結構昔に解いたやつを記事に起こしてみました。
Twitter(現 X)のフォロワーさんが送ってくれた自分の履修範囲外を的確についてくる問題が解いて結構面白かったのでその一部始終を書いてみようかなと。
つぎの「せきぶん」をもとめよう!
$n\in\mathbb{N};$
${\sf (1)}\;\displaystyle I_n=\int_0^{\pi\over2}\sin^nx\:{\rm d}x$
${\sf (2)}\;\displaystyle I_n=\int_0^{\frac\pi2}\cos^nx\:{\rm d}x$
${\sf (3)}\;I_n=\displaystyle\int_0^{\frac\pi4}\tan^nx\:{\rm d}x$
……うわぁ。問題文のゆるさに対しての問題の禍々しさがすごい。
まぁ順当に(1)からやっていくかぁ、どうしよ。
……とは言ったものの、
一回自分の直感に従ってみたらA41ページ分量の計算式全部吹っ飛んだしなぁ。
オープンブックにしてもいいって言ってたから大学の教材見てくるかぁ。
……あ、あった。これ使えそう。三角関数の漸化式の求め方。
お~し、やるかぁ!!
$$\begin{aligned}
&n\geq 3;\\
I_n&=\int_0^{0.5\pi}\sin^nx\:{\rm d}x
\\&=-\int_0^{0.5\pi}(\cos x)'\cdot\sin^{n-1}x\:{\rm d}x
\\&=(n-1)\int_0^{0.5\pi}\cos^2x\sin^{n-2}x\:{\rm d}x-\cancel{\bigg[\cos x\sin^{n-1}x\bigg]_0^{0.5\pi}}^{\:0}
\\&=(n-1)\int_0^{0.5\pi}\sin^{n-2}x\:{\rm d}x-(n-1)\int_0^{0.5\pi}\sin^nx\:{\rm d}x
\\\Longrightarrow&\;I_n=\int_0^{0.5\pi}\sin^nx\:{\rm d}x=\frac{n-1}n\int_0^{0.5\pi}\sin^{n-2}x\:{\rm d}x=\frac{n-1}nI_{n-2}
\end{aligned}$$
お~、$I_{n-2}$が出てきやがったか。なら$n=2$も外さなきゃあかんな。$I_0$は定義してないし。($n\geq3$に修正)
んで~、この漸化式を一般式に直せばいいんだな。
しかし間隔が$2$なので奇偶分ける必要ありそう。
$$\begin{aligned} &({\rm i})\;n=2i+1\;(i\in\mathbb{N}); \\I_n&=\frac{2i}{2i+1}I_{n-2} \\&=\frac{2i}{2i+1}\cdot\frac{2i-2}{2i-1}I_{n-4} \\&\quad\quad\quad\vdots \\&=\frac{2i}{2i+1}\times\frac{2i-2}{2i-1}\times\cdots\times\frac23I_1 \end{aligned}$$
……ってあれ、2ずつ飛ぶ階乗ってどう表すんだ?
(問題投げたフォロワー)「!!」
あ、$!!$? あなた二重階乗って言うのね!(間接引用)
ほ~。んじゃ縮めましょうか。$\times\,1$はなくてもあってもいいし。
$$\therefore n=2i+1\;(i\in\mathbb{N});\;I_n=\frac{(2i)!!}{(2i+1)!!}I_1=\frac{(n-1)!!}{n!!}I_1$$
$I_1$はあとで求めます。それじゃ次は偶数です。
$$\begin{aligned}
&({\rm ii})\;n=2i\;(i\geq2,\;i\in\mathbb{N});
\\I_n&=\frac{2i-1}{2i}I_{n-2}
\\&=\frac{2i-1}{2i}\cdot\frac{2i-3}{2i-2}I_{n-4}
\\&\quad\quad\quad\vdots
\\&=\frac{2i-1}{2i}\times\frac{2i-3}{2i-2}\times\cdots\times\frac{3}{4}I_2
\end{aligned}$$
……あ、これ$I_0$定義しないといけないヤツだ。
なら$n=2$も含めて改めて。
$$\begin{aligned}
&\therefore n=2i\;(i\in\mathbb{N});
\\I_n&=\frac{2i-1}{2i}\times\frac{2i-3}{2i-2}\times\cdots\times\frac{1}{2}I_0
\\&=\frac{(2i-1)!!}{(2i)!!}I_0=\frac{(n-1)!!}{n!!}I_0
\\&\left(I_0:=\int_0^{0.5\pi}\sin^0x\:{\rm d}x=\int_0^{0.5\pi}{\rm d}x=\frac{\pi}2\right)
\end{aligned}$$
んじゃ$n=1$もやっとこ~ね。
$$\begin{aligned}
&({\rm iii})\;n=1;
\\I_n&=\int_0^{0.5\pi}\sin x\:{\rm d}x
\\&=-\cos x\bigg]^{0.5\pi}_0=1
\end{aligned}$$
んでぇ、ケース分けを少しでも減らしたいから奇数にこれ代入してみるか。
$$I_1=\frac{0!!}{1!!}I_1=\frac11I_1=I_1\quad(0!!:=1)$$
お、恒常式できてもうたや~ん。よし。んじゃ奇数のほうの式に$n=1$も加えましょ。
