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東大数理院試過去問解答例(2017B08)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2017B08の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2017B08

$\mathbb{Q}$に通常の距離位相を入れ、$\mathbb{Q}^\ast=\mathbb{Q}\cup\{\infty\}$$\mathbb{Q}$の一点コンパクト化、つまり$U\subset\mathbb{Q}^\ast$が開集合であることが

  • $U$$\mathbb{Q}$の開集合である
  • $\infty\in U$かつ$\mathbb{Q}^\ast\backslash U$はコンパクト集合

のいずれかを満たすことと同値であるように$\mathbb{Q}^\ast$の位相を定める。以下の問いに答えなさい。

  1. $\mathbb{Q}$の任意のコンパクト集合$C$は内点を含まないこと、つまり任意の$x\in C$及び$x$を含む$\mathbb{Q}$の開集合$U$について$U\not\subseteq C$であることを示せ。
  2. $\mathbb{Q}^\ast$の点列の収束点は存在するなら一意であることを示せ。
  3. $\mathbb{Q}^\ast$は第二可算公理を満たさない、つまり可算な開基を持たないことを示せ。
  1. 距離空間に於いてコンパクトであることと全有界かつ完備であることは同値であるが、$\mathbb{Q}$の開集合は完備でないことから結果が従う。
  2. まず$\mathbb{Q}$に於ける収束点は高々一意であるから、題意に反するような点列$\{x_n\}$が存在するとしたら、それはある点$x\in\mathbb{Q}$$\infty$に収束する。このような点列が存在するとして矛盾を導く。まず$x\in\mathbb{Q}$への収束性により$x_i=\infty$となる$i$は高々有限個しかないから、このような$x_i$を除外することで$\{x_n\}\subseteq\mathbb{Q}$として良い。ここで$C=\{x_n\}_n\cup\{x\}$はコンパクトであるから、$V=\mathbb{Q}^\ast\backslash C$$\infty$の開近傍である。しかし$x_n\in C$なる$n$は存在しないから、$\{x_n\}$$\infty$に収束せず、矛盾が従う。
  3. $\mathbb{Q}^\ast$は可算集合であるから、これが第二可算公理を満たすことは第一可算公理を満たすことと同値であり、(2)からこれはHausdorffであることと同値である。よってHausdorffでないことを示せば良い。しかし(1)から任意の$x\in\mathbb{Q}$について、$x\in S$かつ$\infty \in T$かつ$S\cap T=\emptyset$を満たす開集合$S,T$は存在しないから結果が従う。
投稿日:222
更新日:227

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投稿者

佐々木藍(Ai Sasaki)です。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。X(旧Twitter)→@sasaki_aiiro

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