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大学数学基礎解説
文献あり

Prékopa-Leindlerの不等式

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目標

本記事では,次の定理を証明する.

Prékopa-Leindlerの不等式

Borel可測関数f,g,m:Rd[0,]λ(0,1)は,すべてのx,yRdに対して
m((1λ)x+λy)f(x)1λg(y)λ
を満たすものとする.このとき,次の不等式
Rdm(x)dx(Rdf(x)dx)1λ(Rdg(x)dx)λ
が成り立つ.

※2024/03/16追記
公開してから気づいたのですが,Prékopa-Leindlerの不等式(d=1の場合)の証明で1箇所論理の飛躍があった((1λ){sf}+λ{sg}の可測性を確認せずにBrunn-Minkowskiの不等式を使ってしまった)ので,わかる方がいらっしゃったら教えていただけますと幸いです.

疑問「2つのBorel可測集合A,BRの和A+Bは必ずLebesgue可測である」のような命題は成り立ちますか?

準備

以下,Lebesgue可測集合AのLebesgue測度を|A|と書く.

Lebesgue測度の内部正則性

RのLebesgue可測集合Aについて
|A|=sup{|K|K は A に含まれるコンパクト集合}
が成り立つ.

略.

Brunn-Minkowskiの不等式 (d=1の場合)

Rの空でないLebesgue可測集合A,Bλ(0,1)に対して,(1λ)A+λBがLebesgue可測であれば
|(1λ)A+λB|(1λ)|A|+λ|B|
が成り立つ.

まずA,Bがコンパクトかつmax(A)=min(B)=0の場合に示す.このとき
(1λ)A+λB{(1λ)A+λ{0}=(1λ)A,(1λ){0}+λB=λB
より(1λ)A+λB(1λ)AλBが成り立つ.また
(1λ)AλB(,0][0,){0}
でもある.したがって
|(1λ)A+λB||(1λ)AλB|=|(1λ)A|+|λB|=(1λ)|A|+λ|B|.


一般のコンパクト集合A,Bに対してはA:=Amax(A)B:=B+min(B)とおけば,max(A)=min(B)=0だから
|(1λ)A+λB|(1λ)|A|+λ|B|
であり,Lebesgue測度の平行移動不変性から
|(1λ)A+λB|(1λ)|A|+λ|B|
を得る.


A,Bが一般のLebesgue可測集合の場合は,KALBを満たす空でないコンパクト集合K,Lを任意に取れば,(1λ)K+λL(1λ)A+λBより
|(1λ)A+λB||(1λ)K+λL|(1λ)|K|+λ|L|
であり,右辺でK,Lについてそれぞれ上限を取れば所望の不等式
|(1λ)A+λB|(1λ)|A|+λ|B|
を得る.

Prékopa-Leindlerの不等式 (d=1の場合)

Borel可測関数f,g,m:R[0,]λ(0,1)は,すべてのx,yRに対して
m((1λ)x+λy)f(x)1λg(y)λ
を満たすものとする.このとき,次の不等式
Rm(x)dx(Rf(x)dx)1λ(Rg(x)dx)λ
が成り立つ.

まずf,gが有界で,それらのLノルムf,gが両方1の場合に示す.
Rm(x)dx=R([0,)1[0,m(x)](s)ds)dx=[0,)(R1{sm}(x)dx)ds=[0,)|{sm}|ds
であり,f=g=1に注意すれば同じ計算で
Rf(x)dx=[0,1]|{sf}|ds,Rg(x)dx=[0,1]|{sg}|ds
もわかる.また,s[0,1]x{sf}およびy{sg}に対して
m((1λ)x+λy)f(x)1λg(y)λs1λsλ=s,
つまり(1λ)x+λy{sm}が成り立つから,各s[0,1]に対して(1λ){sf}+λ{sg}{sm}である.するとBrunn-Minkowskiの不等式より
|{sm}||(1λ){sf}+λ{sg}|(1λ)|{sf}|+λ|{sg}|
が成り立ち(?),これをs[0,1]で積分すれば
Rm(x)dx[0,1]|{sm}|dx(1λ)[0,1]|{sf}|dx+λ[0,1]|{sg}|dx=(1λ)Rf(x)dx+λRg(x)dx(Rf(x)dx)1λ(Rg(x)dx)λ
となる.


一般の有界関数f,gに対しては,いま示した不等式
Rm(x)f1λgλdx(Rf(x)fdx)1λ(Rg(x)gdx)λ
を整理すればよい.


f,gが有界でない場合は,各nNに対して
Rm(x)1{mn}(x)dx(Rf(x)1{fn}(x)dx)1λ(Rg(x)1{gn}(x)dx)λ
が成り立つから,nとすれば単調収束定理より所望の不等式を得る.