無理やり$0!!$定義したけど。$0!=1$だしいいよね。
ということでまとめましょう。これが${\sf (1)}$の答えです。
$$\begin{aligned}
{\sf (1)}\;&n\in\mathbb N;\;I_n=\int_0^{0.5\pi}\sin^nx\:{\rm d}x=\begin{cases}
\displaystyle \frac{(n-1)!!}{n!!} & (n\!:{\sf odd}) \\
\displaystyle \frac{\pi(n-1)!!}{2\cdot n!!} & (n\!:{\sf even})
\end{cases}
\\&({\sf ただし}\;0!!=1!!=1)
\end{aligned}$$
さて、次の${\sf (2)}$は$\cos^nx$なんですが、
$\displaystyle \int_0^{0.5\pi}\cos^1 x\:{\rm d}x=\int_0^{0.5\pi}\sin^1 x\:{\rm d}x=1$、$\displaystyle \int_0^{0.5\pi}\cos^0 x\:{\rm d}x=\int_0^{0.5\pi}\sin^0 x\:{\rm d}x=\frac{\pi}2$なので
${\sf (1)}$とほぼ、というかまったく同じ答えになるんですよね。
ということで簡易版の式をどうぞ。
$$\begin{aligned}
&n\geq 3;\\
I_n&=\int_0^{0.5\pi}\cos^nx\:{\rm d}x
\\&=\int_0^{0.5\pi}(\sin x)'\cdot\cos^{n-1}x\:{\rm d}x
\\&=\cancel{\bigg[\sin x\cos^{n-1}x\bigg]_0^{0.5\pi}}^{\:0}+(n-1)\int_0^{0.5\pi}\sin^2x\cos^{n-2}x\:{\rm d}x
\\&=(n-1)\int_0^{0.5\pi}\cos^{n-2}x\:{\rm d}x-(n-1)\int_0^{0.5\pi}\cos^nx\:{\rm d}x
\end{aligned}$$
$$\begin{aligned}
\Longrightarrow\;I_n&=\int_0^{0.5\pi}\cos^nx\:{\rm d}x=\frac{n-1}n\int_0^{0.5\pi}\cos^{n-2}x\:{\rm d}x
\\&=\frac{n-1}nI_{n-2}=\frac{n-1}n\cdot\frac{n-3}
{n-2}I_{n-4}=\cdots
\\&=\begin{cases}
\displaystyle \frac{(n-1)!!}{n!!}I_1 & (n\!:{\sf odd}) \\
\displaystyle \frac{(n-1)!!}{n!!}I_0 & (n\!:{\sf even})
\end{cases}
\\&=\begin{cases}
\displaystyle \frac{(n-1)!!}{n!!} & (n\!:{\sf odd}) \\
\displaystyle \frac{\pi(n-1)!!}{2\cdot n!!} & (n\!:{\sf even})
\end{cases}\end{aligned}$$
そして先ほどの$I_0$,$I_1$の定義を引っ張ってきて$\mathbb N$で閉じているようにしましょ。
これが${\sf (2)}$の答えとなります。
$$\begin{aligned}
{\sf (2)}\;&n\in\mathbb N;\;I_n=\int_0^{0.5\pi}\cos^nx\:{\rm d}x=\begin{cases}
\displaystyle \frac{(n-1)!!}{n!!} & (n\!:{\sf odd}) \\
\displaystyle \frac{\pi(n-1)!!}{2\cdot n!!} & (n\!:{\sf even})
\end{cases}
\\&({\sf ただし}\;0!!=1!!=1)
\end{aligned}$$
さて、これが第一の問題かも知れません。$\tan^nx$です。
これは……どうしよう。$\tan$の導関数は$\sec^2$だしなぁ。
(※ ${\sf (1)}$、$\sf (2)$と同じことやろうとして失敗済み。)
……あ。置換積分……でできるか? やって、みるかぁ。
$$\begin{aligned}
&({\rm i})\;n\geq2;
\\I_n&=\int_0^{0.25\pi}\tan^nx\:{\rm d}x
\\&=\int_0^{0.25\pi}(\sec^2x-1)\tan^{n-2}x\:{\rm d}x
\\&=\int_0^{0.25\pi}\sec^2x\tan^{n-2}x\:{\rm d}x-\int_0^{0.25\pi}\tan^{n-2}x
\\&\langle{\sf 左項のみ}\;t=\tan x\;\Longrightarrow\;{\rm d}t=\sec^2x\:{\rm d}x,\;0< t<1) \rangle
\\&=\int_0^1t^{n-2}\:{\rm d}t-\int_0^{0.25\pi}\tan^{n-2}x\:{\rm d}x
\\&=\frac1{n-1}-I_{n-2}
\\&=\frac1{n-1}-\frac1{n-3}+I_{n-4}
\\&\quad\quad\quad\vdots
