であることや, $\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$ が虚二次体で単数が有限個であること, $\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$ がPID, つまり類数が $1$ であることなど, 恐らくごく簡単の場合を示した.
$p\equiv1\mod4$ における今回の方程式や, $y^2-p=x^3$ などの方程式の整数解については 今回の方法では解けなさそうで, 少し難しそうなので私はもっと勉強して挑戦したいと思います. 全然簡単でこれらが解けた方いれば教えてくださると喜びます.
初めてのmathlogの投稿ですがなにかあれば遠慮なくコメントしてください. 開くことが少ないと思うので気づくのが遅いとは思いますが.
読んでくださりありがとうございました。