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大学数学基礎解説
文献あり

ブラウワーの不動点定理のお気持ちと簡単な証明

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1. はじめに

ブラウワーの不動点定理の証明の概略を備忘録として残します。
間違ってましたら、優しくご指摘頂ければ幸いです。

2. ブラウワーの不動点定理

不動点

Xを非空集合とする。写像f:XXに対して、f(x)=xを満たす点xXが存在するとき、点xfの不動点という。

引き込み

Mを位相空間Xの部分空間とする。XからMの中への連続写像r:XMで、そのMへの制限が恒等写像となるようなものが存在するとき、MXへのレトラクトであるといい、写像rを引き込みという。

Rnの単位球Bn(n次元の球)から、その境界Sn1への引き込みは存在しない。

【お気持ち】円板に穴を開けなければ輪に変形することはできない。

位相幾何学の知識がいるので、詳細は省略する。

単位球BnからSn1の中への連続写像r:BnSn1で、そのSn1への制限をしたとき連続写像rが恒等写像となるようなものは存在しない。

というのも、任意の点xBn/{0}において、単位球から0を除いたBn/{0}からr(x)Sn1に写す引き込みrはあるが、最後に原点が最後に残ってしまう。

なので、恒等写像となるようなものは存在しない。

円板に穴を開けなければ、最後に原点が残る 円板に穴を開けなければ、最後に原点が残る

Brouwerの不動点定理

Bnn次元球とし、f:BnBnを連続写像とする。このとき、Bnの中にf(x)=xとなる点xが少なくとも1個存在する。

【お気持ち】

例えばBnが円板型であれば、円板型に同相な曲面上のフローには必ず不動点が存在する(図2)。

珈琲にミルクを入れて混ぜたイメージ図 珈琲にミルクを入れて混ぜたイメージ図

f:BnBnなる連続写像fが不動点をもたないとする。

Bnのすべての点についてf(x)xであるとする。

f(x)からxに線を伸ばした時、Bnの境界Sn1と交わる点をr(x)とする。

このとき、rは連続写像である[3]。

r:BnSn1xSn1のとき、恒等写像が存在する。これは、定理1と矛盾する。

よって、そのようなfは存在しない。

イメージ イメージ

参考文献

投稿日:20231227
更新日:20231229
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hdk105
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計測・制御・情報に興味があります. 備忘録として残していきます.

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