ここでは東大数理の修士課程の院試の2013B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2013B04
体の同型を
で定義する。但しである。体をの元のうちで固定されるもの全体とする。
- の上の最小多項式及び拡大次数を求めなさい。
- 拡大次数を求めなさい。
- の最大アーベル拡大をとする。拡大次数を求めなさい。
- の中間体で、であるようなものの共役による同値類の個数を求めなさい。
2013B04
- まず体をに関する対称式全体の為す体としたとき、は位数のガロア拡大であり、そのガロア群は、をと置いたとき
で定義されるの同型全体として定まる。但しはの元を、は対称群の元を走る。このときはの中間体であり、はを含むことを考慮すると、がを固定するためには、がであり、であることが必要条件である。またこの条件が満たされているとき、はとによって生成されるから、充分条件でもある。この条件を満たすは通りあるから、である。またこの個の作用のうちを固定するものは個あるから、である。またの元によるの像はであるから、の最小多項式は
である。 - 上の議論で示した通り、である。
- まずはアーベル拡大ではない。そしてはの位数の正規部分群である。位数の群はアーベル群なので、このに対応する体が最大アーベル拡大である。よって
- まずの元は全て位数であるから、位数の部分群の個数は個である。
の元のうちの形をしたもの全体をとおき、の形のもの全体をとおくと、である。まずに含まれる位数の部分群は
のつであるが、最初のつは中心に含まれているから共役な群は自身のみであり、残りのつはが互いに共役であることから共役である。よってに含まれる共役類はつ。
次にを含まない共役類を考える。まずに含まれない位数の部分群は個である。と可換な元は個であるから、このようなの共役による軌道の個数は個である。の元は共役によっての部分が変わらないことを考慮すると、位数の部分群の共役類は個であることがわかる。
以上からの位数の部分群の共役類の個数はである。