この記事は私のX(旧Twitter)のフォロワー数が $3200$ 人を突破したことを記念して作った問題の解説記事です。
フォロワー3200人突破記念問題!
— apu (@apu_yokai) December 24, 2023
数学の問題です。画像の問題を解いてね!
難易度は
(1)EASY
(2)HARD pic.twitter.com/VrUWf5ca6Y
まず問題を紹介し、それから解答を解説します。
次のように、正方形のタイルを規則的に並べていくことを考えます。
つまり、自然数 $n$ に対し、一辺の長さが $2n-1$ の正方形の内部に、一片の長さが $4$ つずつ少ない正方形を並べます。
このとき、必要なタイルの枚数を $a(n)$ で表すことにします。
正方形のタイルを規則的に並べる
このとき、以下の $(1),(2)$ を解いてください。
$(1)$ $a(40)$ を求めてください。
$(2)$ ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)}}$ を求めてください。
$(1)$ $a(40)$ を求めてください。
3200個の正方形
実際に並べると図 $2$ のようになります。頑張って数えれば $3200$ 個であることがわかります。
……冗談です。
各正方形に使われるタイルの数が等差数列になっていることから、等差数列の和の公式で求めるのが一番簡単だと思います。
${\displaystyle \begin{align} a(40)&=8+24+40+\cdots+312\\ &=\frac{20(8+312)}{2}\\ &=3200 \end{align} }$
$(2)$ ${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)}}$ を求めてください。
まず、$a(n)$ を $n$ の式で表します。
偶数のときと奇数のときで場合分けします。
【$n$ が偶数のとき】
${\displaystyle \begin{align} a(n)&=8+24+40+\cdots+(8n-8)\\ &=\frac{\frac{n}{2}(8+(8n-8))}{2}\\ &=2n^2 \end{align} }$
【$n$ が奇数のとき】
一辺が $1$ の正方形だけは等差数列を構成しないので例外処理が必要です。
${\displaystyle \begin{align} a(n)&=1+\left(0+16+32+\cdots+(8n-8)\right)\\ &=1+\frac{\frac{n+1}{2}(0+(8n-8))}{2}\\ &=2n^2-1 \end{align} }$
まとめるとこうなります。
${\displaystyle a(n)=\begin{cases} 2n^2&(n:\mathrm{even})\\ 2n^2-1&(n:\mathrm{odd}) \end{cases} }$
まず、$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)}$が収束することを確認しましょう。
$n\ge1$ のとき $a(n)\ge n^2$ ですから
${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)} &\le \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}=\frac{\pi^2}{6}\\ \end{align} }$
となります。
すなわち、この級数は上に有界で単調増加しますので、収束します。各項は正ですから、絶対収束します。
絶対収束する級数は和の順番を変えても同じ値に収束しますので、級数を「偶数項の和」と「奇数項の和」に分けます。
${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)} &= \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n)^2}+ \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n-1)^2-1}\\ \end{align} }$
「偶数項の和」はゼータ関数の特殊値に帰結して
${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n)^2} &=\frac{\zeta(2)}{8}\\ &=\frac{\pi^2}{48}\\ \end{align} }$
「奇数項の和」はちょっと面倒ですが以下のように計算できます。
まず次の補題を示します。
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2\pi^2 -z^2} =\frac{1}{2z^2}-\frac{1}{2z}\cot(z) }$
$\sin$ の無限積表示から始めます。
${\displaystyle\sin z = z\prod_{n=1}^{\infty}\left(1-\frac{z^2}{n^2\pi^2}\right)}$
(この表示自体、sin z を†因数分解†したみたいで素敵ですね!それはともかく)両辺の対数をとります。
${\displaystyle\log\sin z = \log z+\sum_{n=1}^{\infty}\log\left(1-\frac{z^2}{n^2\pi^2}\right)}$
両辺を微分します。
${\displaystyle \begin{align} \cot z &= \frac{1}{z}+\sum_{n=1}^{\infty}\frac{-\frac{2z}{n^2\pi^2}}{1-\frac{z^2}{n^2\pi^2}}\\ &= \frac{1}{z}-2z\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2\pi^2-z^2}\\ \end{align} }$
整理すると
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2\pi^2 -z^2} =\frac{1}{2z^2}-\frac{1}{2z}\cot(z) }$
補題 $1$ に $z=\pi x$ を代入して両辺に $2\pi^2 x$ を乗じます。
${\displaystyle
\sum_{n=1}^{\infty}
\frac{2x}{n^2-x^2}
=\frac{1}{x}-\pi\cot{\pi x}
}$
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2x}{n^2-x^2} =\frac{1}{x}-\pi\cot{\pi x} }$
補題 $2$ に $x=\frac{1}{\sqrt2}$ を代入してから、次のように変形していきます。
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{\sqrt{2}}{n^2-\frac{1}{2}} =\sqrt{2}-\pi\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}} }$
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2\sqrt{2}}{2n^2-1} =\sqrt{2}-\pi\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}} }$
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2n^2-1} =\frac{1}{2}-\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}} }$
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2n^2-1} =\frac{1}{2}-\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}} }$
補題 $2$ に $x=\frac{1}{2\sqrt2}$ を代入してから、次のように変形していきます。
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{\frac{1}{\sqrt{2}}}{n^2-\frac{1}{8}} =2\sqrt{2}-\pi\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} }$
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{4\sqrt{2}}{8n^2-1} =2\sqrt{2}-\pi\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} }$
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{4\sqrt{2}}{2(2n)^2-1} =2\sqrt{2}-\pi\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} }$
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n)^2-1} =\frac{1}{2}-\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} }$
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n)^2-1} =\frac{1}{2}-\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} }$
補題 $3$ の両辺から補題 $4$ の両辺を引くと次のようになります。
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2n^2-1} -\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n)^2-1} =\left(\frac{1}{2}-\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}}\right) -\left(\frac{1}{2}-\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}\right) }$
左辺に注目します。左辺第 $2$ 項は左辺第 $1$ 項の偶数項の和ですから、引き算の残りは奇数項の和となります。つまり
${\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2n^2-1} -\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n)^2-1}= \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n-1)^2-1} }$
後は、右辺を整理していきます。
${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n-1)^2-1} &=\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}-\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{\sqrt{2}}}\\ &=\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\cot{\frac{\pi}{ 2\sqrt{2}}}-\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\cdot\frac{1}{2}\left(\cot{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}-\tan{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}\right)\\ &=\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\tan{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}\\ \end{align} }$
$2$ 行目の変形に $\cot$ の倍角公式
${\displaystyle
\cot(2x)=
\frac{1}{2}\left(\cot(x)-\tan(x)\right)
}$
を使いました。
${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2(2n-1)^2-1} &=\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\tan{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}}\\ \end{align} }$
これで問題の級数の和を求める準備ができました!
${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)} &=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n)^2}+ \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2(2n-1)^2-1}\\ &=\frac{\pi^2}{48}+\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\tan{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} \end{align} }$
${\displaystyle \begin{align} \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{a(n)} &=\frac{\pi^2}{48}+\frac{\pi}{4\sqrt{2}}\tan{\frac{\pi}{2\sqrt{2}}} \end{align} }$
あらためて、$a(n)$ の成長の様子を観察してみましょう。
画像の名前
まるで花火のようにも見えておめでたいですね。
これからもどんどんフォロワーさんの輪がこんな風に広がっていったらいいな、と思います。
今後ともよろしくお願いします!