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大学数学基礎解説
文献あり

ベクトル空間の二重双対は「自然」だ、よ

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  徒花です。最近数式を打ってないのでリハビリを兼ねてこの記事を書こうと思います。篠澤広要素は見出しだけです。
(この記事はwikipedia『 自然変換#ベクトル空間の二重双対 』の丸パクりなので、手短に知りたい人はこちらを見ていただけるといいと思います)

双対空間とは

ベクトル空間$V$から係数体$K$への線形写像は一般に線形汎関数と呼ばれます。$v \in V, k \in K$とし、$\phi,\psi$を$V$から$K$への線形汎関数としたとき、
\begin{align} (\phi+\psi)(v)&:=\phi(v)+\psi(v) \\ (k\phi)(v)&:=k(\phi(v)) \end{align}
と定義することによって$V$から$K$への線形汎関数全体の集合もまた体$K$上のベクトル空間とみなすことができます。これは双対空間と呼ばれ、$V^*$で表します。
$V$を$n$次元空間(有限次元)として、$\{v_1,\cdots,v_n\}$を基底とすると、
$$\phi_i(v_j)=\delta_{ij} \quad (1 \le i,j \le n)$$
を満たす$\phi_i\ (i=1,\cdots,n)$が一意的に定まり、$V^*$の基底を成します。このようにして定めた$\{\phi_1,\cdots,\phi_n\}$を$\{v_1,\cdots,v_n\}$の双対基底と呼びます。特に、$V$の次元と$V^*$の次元は一致します。
イメージ的には$V$が「縦ベクトル空間」、$V^*$が「横ベクトル空間」ですね。

二重双対空間は元の空間と「自然」に同型らしい、よ(有限次元)

$V^{**}$もまたベクトル空間の1つですから$V^{*}$の双対空間を考えることもできます。これを二重双対空間と呼んで$V^{**}$で表します。$V$が有限次元なら、$V$と$V^{**}$との間には「基底の取り方に依存しない」同型が存在します。具体的には、$v \in V$に対して$i(v) \in V^{**}$を
$$i(v):V^* \to K\ ;\ \phi \mapsto \phi(v)$$
と定義したときに
$$i:V \to V^{**}\ ;\ v \mapsto i(v)$$
が「基底に依らない」線形同型$V \simeq V^{**}$を与えます。「基底に依らない」という芳しい性質ゆえにこの同型は「自然」な同型と呼ばれます。
(注:有限次元でなければ同型とは限りません。本題から逸れるので、同型とならない例はwikiに丸投げします→wikipedia『 双対ベクトル空間#無限次元の場合 』)

$i$が同型となること

$i$が線形写像であることは認める。
$i$が単射であることを示す。$v \in V \setminus \{0\}$を任意に取ったとき、適切に延長することで$V$の基底$\{v_1=v,v_2,\cdots,v_n\}$とすることができる。この基底に対し双対基底$\{\phi_1,\cdots,\phi_n\}$を構成すると、
$$i(v)(\phi_1)=\phi_1(v)=1$$
となるゆえ$i(v)$は零写像ではない。よって$\ker(i)=\{0\}$だから$i$は単射。
上述したように、双対空間ともとの空間は(有限次元ならば)同じ次元を持つ。ゆえに$\dim V = \dim V^* = \dim V^{**}$である。次元定理より$\dim i(V)=\dim V - \dim \ker(i)=\dim V$であるから$\dim i(v)=\dim V^{**}$。これは$i(V)=V^{**}$を示すから、$i$は全射。

上記の「自然」の説明では満足しない人もいるでしょう。というのも、現代では「自然」という言葉は「自然変換」という圏論の概念を用いて定式化されているのに、そこに踏み込んでいないからです。
 ですが、「「基底に依らない」から自然なんだ!」という理解はなんら問題ありません。ただ、「自然変換」という概念を用いれば「自然」を数学用語としてこれまでより厳格に運用できるというだけです。これからの話を理解していなければ不十分なんてことは全くありません。

