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東大数理院試2004年度専門問4解答

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$$\newcommand{CC}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{FF}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{IIm}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{NN}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{PP}[0]{\mathbb{P}} \newcommand{QQ}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{RR}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{RRe}[0]{\operatorname{Re}} \newcommand{ZZ}[0]{\mathbb{Z}} $$

東大数理の院試(2004年度専門問4)の解答です.
自分が作った解答は ここ に置いてあります.代数の問題も数問解いてありますが,それだけをpdfにまとめて公開する気がしないので,ここで個別に書いておくことにします.

(東大数理2004年専門問4)

$p$$3$以上の素数とする.単位元をもつ可換環$A$の可逆元のなす群$A^\times$は,位数$p^2$の巡回群にはならないことを証明せよ.

$A^\times \cong \ZZ / p^2 \ZZ$となる$A$が存在したとする.$|A^\times| = p^2$は奇数だから$-1 \in A^\times$の位数も奇数.よって$-1 = 1$だから$A$の標数は$2$である.$A^\times$の生成元を$g$とし,環準同型 $\varphi : \FF_2[x] \to A$$x \mapsto g$で定める.$\Ker \varphi$$\FF_2[x]$のイデアルなので,一つの$f \in \FF_2[x]$で生成される.$f_0(x) = x^{p^2} - 1$とおくと$(f_0) \subset \Ker \varphi$であるから$f_0$$f$で割り切れる.また$f_0'(x) = p^2 x^{p^2 - 1} \not= 0 \, (x \in A \setminus \{ 0\})$だから$f_0$は重根を持たない.よって$f$も重根を持たないから,$\FF_2$上で既約かつどの二つも互いに素な多項式$f_1, \dots, f_n$があって$f = f_1 \cdots f_n$とおける.従って準同型定理と中国剰余定理から
\begin{align*} \IIm \varphi &\cong \FF_2[x] / (f_1 \cdots f_n) \\ &\cong \FF_2[x] / (f_1) \times \cdots \times \FF_2[x] / (f_n) \\ &\cong \FF_{2^{d_1}} \times \cdots \times \FF_{2^{d_n}}. \end{align*}
ただし$d_i = \deg f_i$とおいた.$x \not\in \Ker \varphi$であること,また$g$の位数は$p^2 > 1$だから $x - 1 \not\in \Ker \varphi$であることから$d_i \geq 2$である.
ここで$(\IIm \varphi)^\times = A^\times$を示す.$\IIm \varphi \subset A$より$(\IIm \varphi)^\times \subset A^\times$である.逆に$u \in A^\times$なら$v \in A^\times$が存在して$uv = 1$となる.$\varphi|_{R^\times} : R^\times \to A^\times$は全射だから,$u', v' \in R^\times$であって$\varphi(u') = u, \varphi(v') = v$となるものが存在する.この時$1 = uv = \varphi(u')\varphi(v')$だから$u = \varphi(u') \in (\IIm \varphi)^\times.$よって$A^\times \subset (\IIm \varphi)^\times$となるから示された.
以上から
\begin{align*} A^\times &\cong (\FF_{2^{d_1}} \times \cdots \times \FF_{2^{d_n}})^\times \\ &\cong \FF_{2^{d_1}}^\times \times \cdots \times \FF_{2^{d_n}}^\times \\ &\cong \ZZ / (2^{d_1} - 1)\ZZ \times \cdots \times \ZZ / (2^{d_n} - 1)\ZZ \end{align*}
だから,位数を比較して$p^2 = (2^{d_1} - 1)\cdots (2^{d_n} - 1).$これより$n \leq 2$である.$\bmod 4$で見ると,$d_i \geq 2$より$1 \equiv (-1)^n$なので$n = 2.$この時$2^{d_i} - 1 > 1$より$2^{d_1} - 1 = 2^{d_2} - 1 = p$であるが,$A^\times \cong (\ZZ / p\ZZ)^2 \not\cong \ZZ / p^2 \ZZ$となって矛盾.

投稿日:17
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delta
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