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東大数理院試過去問解答例(2018B04)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2018B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2018B04

奇素数$p$をとり、$\zeta:=\exp\left(i\frac{2\pi}{p^2}\right)$及び$\alpha:=\sqrt[p]{p}\zeta$とおく。

  1. $f(x):=\sum_{i=0}^{p-1}X^{ip}$$\mathbb{Q}[X]$の既約多項式であることを示しなさい。
  2. 拡大次数$[\mathbb{Q}(\zeta,\alpha):\mathbb{Q}]$及び$[\mathbb{Q}(\alpha):\mathbb{Q}]$を求めなさい。
  3. $\mathbb{Q}(\alpha)/\mathbb{Q}$がガロア拡大かどうかを判定しなさい。
  4. $\mathbb{Q}(\zeta,\alpha)/\mathbb{Q}$の中間体で、$[F:\mathbb{Q}]=p^2$であるようなものの個数を求めなさい。
  1. $f(X+1)$はモニックかつ最高次係数以外の係数が$p$の倍数であり、定数項が$p$であるから、アイゼンシュタインの既約判定法から既約である。よって$f(X)$も既約である。
  2. まず
    $$ \mathbb{Q}(\zeta,\alpha)=\mathbb{Q}(\zeta,\sqrt[p]{p}) $$
    である。ここで$\mathbb{Q}(\zeta)\cap\mathbb{Q}(\sqrt[p]{p})$$\mathbb{Q}$$\mathbb{Q}(\sqrt[p]{p})$のいずれかであるが、$\mathbb{Q}(\zeta)/\mathbb{Q}$はアーベル拡大、特に任意の部分拡大がガロア拡大であることから、$\mathbb{Q}(\zeta)\cap\mathbb{Q}(\sqrt[p]{p})=\mathbb{Q}$が従う。よって
    $$ [\mathbb{Q}(\zeta,\alpha):\mathbb{Q}]={\color{red}p^2(p-1)} $$
    である。いま$\mathbb{Q}(\zeta,\alpha)/\mathbb{Q}$は位数$p^2(p-1)$のガロア拡大であり、そのガロア群$G$
    $$ \sigma_{s,t}(\zeta)=\zeta^s $$
    $$ \sigma_{s,t}(\sqrt[p]{p})=\sqrt[p]{p}\zeta^{pt} $$
    を満たすもの全体として表される。但し$s$$(\mathbb{Z}/p^2\mathbb{Z})^\times$全体を、$t$$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$全体を走る。ここで
    $$ \sigma_{s,t}(\sqrt[p]{p}\zeta)=\sqrt[p]{p}\zeta^{s+pt} $$
    であるから$\alpha$を固定するような元の個数は$p$個である。よって
    $$ [\mathbb{Q}(\alpha):\mathbb{Q}]=\frac{p^2(p-1)}{p}={\color{red}p(p-1)} $$
    である。
  3. たとえば$\sigma_{2,0}$に対して$\mathbb{Q}(\alpha)$は安定ではない。よって拡大$\mathbb{Q}(\alpha)/\mathbb{Q}$ガロアではない
  4. まず所望の中間体は$G$の位数$p-1$の部分群と対応している。$G$$p$シロー部分群の個数を$n_p$としたとき、シローの定理から$n_p|p-1$かつ$p|n_p-1$であるから、$n_p=1$である。よって$G$の唯一の$p$シロー部分群を$N$とおく。$G$の位数$p-1$の部分群$H$を任意に取ったとき、
    $$ G=N\rtimes H $$
    が満たされている。よって$H$$G/N$に同型である。以上から位数$p-1$$G$の部分群は全て巡回群であることがわかる。ここで$G$の元$\sigma_{s,t}$が位数$p-1$であるためには$s\in(\mathbb{Z}/p^2\mathbb{Z})^\times$の位数が$p-1$であることが必要充分であり、そのような$s$$\varphi(p-1)$個ある(但し$\varphi$はオイラー関数)。よって$G$の位数$p-1$の元は$p\varphi(p-1)$個ある。一方位数$p-1$の巡回群に含まれる生成元の個数は$\varphi(p-1)$であるから、$G$の位数$p-1$の巡回群の個数は$\frac{p\varphi(p-1)}{\varphi(p-1)}={\color{red}p}$である。

(2)の$\mathbb{Q}(\alpha)$の拡大次数を求める方法として、本記事では$\mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta,\alpha)/\mathbb{{Q}})$のガロア群を(集合として)求めて、そのうち$\alpha$を固定する元の個数を求める方法を取りました。ただ所望の拡大次数を求めるに当たっては、$\alpha$
$$ X^{p(p-1)}+pX^{p(p-2)}+\cdots+ p^{p-2}X^{p}+p^{p-1} $$
の根であるから
$$ [\mathbb{Q}(\alpha):\mathbb{Q}]\leq p(p-1) $$
である一方、$\sqrt[p]{p}$
$$ X^p-p $$
の根なので
$$ [\mathbb{Q}(\zeta,\alpha):\mathbb{Q}(\alpha)]=[\mathbb{Q}(\sqrt[p]{p},\alpha):\mathbb{Q}(\alpha)]\leq p $$
であり、事前に示していた$[\mathbb{Q}(\zeta,\alpha):\mathbb{Q}]=p^2(p-1)$と併せて
$$ [\mathbb{Q}(\alpha):\mathbb{Q}]=p $$
といった議論もできます。

この方法は本記事の誤りを指摘してくださった方から参考として見せていただいたものです。この場を借りて厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

投稿日:202487
更新日:2024826
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藍色日和
藍色日和
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