関数について、がからまで変化するときの平均変化率とは、
なる値のことでした。これ、とについての対称式ですよね?対称式ってことは基本対称式で表したくなりますよね?ということでやってやりました。
テイラー展開を用いたいので、は無限回微分可能とします。収束半径等はとりあえず気にせず、形式的な式変形のみ考えます。
をのまわりでテイラー展開すると
となる。したがって、
ここで、
より、偶数次の項は消え、
となる。これで基本対称式で表すことができた。
以上です!
と、元々はここで終わらせるつもりでした。具体例の1つぐらい欲しいところですが、特に面白いものも見つからず……。しかし、一応もう一晩だけ考えてみるかと粘ったところ、あることを思いつきました。
基本対称式で表せると嬉しいのはどういう時かというと、例えばがある2次方程式の解であれば、直接を求めずに方程式の係数だけで計算できる、というのがあります。
2次方程式の解…………はっ!
フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列 だ
(ピンと来ない方もどうか続けてお読みください。)
ということで、フィボナッチ数列への応用を紹介します!
まずはおさらいから。
以下の漸化式で定まる数列を、フィボナッチ数列という。
フィボナッチ数列の一般項は、以下のように表せることが知られています。
導出については、例えば
こちら
を参照。
普通に2次方程式を解いて当てはめると
となります。フィボナッチ数列の一般項といえばこの形で書かれることが多いですね。「自然数列なのにが必要だなんて不思議だね~」なんてのは定番の話題です。
しかし!今回の結果を用いれば、をとの基本対称式で表すことができます。すなわち、を使わずに表せるはずです!果たしてどのような表示になるのでしょうか。見てみましょう!
とおく。は任意の複素数のまわりでテイラー展開可能で、収束半径はであるから、任意の複素数に対して上の結果が適用できる。
と表せる。解と係数の関係よりであるから、上の結果より
である。ここで、を求める。から
(の範囲ではでも成り立つことに注意)
であり、したがって
である。ここで、のときはと約束する。これを用いれば、
を得る。なお、のときはと約束したので、これは有限和である。
狙い通り、フィボナッチ数列の一般項をを使わずに表すことができました!(これで「表すことができた」と言って良いのかどうかは個人の判断に任せます。)私はこの表示を知らなかったので驚いたのですが、調べてみたら既出だったようです。
こちらの記事
に解説がありました。カタランの公式というそうですが、検索してもヒット数が少なく、出典が気になるところです。
今度こそ以上です!