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大学数学基礎解説
文献あり

√2が無理数であることの背理法をつかわない証明

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$$\newcommand{Ast}[0]{\operatorname{Ast}} \newcommand{Aut}[0]{\operatorname{Aut}} \newcommand{Hom}[0]{\operatorname{Hom}} \newcommand{Im}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{Max}[0]{\operatorname{Max}} \newcommand{Spec}[0]{\operatorname{Spec}} $$

$\sqrt{2}$は無理数

$\sqrt{2}$が無理数であることはご存じの方が多いとおもいます. 証明には通常背理法が用いられますが, ここでは背理法を使わずに証明しようと思います. 一応自分で考えたものなのですが, ネットや本などで同じ・似ているものをみたことがあるよというひとはおしえていただきたいです.

次の補題が鍵になります.

有理数$\alpha$がある整係数モニック多項式の根になるならば, $\alpha$は整数である.

仮定により, $\mathbb{Z}[\alpha]$$\mathbb{Z}$加群として有限生成である (証明はMatsなど). この生成系の元は全て有理数だから, ある正の整数$a$が存在して$a \mathbb{Z}[\alpha] \subseteq \mathbb{Z}$となる. したがって, $\alpha = p / q$とおくと, 任意の正の整数$\ell$に対して
$$ a \left(\frac{p}{q}\right)^\ell = a \alpha^\ell \in \mathbb{Z} \text{, } $$
よって$q^\ell \mid a \; (\forall \ell \ge 0)$, ゆえに$q = \pm 1$, $\alpha = \pm p \in \mathbb{Z}$.

この補題を利用すれば, $\sqrt{2}$が無理数であることがすぐに証明できます.

$1 < \sqrt{2} < 2$だから$\sqrt{2}$は有理整数ではない. また, $\sqrt{2}$は整係数モニック多項式$X^2 - 2$の根だから補題により$\sqrt{2} \notin \mathbb{Q}$である. すなわち, $\sqrt{2}$は無理数である.

ちょっと一般化

$\sqrt{2}$が無理数であることの証明を, 背理法を用いずに示すことができました. ところでこの証明を少し眺めてみると, $\sqrt{2}$に限らず, $\sqrt{m}$や, $\sqrt[n]{m}$につかうことができそうな気がします. そこで, まずは定理「$\sqrt{2}$は無理数である」を一般化した定理を用意しましょう.

$m, n$を正の整数とする. このとき$\sqrt[n]{m} \in \mathbb{Z} \iff \sqrt[n]{m} \in \mathbb{Q}$.

ここでもやはり上で示した補題が鍵となります.

($\Rightarrow$)は自明.
($\Leftarrow$) $\sqrt[n]{m}$は整係数モニック多項式$X^n - m$の根だから, 仮定と補題により$\sqrt[n]{m} \in \mathbb{Z}$.

とても簡単に示すことができました!

参考文献

[1]
松村英之, 復刊 可換環論, 共立出版, 2000
投稿日:629
更新日:77
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Anko7919
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