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大学数学基礎解説
文献あり

3200記念問題

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はじめに

 この記事は私のX(旧Twitter)のフォロワー数が $3200$ 人を突破したことを記念して作った問題の解説記事です。

 まず問題を紹介し、それから解答を解説します。

フォロワー $3200$ 人突破記念問題

 次のように、正方形のタイルを規則的に並べていくことを考えます。
 つまり、自然数 $n$ に対し、一辺の長さが $2n-1$ の正方形の内部に、一片の長さが $4$ つずつ少ない正方形を並べます。
 このとき、必要なタイルの枚数を $a(n)$ で表すことにします。

正方形のタイルを規則的に並べる 正方形のタイルを規則的に並べる

 このとき、以下の $(1),(2)$ を解いてください。

$(1)$ $a(40)$ を求めてください。

$(2)$ ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)}}$ を求めてください。

解答編

(1) の解答

$(1)$ $a(40)$ を求めてください。

解法1

3200個の正方形 3200個の正方形

 実際に並べると図 $2$ のようになります。頑張って数えれば $3200$ 個であることがわかります。
 ……冗談です。
 各正方形に使われるタイルの数が等差数列になっていることから、等差数列の和の公式で求めるのが一番簡単だと思います。

 ${\displaystyle \begin{align} a(40)&=8+24+40+\cdots+312\\ &=\frac{20(8+312)}{2}\\ &=3200 \end{align} }$

(2) の解答

$(2)$ ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)}}$ を求めてください。

 まず、$a(n)$$n$ の式で表します。
 偶数のときと奇数のときで場合分けします。

$n$ が偶数のとき】

  ${\displaystyle \begin{align} a(n)&=8+24+40+\cdots+(8n-8)\\ &=\frac{\frac{n}{2}(8+(8n-8))}{2}\\ &=2n^2 \end{align} }$

$n$ が奇数のとき】
 一辺が $1$ の正方形だけは等差数列を構成しないので例外処理が必要です。

  ${\displaystyle \begin{align} a(n)&=1+\left(0+16+32+\cdots+(8n-8)\right)\\ &=1+\frac{\frac{n+1}{2}(0+(8n-8))}{2}\\ &=2n^2-1 \end{align} }$

まとめるとこうなります。

  ${\displaystyle a(n)=\begin{cases} 2n^2&(n:\mathrm{even})\\ 2n^2-1&(n:\mathrm{odd}) \end{cases} }$

 まず、$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)}$が収束することを確認しましょう。

 $n\ge1$ のとき $a(n)\ge n^2$ ですから

  ${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)} &\le \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}=\frac{\pi^2}{6}\\ \end{align} }$

 となります。
 すなわち、この級数は上に有界で単調増加しますので、収束します。各項は正ですから、絶対収束します。
 絶対収束する級数は和の順番を変えても同じ値に収束しますので、級数を「偶数項の和」と「奇数項の和」に分けます。

 ${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)} &= \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n)^2}+ \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n-1)^2-1}\\ \end{align} }$

「偶数項の和」はゼータ関数の特殊値に帰結して

 ${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n)^2} &=\frac{\zeta(2)}{8}\\ &=\frac{\pi^2}{48}\\ \end{align} }$

「奇数項の和」はちょっと面倒ですが以下のように計算できます。

まず次の補題を示します。

${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2\pi^2 -z^2} =\frac{1}{2z^2}-\frac{1}{2z}\cot(z) }$

 $\sin$ の無限積表示から始めます。

 ${\displaystyle\sin z = z\prod_{n=1}^{\infty}\left(1-\frac{z^2}{n^2\pi^2}\right)}$

 (この表示自体、sin z を†因数分解†したみたいで素敵ですね!それはともかく)両辺の対数をとります。

 ${\displaystyle\log\sin z = \log z+\sum_{n=1}^{\infty}\log\left(1-\frac{z^2}{n^2\pi^2}\right)}$

 両辺を微分します。

 ${\displaystyle \begin{align} \cot z &= \frac{1}{z}+\sum_{n=1}^{\infty}\frac{-\frac{2z}{n^2\pi^2}}{1-\frac{z^2}{n^2\pi^2}}\\ &= \frac{1}{z}-2z\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2\pi^2-z^2}\\ \end{align} }$

 整理すると

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2\pi^2 -z^2} =\frac{1}{2z^2}-\frac{1}{2z}\cot(z) }$

 補題 $1$$z=\pi x$ を代入して両辺に $2\pi^2 x$ を乗じます。
 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2x}{n^2-x^2} =\frac{1}{x}-\pi\cot{\pi x} }$

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2x}{n^2-x^2} =\frac{1}{x}-\pi\cot{\pi x} }$

 補題 $2$$x=\frac{1}{\sqrt2}$ を代入してから、次のように変形していきます。

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{\sqrt{2}}{n^2-\frac{1}{2}} =\sqrt{2}-\pi\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}} }$

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2\sqrt{2}}{2n^2-1} =\sqrt{2}-\pi\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}} }$

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2n^2-1} =\frac{1}{2}-\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}} }$

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2n^2-1} =\frac{1}{2}-\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}} }$

 補題 $2$$x=\frac{1}{2\sqrt2}$ を代入してから、次のように変形していきます。

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{\frac{1}{\sqrt{2}}}{n^2-\frac{1}{8}} =2\sqrt{2}-\pi\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} }$

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{4\sqrt{2}}{8n^2-1} =2\sqrt{2}-\pi\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} }$

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{4\sqrt{2}}{2(2n)^2-1} =2\sqrt{2}-\pi\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} }$

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n)^2-1} =\frac{1}{2}-\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} }$

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n)^2-1} =\frac{1}{2}-\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} }$

 補題 $3$ の両辺から補題 $4$ の両辺を引くと次のようになります。

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2n^2-1} -\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n)^2-1} =\left(\frac{1}{2}-\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}}\right) -\left(\frac{1}{2}-\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}\right) }$

 左辺に注目します。左辺第 $2$ 項は左辺第 $1$ 項の偶数項の和ですから、引き算の残りは奇数項の和となります。つまり

 ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2n^2-1} -\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n)^2-1}= \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n-1)^2-1} }$

 後は、右辺を整理していきます。

 ${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n-1)^2-1} &=\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}-\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}}\\ &=\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{ 2\sqrt{2}}}-\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\cdot\frac{1}{2}\left(\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}-\tan{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}\right)\\ &=\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\tan{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}\\ \end{align} }$

$2$ 行目の変形に $\cot$ の倍角公式
 ${\displaystyle \cot(2x)= \frac{1}{2}\left(\cot(x)-\tan(x)\right) }$

を使いました。

 ${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n-1)^2-1} &=\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\tan{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}\\ \end{align} }$

 これで問題の級数の和を求める準備ができました!

 ${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)} &=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n)^2}+ \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n-1)^2-1}\\ &=\frac{\pi^2}{48}+\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\tan{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} \end{align} }$

問題の答え

 ${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)} &=\frac{\pi^2}{48}+\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\tan{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} \end{align} }$

おわりに

 あらためて、$a(n)$ の成長の様子を観察してみましょう。

画像の名前 画像の名前

 まるで花火のようにも見えておめでたいですね。
 これからもどんどんフォロワーさんの輪がこんな風に広がっていったらいいな、と思います。
 今後ともよろしくお願いします!

参考文献

投稿日:20231228
OptHub AI Competition

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apu_yokai
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