自然数の分割に対して, 各をその和因子という. 以下, 分割をのように書いたとき, であるとして, そのときのをその分割の長さという. 後で用いる分割の性質を一つ定義しておく.
自然数の分割が-差的であるとは全てのに対し, であることをいう.
Rogers-Ramanujanの恒等式
を分割定理として書き換えることを考える. まず, 1つ目の式
の右辺は
と表されるので, そのの係数はの分割であって, その和因子がを法としてまたはと合同なものの個数を与えている. 左辺は
のの係数はの以下の和因子による分割の個数を与えている. Young図形の共役を考えることによって, これはの長さ以下の分割の個数に等しい. そのような分割
は長さの2-差的な分割
に書き換えることができ, 逆に長さの2-差的な分割が与えられたとき,
はの長さ以下の分割を与える. よって,
のの係数はの長さの-差的な分割の個数を与えている. よって, それらを全て足し合わせた
のの係数はの-差的な分割の個数に等しい. よって次を得る.
Rogers-Ramanujanの分割定理1
の分割で和因子がを法としてと合同なものからなるものの個数は, の-差的な分割の個数に等しい.
2つ目のRogers-Ramanujanの恒等式
においても同様に,
のの係数はの長さ以下の分割の個数を表しており,
は-差的かつであるような分割と
によって1対1に対応する. よって,
のの係数はの以上の和因子だけからなる-差的な分割の個数に等しい. つまり, 以下を得る.
Rogers-Ramanujanの分割定理2
の分割で和因子がを法としてと合同なものからなるものの個数は, の以上の和因子だけからなる-差的な分割の個数に等しい.
このように, 級数の等式を用いて自然数の分割の間の非自明な組合せ論的な等式を導出することができるのは興味深いと思う.