0

東大数理院試過去問解答例(2013B04)

95
0

ここでは東大数理の修士課程の院試の2013B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2013B04

L=C(X,Y,Z)の同型σ,τ
σ(X)=Yσ(Y)=Zσ(Z)=X
τ(X)=Xτ(Y)=ωYτ(Z)=ω2Z
で定義する。但しω:=exp(i2π3)である。体KLの元のうちσ,τで固定されるもの全体とする。

  1. XK上の最小多項式及び拡大次数[K(X):K]を求めなさい。
  2. 拡大次数[L:K]を求めなさい。
  3. L/Kの最大アーベル拡大をMとする。拡大次数[M:K]を求めなさい。
  4. L/Kの中間体Mで、[L:M]=3であるようなものの共役による同値類の個数を求めなさい。
2013B04
  1. まず体KX3,Y3,Z3に関する対称式全体の為す体としたとき、L/Kは位数627のガロア拡大であり、そのガロア群は、X,Y,ZX1,X2,X3と置いたとき
    σi,j,k,s(X1)=ωi(Xs(1))
    σi,j,k,s(X2)=ωj(Xs(2))
    σi,j,k,s(X3)=ωk(Xs(3))
    で定義されるLの同型σi,j,k,s全体として定まる。但しi,j,kZ/3Zの元を、sは対称群S3の元を走る。このときKL/Kの中間体であり、KXYZ,X3Y3+Y3Z3+Z3X3を含むことを考慮すると、σi,j,k,sKを固定するためには、s1,(1,2,3),(1,3,2)であり、i+j+k=0であることが必要条件である。またこの条件が満たされているとき、σi,j,k,sστによって生成されるから、充分条件でもある。この条件を満たすi,j,k,s27通りあるから、[L:K]=27である。またこの27個の作用のうちXを固定するものは3個あるから、[K(X):K]=273=9である。またGal(L/K)の元によるXの像はX,ωX,ω2X,Y,ωY,ω2Y,Z,ωZ,ω2Zであるから、Xの最小多項式は
    (T3X3)(T3Y3)(T3Z3)
    である。
  2. 上の議論で示した通り、[L:K]=27である。
  3. まずL/Kはアーベル拡大ではない。そしてH={σ0,0,0,1,σ1,1,1,1,σ2,2,2,1}Gal(L/K)の位数3の正規部分群である。位数9の群はアーベル群なので、このHに対応する体が最大アーベル拡大である。よって[M:K]=9
  4. まずGal(L/K)の元は全て位数3であるから、位数3の部分群の個数は2712=13個である。
    Gal(L/K)の元のうちσi,j,k,1の形をしたもの全体をNとおき、σ0,0,0,sの形のもの全体をHとおくと、Gal(L/K)=NHである。まずNに含まれる位数3の部分群は
    {σ0,0,0,1,σ1,1,1,1,σ2,2,2,1}
    {σ0,0,0,1,σ0,1,2,1,σ0,2,1,1}
    {σ0,0,0,1,σ1,2,0,1,σ2,1,0,1}
    {σ0,0,0,1,σ1,0,2,1,σ2,0,1,1}
    4つであるが、最初の1つは中心に含まれているから共役な群は自身のみであり、残りの3つはσ0,1,2,σ1,2,0,σ2,0,1が互いに共役であることから共役である。よってNに含まれる共役類は2つ。
    次にNを含まない共役類を考える。まずNに含まれない位数3の部分群は134=9個である。σi,j,k,sNと可換な元は9個であるから、このようなσi,j,k,sの共役による軌道の個数は279=3個である。Gal(L/K)の元は共役によってsの部分が変わらないことを考慮すると、位数3の部分群の共役類は93=3個であることがわかる。
    以上からGの位数3の部分群の共役類の個数は2+3=5である。
投稿日:2024810
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中