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計量テンソルの微分・変分公式

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はじめに

 場の理論では計量テンソルgμνによる微分・変分の計算が必要になることがある。例えば、エネルギー運動量テンソルは、

Tμν=4πgδSδgμν

と定義される(定数部分のとり方は色々ある。)

 本稿では、このような計算を行うための公式を整理することにしたい。

対称テンソルによる微分の定義

 場の変分も結局は(偏)微分の計算に帰着されるので、計量テンソルによる微分について考えていく。計量テンソルの対称性gμν=gνμを考慮して、定義するには少し工夫が必要である。

対称テンソルによる微分

対称テンソルの空間をD={(gμν)μ,ν=1,2,,n:gμν=gνμR}とおく。また、Dの開部分集合Df上の関数f:DfRがあるとする。

ここで、gDf,hD,ϵRに対して、ADが存在して、

f(g+ϵh)=f(g)+ϵAμνhμν+O(ϵ2)

とできるとする(重複添字は和をとる。以下同じ。)。

このとき、対応gA

Aμν=f(g)gμν

とかく。

公式

 基本的な公式を3つあげておく。なお、以下ではgμνの逆行列をgμνと表すことにする。

要素の微分

f:ggρσに対して、fgμν=12δρμδσν+12δρνδσμとなる。つまり、

gρσgμν=12δρμδσν+12δρνδσμ

逆行列の微分

f:ggρσに対して、fgμν=12gρμgσν12gρνgσμとなる。つまり、

gρσgμν=12gρμgσν12gρνgσμ

行列式の微分

f:gdet(g)に対して、fgμν=det(g)gμνとなる。つまり、

det(g)gμν=det(g)gμν

(概略)
[公式1]

f(g+ϵh)=gρσ+ϵhρσ=gρσ+ϵδρμδσνhμν=gρσ+12ϵ(δρμδσν+δρνδσμ)hμν

より明らか。

[公式2]

(g+ϵh)1=(1+ϵg1h)1g1=g1ϵg1hg1+O(ϵ2)

を整理すればわかる。二つ目の等号は、Neumann級数展開である。

[公式3]

det(g+ϵh)=det(g)det(1+ϵg1h)=det(g)det(eϵg1h)+O(ϵ2)=det(g)etr(ϵg1h)+O(ϵ2)=det(g)+ϵdet(g)tr(g1h)+O(ϵ2)

よりわかる。

投稿日:2023521
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yuska
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