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東大数理院試過去問解答例(2024B03)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2024B03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2024B03

多項式環S=C[x1,,xn]の極大イデアルI=(x1,,xn)について、S加群M=I/I+2を考える。

  1. S上の任意の自己準同型f:MMについて、あるαCが存在して、Im(fα1M)I+1/I+2かつ(fα1M)2=0が成り立っていることを示しなさい。
  2. MS-加群として直既約でない、つまり2つの0でないS加群M1,M2M=M1M2を満たすものは存在しないことを示しなさい。
  1. まず初めにF=f(x1N1xnNn)とおく。更に任意のijに対して
    Gt=f(xjNixiNix1N1xnNn)
    とおく。このときF=G0であり、更に任意のtについて
    xiGt+1=xjGt
    が成り立っている。まずGNixi0=1で割り切れる。次にGt+1xNit1によって割り切れるとし、
    Gt+1=xiNit1Ht
    と表されるとする。このとき上の式は
    xiNitHt=xjGt
    と書けるから、GtxiNitで割り切れることが従う。よってGtxiNitで割り切れる元で代表されることがわかり、特にFは単項イデアル(x1N1xnNn)の元で代表されることがわかる。ここで
    f(x1N1xnNn)=ax1N1xnNn+
    と表されたとする。但しの部分はI+1の元とする。このとき(i,j)=(Nt,1),(Nt1,1),,(2,1)に対して関係式xiGt+1=xjGtを次々に適用することで
    f(x1)=ax1+
    と表されることがわかる。特にF次の係数はN1,,Nnの取り方に依らない。この係数をαとおく。このとき任意のN1,,Nnに対して
    f(x1N1xnNn)=αx1N1xnNn+FN1,,Nn
    を満たすFN1,,NnI+1が存在する。これによって
    Im(fα)I+1/I+2
    がわかり、ここから(fα)2=0も従う。
  2. 背理法で示す。直既約でないとし、それを実現する直和分解をM=M1M2とすると、S加群の準同型idM1(idM2)は固有値±1を持つから(1)の結果の反する。以上からMは直既約である。
投稿日:202447
更新日:2024814
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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