前回の記事( Burchnall-Chaundyの作用素とAppellの超幾何級数 )でBurchnall-Chaundyによる18個の展開公式を紹介した. 今回は前回扱わなかったタイプの展開公式について書いていきたいと思う.
これらは前回のものと比較してそれほど単純ではないものが多いので, 全て証明の概略を書いていきたいと思う.
まず最初の2つはTaylor展開
の特別な場合として理解できる. 直接計算することによって,
が分かるので,
と書き換えることができる. ここで, Whippleによる変換公式
を書き直すと,
が得られる. よって,
を展開することによって, 3つ目の公式を得る. また,
を展開すれば5つ目の公式を得る. 次に
を書き直すと,
となるので, これを用いると,
を得る. これを展開すれば, 7個目の公式が得られる. 次に,
と書けることより,
であり,
よって, 直接計算により,
と書くことができる.
これらにより, 9個目, 11個目の公式が従う. よって奇数番目の公式は全て示すことができる. 奇数番目の公式が示されれば, それを偶数番目の公式の右辺に代入して, 左辺に一致することを示すという方針によって, 偶数番目の公式は簡単に示すことができる. これらの公式は, 基本的な超幾何級数の公式だけから導出できているが, Whippleの変換公式を用いて証明されたものは前回の記事で紹介したものより深い結果であると考えられる.