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東大数理院試過去問解答例(2013B04)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2013B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2013B04

$L=\mathbb{C}(X,Y,Z)$の同型$\sigma,\tau$
$$ \sigma(X)=Y\quad \sigma(Y)=Z\quad\sigma(Z)=X $$
$$ \tau(X)=X\quad\tau(Y)=\omega Y\quad\tau(Z)=\omega^2Z $$
で定義する。但し$\omega:=\exp(i\frac{2\pi}{3})$である。体$K$$L$の元のうち$\sigma,\tau$で固定されるもの全体とする。

  1. $X$$K$上の最小多項式及び拡大次数$[K(X):K]$を求めなさい。
  2. 拡大次数$[L:K]$を求めなさい。
  3. $L/K$の最大アーベル拡大を$M$とする。拡大次数$[M:K]$を求めなさい。
  4. $L/K$の中間体$M'$で、$[L:M']=3$であるようなものの共役による同値類の個数を求めなさい。
2013B04
  1. まず体$K'$$X^3,Y^3,Z^3$に関する対称式全体の為す体としたとき、$L/K'$は位数$6\cdot27$のガロア拡大であり、そのガロア群は、$X,Y,Z$$X_1,X_2,X_3$と置いたとき
    $$ \sigma_{i,j,k,s}(X_1)=\omega^i(X_{s(1)}) $$
    $$ \sigma_{i,j,k,s}(X_2)=\omega^j(X_{s(2)}) $$
    $$ \sigma_{i,j,k,s}(X_3)=\omega^k(X_{s(3)}) $$
    で定義される$L$の同型$\sigma_{i,j,k,s}$全体として定まる。但し$i,j,k$$\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$の元を、$s$は対称群$S_3$の元を走る。このとき$K$$L/K'$の中間体であり、$K$$XYZ,\frac{X^3}{Y^3}+\frac{Y^3}{Z^3}+\frac{Z^3}{X^3}$を含むことを考慮すると、$\sigma_{i,j,k,s}$$K$を固定するためには、$s$$1,(1,2,3),(1,3,2)$であり、$i+j+k=0$であることが必要条件である。またこの条件が満たされているとき、$\sigma_{i,j,k,s}$$\sigma$$\tau$によって生成されるから、充分条件でもある。この条件を満たす$i,j,k,s$$27$通りあるから、$[L:K]=27$である。またこの$27$個の作用のうち$X$を固定するものは$3$個あるから、$[K(X):K]=\frac{27}{3}={\color{red}9}$である。また$\mathrm{Gal}(L/K)$の元による$X$の像は$X,\omega X,\omega^2X,Y,\omega Y,\omega^2Y,Z,\omega Z,\omega^2Z$であるから、$X$の最小多項式は
    $$ {\color{red}(T^3-X^3)(T^3-Y^3)(T^3-Z^3)} $$
    である。
  2. 上の議論で示した通り、$[L:K]={\color{red}27}$である。
  3. まず$L/K$はアーベル拡大ではない。そして$H=\{\sigma_{0,0,0,1},\sigma_{1,1,1,1},\sigma_{2,2,2,1}\}$$\mathrm{Gal}(L/K)$の位数$3$の正規部分群である。位数$9$の群はアーベル群なので、この$H$に対応する体が最大アーベル拡大である。よって$[M:K]={\color{red}9}$
  4. まず$\mathrm{Gal}(L/K)$の元は全て位数$3$であるから、位数$3$の部分群の個数は$\frac{27-1}{2}=13$個である。
    $\mathrm{Gal}(L/K)$の元のうち$\sigma_{i,j,k,1}$の形をしたもの全体を$N$とおき、$\sigma_{0,0,0,s}$の形のもの全体を$H$とおくと、$\mathrm{Gal}(L/K)=N\rtimes H$である。まず$N$に含まれる位数$3$の部分群は
    $$ \{\sigma_{0,0,0,1},\sigma_{1,1,1,1},\sigma_{2,2,2,1}\} $$
    $$ \{\sigma_{0,0,0,1},\sigma_{0,1,2,1},\sigma_{0,2,1,1}\} $$
    $$ \{\sigma_{0,0,0,1},\sigma_{1,2,0,1},\sigma_{2,1,0,1}\} $$
    $$ \{\sigma_{0,0,0,1},\sigma_{1,0,2,1},\sigma_{2,0,1,1}\} $$
    $4$つであるが、最初の$1$つは中心に含まれているから共役な群は自身のみであり、残りの$3$つは$\sigma_{0,1,2},\sigma_{1,2,0},\sigma_{2,0,1}$が互いに共役であることから共役である。よって$N$に含まれる共役類は$2$つ。
    次に$N$を含まない共役類を考える。まず$N$に含まれない位数$3$の部分群は$13-4=9$個である。$\sigma_{i,j,k,s}\notin N$と可換な元は$9$個であるから、このような$\sigma_{i,j,k,s}$の共役による軌道の個数は$\frac{27}{9}=3$個である。$\mathrm{Gal}(L/K)$の元は共役によって$s$の部分が変わらないことを考慮すると、位数$3$の部分群の共役類は$\frac{9}{3}=3$個であることがわかる。
    以上から$G$の位数$3$の部分群の共役類の個数は$2+3={\color{red}5}$である。
投稿日:2024810
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藍色日和
藍色日和
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