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大学数学基礎解説
文献あり

東大院試04-A7

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問題

$M(n,\mathbb{R})$を実$n$次正方行列全体の集合とする.$\mathbb{R}$上で定義された$C^\infty$級の行列値関数$\Phi:\mathbb{R}\rightarrow M(n,\mathbb{R})$を考える.対称行列$\Phi(s)+{}^t\Phi(s)$の最大固有値を$\lambda(s)$とする.また,$C^\infty$級のベクトル値関数$\mathbf{X}:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}^n$は微分方程式
$$\frac{d\mathbf{X}}{ds}(s)=\Phi(s)\mathbf{X}(s)$$
を満たすものとする.$\lambda(s)$が条件
$$\int_0^\infty|\lambda(s)|ds<\infty$$
を満たせば,$\mathbf{X}(s)\,\,(s\ge0)$は有界であることを示せ.

復習(?)

数域半径

$w(A)=\sup\{|\langle Ax,x\rangle| ;||x||=1\}$$A$の数域半径と呼ぶ.

スペクトル半径

$n$次行列$A$の固有値を$\lambda_1,\cdots,\lambda_n$とし,
$$\rho(A)=\max_i|\lambda_i|$$
とおく.$\rho(A)$$A$のスペクトル半径と呼ぶ.

明らかに,$\rho(A)\leq w(A)$が成り立ちます.

正規行列

$A^*$$A$の共役転置とする.行列$A$$AA^*=A^*A$を満たすとき,$A$を正規行列という.

ユニタリ行列

行列$U$$U^*U=UU^*=I$を満たすとき,$U$をユニタリ行列という.

実は次の定理が成り立ちます.

$A$が正規行列のとき,$\rho(A)=w(A)$が成り立つ.

正規行列はユニタリ行列で対角化できるので,ユニタリ行列$U$が存在して$A=U^*\Lambda U$と書ける.この時,$||x||=1$について,
$$\langle Ax,x\rangle=\langle U^*\Lambda Ux,x\rangle=\langle\Lambda Ux,Ux\rangle$$
で,$U$がユニタリ行列であることから
$$\sup\{|\langle Ax,x\rangle|;||x||=1\}=\sup\{|\langle \Lambda x,x\rangle|;||x||=1\}\leq\rho(A)$$
最後の不等式は$\langle\Lambda x,x\rangle=\lambda_1x_1^2+\lambda_2x_2^2+\cdots+\lambda_nx_n^2$で,$x_1^2+\cdots+x_n^2=1$であることから導かれる.
よって$\rho(A)\leq w(A)$と合わせて$\rho(A)= w(A)$が分かる.

解答

$||\mathbf{X}(s)||^2={}^t\mathbf{X}(s)\mathbf{X}(s)$を考える.微分すると,
$$\frac{d||\mathbf{X}||^2}{ds}=\langle({}^t\Phi+\Phi)\mathbf{X},\mathbf{X}\rangle=|\lambda(s)|||\mathbf{X||^2} $$
である(最大固有値という言葉を絶対値が最大の固有値と解釈した).よってこの微分方程式を解くと,
$$||\mathbf{X}(s)||^2=||\mathbf{X}(0)||^2\exp\left(\int_0^s |\lambda(t)|dt\right)$$
が分かるので,問題の条件から$\mathbf{X}(t)\,(t\ge0)$は有界.
$$ $$

参考文献

[1]
P.D.ラックス, ラックス 線形代数 
投稿日:1日前

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投稿者

はじめまして!楽しい記事を書ければと思いますので、よろしくお願いします。

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