 ということで、ここからは二重双対が圏論的に「自然」であることを確かめたい人に向けたお話となります。

双対は反変関手で、二重双対は共変関手だ、よ

体$K$上のベクトル空間の圏を$\mathbf{Vect}_K$と書くことにします。対象が体$K$上のベクトル空間、射が線形写像の圏です。ベクトル空間の双対を与える操作は$\mathbf{Vect}_K$から$\mathbf{Vect}_K$への反変関手、二重双対を与える操作は$\mathbf{Vect}_K$から$\mathbf{Vect}_K$への共変関手と考えることができます。
 しかし、双対・二重双対を関手とみなすには、射である線形写像の双対も定義されていなくてはなりません。

双対写像

$V,W$を$K$上のベクトル空間とし、$f:V \to W$を線形写像とする。このとき、$f$の双対写像$f^*:W^* \to V^*$を
$$W^* \ni \phi \mapsto \phi \circ f \in V^*$$
によって定義する。

それでは、実際に確かめてみましょう。確認すべきことは「恒等射が保たれること」と「射の合成が(積の順序は逆になるかもしれないが)保たれること」です。

  1. $id_V:V \to V$の双対写像${id_{V}}^*:V^* \to V^*$は$\phi \in V^*$を$\phi \circ id_V=\phi$に写すので$V^*$上の恒等写像。ゆえに${id_V}^*=id_{V^*}$.
  2. $f:V \to W,g:W \to U$を線形写像とすると$${(f\circ g)}^*(\phi) = \phi \circ f \circ g = g^*(\phi \circ f) = g^*(f^*(\phi))=(g^*\circ f^*)(\phi) \quad (\phi \in U^*)$$となるから${(f\circ g)}^*=g^*\circ f^*$.

ベクトル空間の双対を取る操作は確かに反変関手となっているみたいですね!
一方、二重双対については、上記の双対の性質を2回適用すれば${id_V}^{**}=id_{V^{**}},{(f\circ g)}^{**}=f^{**}\circ g^{**}$が成立すると分かるので共変関手です。

二重双対は「自然」だ、よ

圏論的に二重双対が「自然」であることを定式化します。具体的には、恒等関手から二重双対関手への自然変換を与えます。

さっきまで$i$と呼んでいた写像をベクトル空間$V$で添字付けて$\eta_V$と書くことにします。すなわち
$$\eta_V:V \to V^{**};v \mapsto i(v)$$
とします。要はこれが自然変換$\eta$のコンポーネントになるわけです。
$V,W$を$K$上のベクトル空間、$f:V \to W$を線形写像としたとき、以下の図式が可換になることを示します。
\begin{CD} V @>{f}>> W \\ @VV{\eta_V}V @VV{\eta_W}V \\ V^{**} @>{f^{**}}>> W^{**} \end{CD}
$v \in V$を任意に取ります。このとき
\begin{align} (\eta_W \circ f)(v)&=\eta_W(f(v)) \\ &=i(f(v)) \\ (f^{**} \circ \eta_V)(v)&=f^{**}(i(v)) \\ &= i(v) \circ f^* \end{align}
となります。このふたつは一見異なって見えますが、任意の$\phi \in W^{*}$に対し
\begin{align} i(f(v))(\phi)&=\phi(f(v)) \\ \big(i(v)\circ f^*\big)(\phi)&=i(v)(\phi \circ f) \\ &= (\phi \circ f)(v) =\phi(f(v)) \end{align}
となるので実は等しいです。したがって、$v$は任意なので、
$$\eta_W \circ f = f^{**} \circ \eta_V$$
が確認できました。
以上より$\eta$は自然変換です。$\mathbf{Vect}_K$を$K$上の有限次元ベクトル空間の圏に置き換えれば、各コンポーネント$\eta_V$が同型射なので$\eta$は自然同型になります。
これで晴れて、「$V \simeq V^{**}$は「自然」な同型だ」と形式的に正確な意味で言えるようになったわけですね!

余談

余談ですが、初めは恒等関手を$\mathbf{1}_{\mathbf{Vect}_K}:\mathbf{Vect}_K \to \mathbf{Vect}_K$,二重双対関手を$D:\mathbf{Vect}_K \to \mathbf{Vect}_K$と表記して$\eta:\mathbf{1}_{\mathbf{Vect_K}} \Rightarrow D$と書こうとしていたのですが、$D$を使うのがしっくり来なくてやめました。頭文字がD(Double dual)だから自然なはずなんですけどね。頭文字Dだから。

参考文献

投稿日:1日前
更新日:1日前
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徒花
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