Mass conservation law and Extinction in finite time for the nonlinear diffusion equation
Introduction
今回は, 次の非線形拡散方程式の初期値問題
について考える. この方程式はのときは熱方程式(Heat equation), のときはスポンジや砂利の中における水の拡散といったslow diffusionと呼ばれる現象を記述する多孔質媒質方程式(Porous medium equation), のときはプラズマの拡散などを記述するFast diffusion equation, のときはVery Fast diffusion equationと呼ばれる. なぜで大きく性質が異なるのかについて述べる. 方程式は
と書き換えることができ, は拡散係数と呼ばれる. 今は粒子程度の小さいものを考えているので, のときは小さいものの正冪であるため拡散係数が非常に小さくなる. 故に拡散が遅くなり, 有限伝播である. さらに, がほぼだと拡散しなくなるため, の場合は退化放物型方程式(Degenerate parabolic equation)と呼ばれる.
同様の議論より, のときは小さいものの負冪になり, で特異性をもち, 拡散係数が非常に大きくなり, 無限伝播性という特徴がある. 特に, のときは拡散係数がとんでもないことになるので, 区別してVery Fast diffusionと呼ばれる. また, のときは拡散係数を採用して
となり, Logarithmic diffusionと呼ばれる.
以下では, この方程式のよく知られている結果である質量保存則について述べる. そのため, まず問題のVery weak solutionと呼ばれる弱解の概念の導入を行う.
Very weak solution
が次をみたすとき, 問題のVery weak solutionという.
- ,
- 任意のに対して,
をみたす.
以上の定義より次の定理が成立する.
Existence theorem and mass conservation law
, とし, , と仮定する. このとき, 問題のVery weak solution が一意に存在し,
が成立する. さらに, のとき,
が成立する.
Initial-Boundary-value problem
本章では, 問題のVery weak solutionの存在性について述べるため, を滑らかな境界をもつ有界領域とした次の初期値境界値問題
を考える. まず問題のVery weak solutionの定義を次のように与える.
が次をみたすとき, 問題のVery weak solutionという.
- ,
- 任意のに対して,
をみたす.
次の定理が成立する.
, とし, , と仮定する. このとき, 問題のVery weak solutionが時間大域的に一意に存在し,
が成立する.
4段階に分けて証明を行う.
Step:1 は非負かつと仮定する.
方程式の退化性または特異性を回避するため,
とした初期値境界値問題
を考える. 問題は放物型方程式における最大値原理より
であると予想される. ただし, である. ここで, 問題の方程式は
と書き換えられ, が式をみたしているときとする. 故に, は正値かつ滑らかで, である. このとき, 問題はstandard quasilinear theory[cf. 1, Chapter 6]より古典解を一意にもつことがわかる. よって, 放物型方程式における最大値原理を適用すると, 式が成立する. 実際,
であるので, とおけば,
とに関する線型方程式になる. したがって, 最大値原理よりよりすなわちがしたがう. 同様にしてであるから, 古典解は式をみたす. さらに, は任意なので, 同様に
が成立する. ここで,
とおくと,
となる. ここで,
である. したがって, であるので, 最高階の微分の係数が退化しないに関する線型方程式に帰着できる. よって, なので, 最大値原理より in すなわち
が得られる. 故に, は下に有界な単調減少列であるので, 各点の意味で
となるが存在し, である. 一方, 上では,
となる.
Step2: 上のCauchy列の構成.
となるの存在性を証明するため, 古典近似解に対して次の-contraction principleと呼ばれる不等式
が成立することを確かめる.
を
の近似列とする. すなわち, として
をみたす非負かつ非減少関数とする. 問題の古典近似解をとし,
の両辺にをかけて上で積分すると,
となる. したがって,
が成立するので,
を得る. 故に, 両辺をからまで積分すれば,
となるので, とを入れ替え同様の議論をすれば, 式が成立する. これにより, 初期値にmollifierを作用させ,
とした初期値境界値問題の古典近似解と任意のに対して
となる. よって, は上のCauchy列である. はBanach空間であるから,
となるが一意に存在する.
Step3: -連続性の証明.
今得られたに対しても,
が成立するので,
を得る. 故にでの連続性が得られる. の場合においても同様に計算すればよい. 以上よりが証明された.
また, Very weak solutionについて次の比較原理が成り立つ.
Comparison principle for Very weak solution
, a.e. in とする. このとき, a.e. in である.
a.e. in と仮定する. このとき, -contraction principleより
となる. これはに矛盾する. 故に a.e. in である.
Initial-value problem
前章の内容を踏まえ, 問題の解の構成を行う. そのため, 次の初期値境界値問題
を考える. ここで, は原点中心半径の次元球,
である. ただし, は
をみたすカットオフ関数である. よって, 前章の議論から任意のに対して
となるが一意に存在する. 以下, このが上のCauchy列であることを示す. をみたすに対して,
と評価できる. したがって, は上のCauchy列である. また, 任意のに対して
が成立するので,
を得る. ここで, 今得られたに対して次が成立する.
を前章と同様のものとし,
とする. すなわちは関数の近似列である. さらに, を,
をみたすカットオフ関数とし, と定める. つまり
である. 方程式
の両辺にをかけて上で積分すると,
となる. 右辺は
と評価できる. ここで, のときはであればであるので
となる. 一方, のときはを用いると
となる. 以上の計算を整理すると, とすればであることから,
を得る. よって, 両辺をからまで積分すると,
となるので, を入れ替えて同様の議論をすれば補題の証明が完了する.
補題4から, 前章と同様にしてが示される. 以上で, 初期値問題のVery weak solutionの構成が完了した.
Mass conservation law
いよいよ質量保存則の証明を行う. のときは, 初期値問題における解の構成で用いたカットオフ関数をとると,
となる. のときは同様の手法を用いて証明することができない. 実際,
は上で可積分であるが, は可積分ではない. そのため, 次のHerrero-Pierreの不等式と呼ばれる補題を示す.
Herreo-pierre's ineq.
任意のとに対して
が成立する. ここで, はに依存する定数, である.
方程式の両辺にをかけて積分すると,
となる. 式の右辺において
と評価できる. ここで, とおけば, に関する常微分方程式
が得られるので, 両辺をで割ると,
となる. よって, 両辺をからまで積分すると,
となるので,
が得られる. ここで, が
をみたすように選ぶと,
が成立する. 実際, とすると,
と評価できる. 以上の議論より, 式の証明が完了した.
補題より, とすると,
となる. また, 式においてとの順序関係はないので,
を得る. よって, 任意のに対して
となるので, とすれば
となり, 質量保存則が成立することが証明された.
なお, Herrero-Pierreの不等式の証明で出てきた積分
が有界となるの選び方として,
が挙げられるが, 詳しい計算は省略する.
Extinction in finite time
本章では, Fast diffusionにおける解の有限時刻消滅について述べる. 次の定理の証明を行う.
Extinction in finite time
とし, とする. このとき, であり,
となるが存在する.
この定理より,
すなわち
のとき, 解が有限時刻消滅することがわかる.
まず, , において-estimateが成立することを示す.
-estimate
, , とする. このとき, であり,
が成立する.
とする. 方程式の両辺にをかけて上で積分すると,
となるので, まとめると
が得られる. よって, 任意のに対して
となるので, 補題の証明が得られる.
先程の-estimateより
となる. ここで, Sobolevの不等式とに対する仮定より
が得られる. したがって,
が得られるので, 両辺をからまで積分すると,
となる. 故に, となるが存在することが示された.