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Rogers-Ramanujanの分割定理

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自然数の分割N=λ1++λm,λ1λm>0に対して, 各λiをその和因子という. 以下, 分割を(λ1,,λm)のように書いたとき, λ1λm>0であるとして, そのときのmをその分割の長さという. 後で用いる分割の性質を一つ定義しておく.

自然数の分割(λ1,,λm)d-差的であるとは全ての1im1に対し, λiλi+1dであることをいう.

Rogers-Ramanujanの恒等式
0nqn2(q;q)n=1(q,q4;q5)0nqn2+n(q;q)n=1(q2,q3;q5)
を分割定理として書き換えることを考える. まず, 1つ目の式
0nqn2(q;q)n=1(q,q4;q5)
の右辺は
1(q,q4;q5)=0n(0iq(5n+1)i)(0jq(5n+4)j)
と表されるので, そのqNの係数はNの分割であって, その和因子が5を法として1または4と合同なものの個数を与えている. 左辺は
qn2(q;q)n=qn2k=1n(0jqkj)
qNの係数はNn2n以下の和因子による分割の個数を与えている. Young図形の共役を考えることによって, これはNn2の長さn以下の分割の個数に等しい. そのような分割
Nn2=λ1++λn,λ1λn0
は長さnの2-差的な分割
N=(λ1+2n1)+(λ2+2n3)++(λn+1)
に書き換えることができ, 逆に長さnの2-差的な分割(λ1,,λn)が与えられたとき,
Nn2=(λ1(2n1))+(λ2(2n3))++(λn1)
Nn2の長さn以下の分割を与える. よって,
qn2(q;q)n
qNの係数はNの長さn2-差的な分割の個数を与えている. よって, それらを全て足し合わせた
0nqn2(q;q)n
qNの係数はN2-差的な分割の個数に等しい. よって次を得る.

Rogers-Ramanujanの分割定理1

Nの分割で和因子が5を法として1,4と合同なものからなるものの個数は, N2-差的な分割の個数に等しい.

2つ目のRogers-Ramanujanの恒等式
0nqn2+n(q;q)n=1(q2,q3;q5)
においても同様に,
qn2+n(q;q)n
qNの係数はNn2nの長さn以下の分割の個数を表しており,
Nn2n=λ1++λn,λ1λn0
2-差的かつλn2であるような分割と
N=(λ1+2n)+(λ2+2n2)++(λ1+2)
によって1対1に対応する. よって,
qn2+n(q;q)n
qNの係数はN2以上の和因子だけからなる2-差的な分割の個数に等しい. つまり, 以下を得る.

Rogers-Ramanujanの分割定理2

Nの分割で和因子が5を法として2,3と合同なものからなるものの個数は, N2以上の和因子だけからなる2-差的な分割の個数に等しい.

このように, q級数の等式を用いて自然数の分割の間の非自明な組合せ論的な等式を導出することができるのは興味深いと思う.

投稿日:22日前
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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