今回から数回にわけて位相空間論の基礎について解説していきたいと思います.
めんどいので辞めます. (2024/6/5)
今回は「〔位相空間論〕 距離空間 part1.~グラフ理論を添えて~」です. 距離空間の定義と例及びグラフ理論における距離を解説していきます.
これからの位相空間論の記事では以下の記号を断りなく使うことがある.
以降適宜追加していく.
任意の
(1)
(2)
(3)
上の3つの条件を距離の公理と呼ぶ.
条件(3)を三角不等式と呼ぶ.
このとき, 対
単に
先の記号のもとで,
距離の公理を満たすことを示せばよい.
(1)
(2)
(3)
従って,
(1), (2), (3)より
3行目から4行目の変形では次のシュワルツの不等式を用いた.
シュワルツの不等式
任意の実数
が成り立つ.
証明は簡単のため省略する. (右辺-左辺を計算すればそれが0以上であることがわかる.)
(3)において
少し詳しく書きすぎたかもしれない. 今後はここまで詳しく書かないが自分で行間を埋めながら読んでほしい.
空でない集合
距離の公理(1)~(3)を満たすことを示せばよい.
(1), (2)は明らかだろう.
(3)は
これより, 離散距離空間は距離空間となる.
tea break がtea break であるために厳密さを欠くところがありますがご了承ください. (詳しく知りたい方は, グラフ理論の本を手に取ってみると良いです. )
グラフとは, 点と点同士をつなぐ辺の集まりである.
(単純無向)グラフとは空でない有限集合
頂点集合の元を頂点, 辺集合の元を辺と呼ぶ.
他の定義と異なる場合があるが, それは有向グラフであったり多重グラフであったりを考えていることがある. また, 単に今回の趣旨とは外れるため定義を簡単にしたところがある. 詳しく知りたい方は調べてみると良い.
である.
である.
即ち,
(単純無向)グラフをわかりやすく図にしよう.
例えば頂点集合
即ち, グラフ
さあ!この図を見たら「距離」を考えたくなるでしょう!!
グラフ理論の言葉での「距離」の定義は時期尚早である. (きちんとした定義はほかの記事で扱うことにする)
ではどのような「関数」を考えたら「距離の公理」を満たすことができるかを考察していこう.
次のグラフ
def:distanceを再掲しておく.
を空でない集合とする. 関数 が次の3つ条件を満たすとき, 関数 を集合 上の距離関数と呼ぶ.
任意のに対して
(1)である. そして, .
(2).
(3).
さて, ここでの集合
...! 頂点集合
そこで関数
(上の例を用いた説明)
頂点
ふむ...これは「頂点間の離れ度合い」を表していているのかな...なら
Q. 本当にそうだろうか.
A. これは距離関数にはならないしそもそも関数ですらない.
(違うグラフでの例も挙げた)
ここで問題になったのは, 頂点から頂点への経路が一意に定まらないので複数値が考えられることと, 同じところを繰り返すことで複数値が考えられることであった.
ではどうしたらよいだろうか...
以下の概念を用いて上で挙げた「他の例」のような状況を考えなくて済む.
すべての頂点が異なる経路を道という.
また, 複数の値をとることを解消するために道(経路)に含まれる辺の数(道(経路)の長さという)の最小値を考えてみる.
上の予想を改良して次の予想を立てる.
異なる2頂点
それっぽくなってきたが
このままでは満たさないことは明らかである.
(
異なる2頂点
def:distanceを再再掲しておく.
を空でない集合とする. 関数 が次の3つ条件を満たすとき, 関数 を集合 上の距離関数と呼ぶ.
任意のに対して
(1)である. そして, .
(2).
(3).
簡単な計算によって(1),(2),(3)が成り立つ...と思いきや一つ忘れていることがある.
ここでdef:graphに戻ろう.
気付いたであろうか?そう, グラフには以下のようなものも含まれるのである.
このようなグラフを連結でないグラフと呼ぶ.
この記事では便宜上, グラフの頂点間の距離を考えるときそのグラフは連結なグラフとする.
(例えば図5における
グラフ
さあ, 予想の時間です.
連結なグラフ
つまり, この予想は関数
予想1,2(2')はうまくいかなかったが, 予想3はうまくいくだろうか.
「三度目の正直」となるか, はたまた「二度あることは三度ある」のか, 「閲覧者の顔も三度」ここらで決着をつけたい.
Q. この予想は正しいか?
A. 正しい!
では証明してみよう.
def:distanceを再再再掲しておく. (もう覚えたかな?)
を空でない集合とする. 関数 が次の3つ条件を満たすとき, 関数 を集合 上の距離関数と呼ぶ.
任意のに対して
(1)である. そして, .
(2).
(3).
(1),(2)は
(3)
定義より
長さ
以上より,
tea break が以外にも長くなったため今回はここで終わろうと思う.次回は距離空間の開集合や近傍, 連続について扱う.次々回で扱う位相空間の先駆けとして理解を確かなものにして欲しい.