ここでは東大数理の修士課程の院試の2024B03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2024B03
多項式環の極大イデアルについて、加群を考える。
- 上の任意の自己準同型について、あるが存在して、かつが成り立っていることを示しなさい。
- は-加群として直既約でない、つまりつのでない加群でを満たすものは存在しないことを示しなさい。
- まず初めにとおく。更に任意のに対して
とおく。このときであり、更に任意のについて
が成り立っている。まずはで割り切れる。次にがによって割り切れるとし、
と表されるとする。このとき上の式は
と書けるから、がで割り切れることが従う。よってはで割り切れる元で代表されることがわかり、特には単項イデアルの元で代表されることがわかる。ここで
と表されたとする。但しの部分はの元とする。このときに対して関係式を次々に適用することで
と表されることがわかる。特にの次の係数はの取り方に依らない。この係数をとおく。このとき任意のに対して
を満たすが存在する。これによって
がわかり、ここからも従う。 - 背理法で示す。直既約でないとし、それを実現する直和分解をとすると、加群の準同型は固有値を持つから(1)の結果の反する。以上からは直既約である。