1

【相対論】相対論的流体

210
0

 相対論における流体について基本的なことを解説します。色んな教科書や論文に書いてることです。

 相対論的流体を扱う場合はLagrangianを与えてE-L方程式を出すという方法はあまりしません。もちろん変分法で扱うこともできますがエネルギー運動量テンソルを与える方法が多いです。この記事でもエネルギー運動量テンソルの方法で述べます。エネルギー運動量テンソルTabが与えられたら局所的なエネルギー保存則aTab=0が流体の満たすべき運動方程式を与えます。

 本記事の議論は4次元時空(M,g)上で考えます。

準備

 相対論的流体を論じるための基本的事項です。まずunit timelikeベクトル場uに垂直な面への射影は

hba:=δba+uaub

で与えられます。テンソルSabuに直交する成分は
(Sab):=Scdhachbd
で与えられます。

 またuの微分は次のように分解することができます。aubhcahdb=cud+ucuaaudが成り立つので、aubuに平行な成分と垂直な成分に分解すると、
aub=cudhachbduaAb, (Aa=uua)
となり、垂直成分を対称、反対称パートに分解すると
=((cud)+[cud])hachbduaAb
となり、対称パートをトレースパートとトレースレスパートに分けると
=((cud)13θhcd)hachbd+[cud]hachbduaAb+13θhab, θ=aua
となります。ここで

θ=div(u):expansion
A=uu:acceleation
σμν=((μuν)13θhαβ)hμαhνβ:shear
ωμν=[αuβ]hμαhνβ:rotation

とおくと、

aub=ωab+σabuaAb+13θhab

が得られます。

完全流体

 Euler流体を相対論的に拡張したものが完全流体です。

完全流体

時空(M,g)において、完全流体とは2つの非負スカラー関数ρ,Pとunit timelikeベクトル場uの組(u,ρ,P)であって、そのエネルギー運動量テンソルが
Tab=ρuaub+Phab
で与えれられるような物質のことである。

 完全流体の満たすべき方程式aTab=0を具体的に書き下すと以下のようになります。
aTab=u(ρ)ub+ρdiv(u)ub+ρuub+u(P)ub+Pdiv(u)ub+Puub+bP=0
uに平行な方向と垂直な方向に分解すると、平行な成分は
aTabub=u(ρ)ρdiv(u)u(P)Pdiv(u)+u(P)=u(ρ)ρdiv(u)Pdiv(u)=0
となり、垂直な成分は
aTachbc=ρuub+Puub+(bP)=0
となります。よって完全流体の運動方程式は

完全流体の運動方程式

u(ρ)=(ρ+P)aua(ρ+P)uua=(aP)

となります。

弱重力近似

 重力が非常に弱いとき計量は
g(1+2Φ(x,y,z))dt2+dx2+dy2+dz2, |Φ|<<1
速度場u
u01, vi:=ui0
ρ,P
ρ>>P
と近似します。計量に関してはΦは1より十分小さいですが、その微分はそんなに小さくないかもという気分があります。

 平行成分は
dρdt=div(ρv)
となり、垂直成分は
(ρ+P)uuiρ(dvidtΓ0i0+vvi)ρ(dvidt+iΦ+vvi)=iPρDvdt=gradPρgradΦ
となりEuler流体となります。

粘性流体

 続いて完全流体に粘性項を加えたものが相対論的粘性流体です。

相対論的粘性流体

時空(M,g)において、粘性流体とは非負スカラー関数ρ,P,μ,λとunit timelikeベクトル場uの組(u,ρ,P,μ,λ)であって、そのエネルギー運動量テンソルT
Tabpf=ρuaub+PhabTabvis=2μσabλθhabT=Tpf+Tvis
で与えれられるような物質のことである。

 aTabpf=0は前の節で計算したので、Tvisについてだけ計算します。
aTabvisub=a(2μσab+λθhab)ub=2μσabaub+λθhabaub=2μσabσab+λθ2aTabvishcb=aTacvis+(2μσabσab+λθ2)uc
より運動方程式は

粘性流体の運動方程式

u(ρ)(ρ+P)div(u)+2μ||σ||2+λθ2=0(ρ+P)uub+(bP)(a(2μσab+λθhab))=0

となります。

弱重力近似

 垂直方向の運動方程式を弱重力近似することでNavier–Stokes方程式が出てきます。完全流体と同様の近似を使うと
ρDvidt+ρgrad Φ+(grad P)ij(2μσji+λθhji)=0
となります。最後の項を計算していきます。
j(2μσji+λθhji)=2(jμ)σji+μj(jui+iuj23θhij)+i(λθ)=2(jμ)σji+μ(jjui+jiuj23iθ)+i(λθ)=2(jμ)σji+μ(jjui+ijuj)23μiθ+i(λθ)=2(jμ)σji+μΔvi+13μiθ+i(λθ)
さらに
2(grad μ)jσji=(grad μ)j(jvi+ivj23θhij)=(grad μ)jjvi+i((grad μ)jvj)(i(grad μ)j)vj23θ(grad μ)i
であり、
rot(v×grad μ)i=ϵijkj(ϵklmvlmμ)=(δilδjmδjlδim)j(vlmμ)=m(vimμ)l(vliμ)=(grad μ)jjvi+(Δμ)viθ(grad μ)i(ilμ)vl (grad μ)jjvi(ilμ)vl=rot(v×grad μ)i(Δμ)vi+θ(grad μ)i
を使うと
2(grad μ)jσji=i((grad μ)jvj)23θ(grad μ)irot(v×grad μ)i(Δμ)vi+θ(grad μ)i=i((grad μ)jvj)+13θ(grad μ)i+rot(v×grad μ)i(Δμ)vi
となるから、
ρDvidt=(grad P)i+μΔvi+λ(grad θ)i+13μ(grad θ)i+13θ(grad μ)i+θ(grad λ)i+i((grad μ)jvj)+rot(v×grad μ)i(Δμ)viρ(grad Φ)i
となります。これはNavier-Stokes方程式です(係数が標準的なものと少し違いますが)。

投稿日:2023129
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Submersion
Submersion
98
30082
専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 準備
  2. 完全流体
  3. 弱重力近似
  4. 粘性流体
  5. 弱重力近似