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早稲田大学教育学部第2問(2024)の郡論を用いた解法

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早稲田大学教育学部第2問(2024)

3つの複素数$z_{1}, z_{2}, z_{3}$に関する条件$P$を次のように定める。

\begin{equation*} P:\left\{\, \begin{aligned} &z_{j}\neq{0}\quad (j=1, 2, 3)\\ &z_{1}\neq{z_{2}}\\ &z_{2}\neq{z_{3}}\\ &z_{3}\neq{z_{1}}\\ &\{z_{1}^{n}\mid n\in\mathbb{Z}\}=\{z_{2}^{n}\mid n\in\mathbb{Z}\}=\{z_{3}^{n}\mid n\in\mathbb{Z}\} \end{aligned} \right. \end{equation*}

次の問いに答えよ。
$(1)\quad$ 3つの複素数$z_{1}, z_{2}, z_{3}$が条件$P$を満たしているとする。このとき, $|z_{1}|=1$であることを示せ。また集合$\{z_{1}^{n}\mid n\in\mathbb{Z}\}$の要素の個数は有限であることを示せ。
$(2)\quad$ 条件$P$を満たす3つの複素数$z_{1}, z_{2}, z_{3}$のうち, 集合$\{z_{1}^{n}\mid n\in\mathbb{Z}\}$の要素の個数が最小となるものを考える。このとき, 集合$\{z_{1}^{n}\mid n\in\mathbb{Z}\}$を求めよ。

前提知識や記号の注意
  • 群論の知識はある程度もっている読者を想定しています。
  • $H$の位数を$|H|$で表します。
  • $\mathbb{C}^{\times}\coloneqq{\mathbb{C}-\{0\}}$は我々が習ってきた「掛け算の積」を「積」として群になります。
  • $H$の任意の元$h$に対し, $\langle{h}\rangle\coloneqq\{h^{n}\mid n\in\mathbb{Z}\}$とします。
  • 加法群$\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\coloneqq\{0, 1, \cdots, m-1\}$と元を簡単な表記にします。
  • $i$は虚数単位とします。
  • $e$はネイピア数とします。

$(1)\quad $$G\coloneqq{\{z_{1}^{n}\mid n\in\mathbb{Z}\}}$$\mathbb{C}^{\times}$の部分群である。なぜなら

  • $G$は演算について閉じている(明らか)
  • $G$は結合法則が成り立つ(明らか)
  • $G$$\mathbb{C}^{\times}$の単位元$1=z_{1}^{0}\in G$をもつ。
  • 任意の$z_{1}^{n}\in G$は, 逆元$z_{1}^{-n}\in G$をもつ。

だから。

\begin{align*} \therefore\, G\cong{\mathbb{Z}}または, \exists m\in{\mathbb{N}}, G\cong{\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}}. \end{align*}

しかし, $G\cong{\mathbb{Z}}$は実は成り立たない。これを背理法で示そう。$G\cong{\mathbb{Z}}$と仮定する。群同型$f:G\to{\mathbb{Z}}$を考える。$f(z_{i})=a_{j}\in\mathbb{Z}\quad (j=1, 2, 3)$とすると
\begin{align*} f(z_{j}^{n})=na_{j}\quad (n=1, 2, \cdots, ) \end{align*}
だから
\begin{align*} \langle z_{j}\rangle \cong a_{j}\mathbb{Z}. \end{align*}
\begin{align*} a_{j}\mathbb{Z}=\mathbb{Z} \end{align*}
となるには$a_{j}=-1, 1$でなければならないが, これは$f$が群同型であることに矛盾。よって, $G\cong{\mathbb{Z}}$は成り立たない。
\begin{align*} \therefore\quad \exists{m\in\mathbb{N}}, G\cong\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}. \end{align*}
よって, ラグランジュの定理を用いると
\begin{align*} z_{1}^{m}=1\quad \cdots(\ast). \end{align*}
\begin{align*} \therefore\quad|z_{1}|=1. \end{align*}

$(2)\quad $以下の方針で$G$を求めます。

  • $|G|\leqq{4}$となる$G$が存在しない
  • $|G|=5$となる$G$をすべて求める

$(\ast)$から, $|G|=m$のとき
\begin{align*} z_{1}=\exp\left(i\dfrac{2k\pi}{m}\right) \end{align*}
を満たす$m$と互いに素な$k\in\mathbb{N}$が存在。これは条件$P$から
\begin{align*} z_{j}=\exp\left(i\dfrac{2k_{j}\pi}{m}\right)\quad (j=1, 2, 3) \end{align*}
を満たす$m$と互いに素な$k_{j}\in\{1, 2, \cdots, m-1\}$が存在に主張を強めることができ, その上$z_{j}\quad (j=1, 2, 3)$が相異なるので$k_{j}$は相異なる。ゆえに$m\leqq{4}$である$G$は存在しない。しかし$m=5$のとき, $k_{1}=1, k_{2}=2, k_{3}=3$が条件を満たす。
\begin{align*} \therefore\quad G=\{e^{i\frac{2}{5}\pi}\mid n\in\mathbb{Z}\} \end{align*}
が求める$G$である。

投稿日:223
更新日:224
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投稿者

fancy
fancy
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自分の勉強用に投稿するのでn番煎じのものが多いよ

コメント

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