証明

Prékopa-Leindlerの不等式

Borel可測関数f,g,m:Rd[0,]λ(0,1)は,すべてのx,yRdに対して
m((1λ)x+λy)f(x)1λg(y)λ
を満たすものとする.このとき,次の不等式
Rdm(x)dx(Rdf(x)dx)1λ(Rdg(x)dx)λ
が成り立つ.

次元dに関する帰納法

d=1の場合は既に示した.d2の場合は,各sRに対してBorel可測関数fs,gs,ms:Rd1[0,]
fs(x):=f(s,x),gs(x):=g(s,x),ms(x):=m(s,x)
で定める.このとき任意のs,tRx,yRd1に対して
m(1λ)s+λt((1λ)x+λy)=m((1λ)s+λt,(1λ)x+λy)=m((1λ)(s,x)+λ(t,y))f(s,x)1λg(t,y)λ=fs(x)1λgt(y)λ
が成り立つから,帰納法の仮定より,すべてのs,tRに対して
Rd1m(1λ)s+λt(x)dx(Rd1fs(x)dx)1λ(Rd1gt(x)dx)λ
となる.ところで次の関数M,F,G:R[0,]
M(s):=Rd1ms(x)dx,F(s):=Rd1fs(x)dx,G(s):=Rd1gs(x)dx
はBorel可測で,いま示した通りすべてのs,tRに対して
M((1λ)s+λt)F(s)1λG(t)λ
が成り立つから,d=1の場合のPrékopa-Leindlerの不等式より
RM(s)ds(RF(s)ds)1λ(RG(s)ds)λ,
つまり
Rdm(x)dx(Rdf(x)dx)1λ(Rdg(x)dx)λ
を得る.

f,g,mがLebesgue可測の場合は,fs,gs,msすべてのsRに対してLebesgue可測とは限らないため,ほとんどいたるところの(s,t)R2に対してM((1λ)s+λt)F(s)1λG(t)λであることしかいえない.

Prékopa-Leindlerの不等式から,d2の場合のBrunn-Minkowskiの不等式が示せる.

Brunn-Minkowskiの不等式

Rdの空でないBorel可測集合A,Bλ(0,1)に対して,(1λ)A+λBがBorel可測であれば
|(1λ)A+λB|1/d(1λ)|A|1/d+λ|B|1/d
が成り立つ.

1A,1B,1(1λ)A+λBは非負値Borel可測関数であり,任意のx,yRdに対して
1A(x)1λ1B(y)λ={1(xA かつ yB)0(それ以外)}1(1λ)A+λB((1λ)x+λy)
が成り立つから,Prékopa-Leindlerの不等式より
|A|1λ|B|λ|(1λ)A+λB|
となる.この不等式から|A|,|B|>0のとき
1|(1λ)|A|1/d(1λ)|A|1/d+λ|B|1/dA|A|1/d+λ|B|1/d(1λ)|A|1/d+λ|B|1/dB|B|1/d|
が成り立つので,整理すれば所望の不等式を得る.なお|A|=0の場合は,1点a0Aを取って
(1λ)|A|1/d+λ|B|1/d=|λB|1/d=|(1λ){a0}+λB|1/d|(1λ)A+λB|1/d
のように示せる.|B|=0の場合も同様.

A,Bが空でないという仮定は必要である.実際,たとえばA=かつ|B|>0の場合は(1λ)A+λB=だから,左辺=0λ|B|1/d=右辺となる.

2つの対数凹関数f,g:Rd[0,)に対して,合成積fg:Rd[0,]
(fg)(x):=Rdf(y)g(xy)dy
もまた対数凹であることを示せ.ここで,関数f:Rd[0,]対数凹(log-concave)であるとは,任意のx,yRdλ(0,1)に対して
f((1λ)x+λy)f(x)1λf(y)λ
が成り立つことをいう.

解答例

xRdに対して,関数hx:R2d(x,y)f(y)g(xy)[0,)を考える.このとき,任意のx,x,y,yRdλ(0,1)に対してh(1λ)x+λx((1λ)y+λy)=f((1λ)y+λy)g(((1λ)x+λx)((1λ)y+λy))=f((1λ)y+λy)g((1λ)(xy)+λ(xy))f(y)1λf(y)λg(xy)1λg(xy)λ=hx(y)1λhx(y)λが成り立つから,Prékopa-Leindlerの不等式よりRdh(1λ)x+λx(y)dy(Rdhx(y)dy)1λ(Rdhx(y)dy)λ,つまり(fg)((1λ)x+λx)(fg)(x)1λ(fg)(x)λを得る.


誤りや改善点がありましたら,教えていただけると嬉しいです.
ここまでお読みいただき,ありがとうございました.

参考文献

投稿日:2024312
更新日:2024331
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