\\&=\sum_{k=1}^p\frac{(-1)^{k+1}}{n-(2k-1)}+(-1)^pI_{n-2p}\quad(p\in\mathbb{N},\;p\leq\frac n2)
\end{aligned}$$
……はぁ~~~~。上の式で$p$の奇偶でまた符号分かれるじゃないですか。ということで${\rm mod}\:2$ではなく${\rm mod}\:4$で判定します。はぁ。
まぁとりあえず$I_0$と$I_1$をやっておこう。
$$I_0=\int_0^{0.25\pi}{\rm d}x=\frac\pi4$$
$$\begin{aligned}
I_1&=\int_0^{0.25\pi}\tan x\:{\rm d}x=\int_0^{0.25\pi}\frac{\sin x}{\cos x}\:{\rm d}x
\\&\left\langle t=\cos x\;\Longrightarrow\:{\rm d}t=-\sin x\:{\rm d}x,1>t>\frac1{\sqrt2}\right\rangle
\\&=\int_{0.5\sqrt2}^1\frac1t\:{\rm d}t=\ln t\:\!\bigg]_{0.5\sqrt2}^1=\ln\sqrt2=\frac{\ln2}2
\end{aligned}$$
おけ。それじゃ、行きます。
$$\begin{aligned}
&({\rm i})\;n\equiv 0\;({\rm mod}\:4);
\\I_n&=\frac1{n-1}-\frac1{n-3}+\cdots+\frac13-1+I_0
\\&=\sum_{k=1}^{0.5n}\frac{(-1)^{k}}{2k-1}+\frac{\pi}4
\end{aligned}$$
$$\begin{aligned}
&({\rm ii})\;n\equiv 2\;({\rm mod}\:4);
\\I_n&=\frac1{n-1}-\frac1{n-3}+\cdots-\frac13+1-I_0
\\&=-\left\{\sum_{k=1}^{0.5n}\frac{(-1)^k}{2k-1}+\frac{\pi}4\right\}
\end{aligned}$$
$$\begin{aligned}
&({\rm iii})\;n\equiv 1\;({\rm mod}\:4);
\\I_n&=\frac1{n-1}-\frac1{n-3}+\cdots+\frac14-\frac12+I_1
\\&=\sum_{k=1}^{0.5(n-1)}\frac{(-1)^k}{2k}+\frac{\ln2}2
\end{aligned}$$
$$\begin{aligned}
&({\rm iv})\;n\equiv 3\;({\rm mod}\:4);
\\I_n&=\frac1{n-1}-\frac1{n-3}+\cdots-\frac14+\frac12-I_1
\\&=-\left\{\sum_{k=1}^{0.5(n-1)}\frac{(-1)^k}{2k}+\frac{\ln2}2\right\}
\end{aligned}$$
$({\rm i})$と$({\rm ii})$、$({\rm iii})$と$({\rm iv})$を統一させたいので、$({\rm ii})$と$({\rm iv})$の符号は取っ払って$(-1)^{0.5n}$、$(-1)^{0.5(n-1)}$をそれぞれにかけます。
これによってケースを短縮できます。
また、$n=1$を$({\rm iii})$に無理矢理入れるために$\displaystyle\sum_{k=1}^0a_k:=0$と定義します。
何も足してないから$0$でいいよね。(暴論)
ということでこちらが${\sf (3)}$の答えとなります。
$$\begin{aligned}
{\sf (3)}\;&I_n=\int_0^{0.25\pi}\tan^nx\:{\rm d}x=
\begin{cases}
\displaystyle(-1)^{0.5(n-1)}\left\{\sum_{k=1}^{0.5(n-1)}\frac{(-1)^k}{2k}+\frac{\ln2}2\right\} & (n\!:{\sf odd}) \\
\displaystyle(-1)^{0.5n}\left\{\sum_{k=1}^{0.5n}\frac{(-1)^k}{2k-1}+\frac{\pi}4\right\} & (n\!:{\sf even})
\end{cases} \\
&\left({\sf ただし}\;\{a_n\};\;\sum_{k=1}^0 a_k=0,\;n\in\mathbb{N}\right)
\end{aligned}$$
はぁ~~~~~。疲れました。
書き写すだけなのに疲れた。(既にWordで解いていた)
でも$n=1$のケースは統合できてなかったからやってよかったです。
正解判定貰ったし検算も済んでいるのでエラーはないと思います。
(23.11.06. 18:56 追記)
思いっきりエラーありました。${\sf (3)}$-$n\!:{\sf odd}$での級数の分母が$2k$ではなく$(2k-1)$でした。
なぜ違和感を持たなかったのか。申し訳ございませんでした。
また何かありましたらぜひコメントにまで。よろしくお願いします。
これどこの範囲なんでしょう。多分大学の範囲ですかね。
大学入試で$n$と$n-2$での漸化式を証明せよ、みたいな問題は見たことありますが。
私は初見でした。ウォリス積分という名称もたった今検索して知りました。
では、今回はこれにて失礼します。また、次の記事で。