ブラウワーの不動点定理の証明の概略を備忘録として残します。
間違ってましたら、優しくご指摘頂ければ幸いです。
$X$を非空集合とする。写像$f:X\rightarrow X$に対して、$f(x^\ast)=x^\ast$を満たす点$x^\ast\in X$が存在するとき、点$x^\ast$を$f$の不動点という。
$M$を位相空間$X$の部分空間とする。$X$から$M$の中への連続写像$r:X\rightarrow M$で、その$M$への制限が恒等写像となるようなものが存在するとき、$M$は$X$へのレトラクトであるといい、写像$r$を引き込みという。
$\mathbb{R}^n$の単位球$B_n$(n次元の球)から、その境界$S_{n-1}$への引き込みは存在しない。
【お気持ち】円板に穴を開けなければ輪に変形することはできない。
位相幾何学の知識がいるので、詳細は省略する。
単位球$B_n$から$S^{n-1}$の中への連続写像$r:B_{n}\rightarrow S^{n-1}$で、その$S^{n-1}$への制限をしたとき連続写像$r$が恒等写像となるようなものは存在しない。
というのも、任意の点$x\in B_n/\lbrace0\rbrace$において、単位球から$0$を除いた$B_n/\lbrace0\rbrace$から$r(x)\in S^{n-1}$に写す引き込み$r$はあるが、最後に原点が最後に残ってしまう。
なので、恒等写像となるようなものは存在しない。
円板に穴を開けなければ、最後に原点が残る
$B^n$を$n$次元球とし、$f:B^n\rightarrow B^n$を連続写像とする。このとき、$B^n$の中に$f(x)=x$となる点$x$が少なくとも1個存在する。
【お気持ち】
例えば$B^n$が円板型であれば、円板型に同相な曲面上のフローには必ず不動点が存在する(図2)。
珈琲にミルクを入れて混ぜたイメージ図
$f:B^n\rightarrow B^n$なる連続写像$f$が不動点をもたないとする。
$B^n$のすべての点について$f(x)\neq x$であるとする。
$f(x)$から$x$に線を伸ばした時、$B^n$の境界$S_{n-1}$と交わる点を$r(x)$とする。
このとき、$r$は連続写像である[3]。
$r:B^n\rightarrow S_{n-1}$は$x\in S_{n-1}$のとき、恒等写像が存在する。これは、定理1と矛盾する。
よって、そのような$f$は存在しない。
イメージ