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大学数学基礎解説
文献あり

ガウスの補題:原始多項式どうしの積もまた原始多項式

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今回は

ガウスの補題

$f(x), g(x)\in{\mathbb{Z}[x]}$がともに原始多項式でならば, $f(x)g(x)$も原始多項式である。

を証明します。

準備

原始多項式

$f(x)\in\mathbb{Z}[x]$が原始多項式であるとは, $f(x)$のどの係数も割り切る素数が存在しないことである。

原始多項式とそうでない例

$x^{2}+4x+3, 4x^{3}+7x^{2}+11x+9$は原始多項式である。一方, $2x^{2}+4x+6, 3x^{3}+6x^{2}+12x+6$は原始多項式でない。

環の準同型写像

$R, R^{\prime}$を環とする。写像$f:R\to{R^{\prime}}$
\begin{align*} f(1_{R})=1_{R^{\prime}} \end{align*}
かつ, 任意の$x, y\in{R}$に対し
\begin{align*} f(x+y)=f(x)+f(y) \end{align*}
かつ
\begin{align*} f(xy)=f(x)f(y) \end{align*}
を満たすとき,$f$は環の準同型写像であるという。

この記事では, 環$A$に対しその乗法単位元を$1_{A}$と書き, 加法単位元は$0_{A}$と書くことにします。

$\sigma:R\to{R^{\prime}}$を環の準同型写像とする。
\begin{align*} R[x]\ni{f(x):=\sum_{i=0}^{n}a_{i}x^{i}} \end{align*}
に対して
\begin{align*} R^{\prime}[x]\ni{\sigma^{\ast}{f(x)}:=\sum_{i=0}^{n}\sigma(a_{i})x^{i}} \end{align*}
により定義される写像$\sigma^{\ast}:R[x]\to{R^{\prime}[x]}$は環の準同型写像である。

$\sigma$が環の準同型写像であることを利用するだけ。

\begin{align*} \sigma^{\ast}(1_{R[x]})=\sigma(1_{R})x^{0}=1_{R^{\prime}}x^{0}=1_{R^{\prime}[x]} \end{align*}

\begin{align*} R[x]\ni{f(x):=\sum_{i=0}^{n}a_{i}x^{i}}, g(x):=\sum_{i=0}^{n}b_{i}x^{i} \end{align*}
に対して

\begin{align*} \sigma^{\ast}(f(x)+g(x)) &=\sum_{i=0}^{n}\sigma(a_{i}+b_{i})x^{i}\\ &=\sum_{i=0}^{n}\sigma(a_{i})x^{i}+\sum_{i=0}^{n}\sigma(b_{i})x^{i}\\ &=\sigma^{\ast}(f(x))+\sigma^{\ast}(g(x)), \end{align*}

\begin{align*} \sigma^{\ast}(f(x)g(x))&=\sum_{i+j=0}^{2n}\sigma(a_{i}b_{j})x^{i+j}\\ &=\sum_{i=0}^{n}\sum_{j=0}^{n}\sigma(a_{i})\sigma(b_{j})x^{i+j}\\ &=\sum_{i=0}^{n}\sum_{j=0}^{n}\sigma(a_{i})x^{i}\sigma(b_{j})x^{j}\\ &=\sum_{i=0}^{n}\sigma(a_{i})x^{i}\sum_{j=0}^{n}\sigma(b_{j})x^{j}\\ &=\sigma^{\ast}(f(x))\sigma^{\ast}(g(x)) \end{align*}
よって, $\sigma^{\ast}$は環の準同型写像である。

ガウスの補題の証明

ガウスの補題(再掲)

$f(x), g(x)\in{\mathbb{Z}[x]}$がともに原始多項式でならば, $f(x)g(x)$も原始多項式である。

$f(x), g(x)\in\mathbb{Z}[x]$が原始多項式だが, $f(x)g(x)$は原始多項式でないとする。$f(x)g(x)$のどんな係数も割り切る素数$p$をとる。$\sigma:\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}_{p}$を標準的な準同型写像
\begin{align*} a\mapsto{\sigma(a)=a+(p)} \end{align*}
で定める。そして,
\begin{align*} \mathbb{Z}[x]\ni{f(x):=\sum_{i=0}^{n}a_{i}x^{i}} \end{align*}
に対して
\begin{align*} \mathbb{Z}_{p}[x]\ni{\sigma^{\ast}({f(x))}:=\sum_{i=0}^{n}\sigma(a_{i})x^{i}} \end{align*}
で定まる$\sigma^{\ast}:\mathbb{Z}[x]\to\mathbb{Z}_{p}[x]$を考える。命題2より$\sigma^{\ast}$は環の準同型写像である。すると, $p$$f(x)g(x)$のどんな係数でも割り切るのだから$\sigma^{\ast}(f(x)g(x))=0_{\mathbb{Z}_{p}[x]}$である。ここで, $\sigma^{\ast}$は環の準同型写像であることに注意すれば, $\sigma^{\ast}(f(x)g(x))=\sigma^{\ast}(f(x))\sigma^{\ast}(g(x))$なので, $\sigma^{\ast}(f(x))\sigma^{\ast}(g(x))=0_{\mathbb{Z}_{p}[x]}$である。 一方, $f(x), g(x)$はともに原始多項式なので, $\sigma^{\ast}(f(x))\neq{0_{\mathbb{Z}_{p}[x]}}$かつ$\sigma^{\ast}(g(x))\neq{0_{\mathbb{Z}_{p}[x]}}, $つまり$\sigma^{\ast}(f(x))\sigma^{\ast}(g(x))\neq{0_{\mathbb{Z}_{p}[x]}}$である。$\mathbb{Z}_{p}[x]$が整域であることも鑑みれば, これらは矛盾である。

参考文献

[1]
新妻弘, 独習ガロア理論, 近代科学社
[2]
雪江明彦, 代数学2 環と体とガロア理論 (代数学シリーズ), 日本評論社
投稿日:527
更新日:527
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高校数学の問題を主に解説していきたい。アウトラインだけ作って投稿する癖があるので、後で時間があるときに加筆修正。

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