0

非可換な有限群の中心の位数について

404
0

ある有限群Gが与えられたとき、Gがアーベル群であればGの中心はGそのものですが、Gが非可換の場合には中心が自明な場合もあれば非自明な場合もあります。

Q.それでは非可換な有限群の中心は全体と比べてどのくらいの大きさなのでしょうか?
この問いに対して、次のことを示しました。

非可換な有限群の中心の位数

Gを非可換な有限群、Z(G)Gの中心とするとき、次が成り立つ。
|Z(G)|14|G|

この命題を示すことを目標とします。
尚、証明のステップは次の通りです。

  1. 剰余群G/Z(G)の位数が素数ならばGは可換群である。
  2. Gが非可換であることから、G/Z(G)の位数は4以上である。

各種定義・定理

まずは証明に用いる用語や定理について確認します。

群の中心

Gに対し、Z(G):={zG | zg=gz ,gG)} を群G中心という。

中心の元は群の全ての元と可換である必要があるので、群Gが非可換である場合はとても強い性質であるといえます。

有限群Gにおいて、|G|=pが素数ならば、Gは巡回群Cpと同型である。

特に巡回群は可換群です。この証明は次のラグランジュの定理を用いれば明らかです。

ラグランジュの定理

有限群Gの部分群をHとするとき、|H||G|の約数である。

正規部分群

Gの部分群Nが任意のgGに対してgNg1Nを満たすとき、NG正規部分群という。

特にZ(G)Gの正規部分群になります。

剰余群

Nを群Gの正規部分群とするとき、剰余類の集合G/N={gNgG}は演算を
(g1N)(g2N)=g1g2N
と定めることによって群をなす。この群G/N剰余群という。

Nが正規部分群であることで剰余類の集合における上記の二項演算がWell-definedとなります。特に、Nの定義によりgN=Ngであるので、右側剰余類でも左側剰余類でも同じものになります。
またこのとき、指数[G:N]について、
[G:N]=|G||N|
が成り立ちます。

命題1の証明

命題1を証明します。以下、Gは有限群とします。

[G:Z(G)]  G

【証明】[G:Z(G)]=pを素数とすると、|G/Z(G)|=pであるので、定理2より
 G/Z(G)Cp
である。よってあるgG/Z(G)
G=Z(G)gZ(G)g2Z(G)gp1Z(G)と表せるので、Gの任意の元x,yは、ある整数i,jz1,z2Z(G)によって
x=giz1,    y=gjz2
とそれぞれ表せる。すると
xy=giz1gjz2=gi+jz2z1=gjz2giz1=yx
より、x,yは可換である。x,yは任意であるので、Gは可換群である。

【証明(命題1)】Gは非可換な有限群であるとする。もし[G:Z(G)]=1なら、G=Z(G)となり、[G:Z(G)]=2,3なら補題4よりGは可換群となるため、いずれの場合も矛盾する。よって[G:Z(G)]4である。[G:Z(G)]=|G||Z(G)|より
 |Z(G)|14|G|
が成り立つ。

不等式の評価について

命題1で示した不等式による評価はどのくらい厳密なものなのでしょうか。
例えば、4次の二面体群D4は位数8の非可換な群です。この群の中心は単位元と180変換の2元からなるので、中心の位数は元の群であるD414の大きさになっています。これは命題1で等号が成り立つケースとなるため、より小さい値での評価は存在しないことが分かります。
今後の課題として、等号が成り立つ場合や中心が自明な場合に成り立つ条件は存在するか、中心以外の部分群においても位数を評価できるかなどが考えられます。
新しい結果が見つかれば記していきたいと思います。

投稿日:202428
更新日:202428
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

個人的な数学の研究で見つけた小さな結果などを載せていきます。ご質問やご指摘があれば教えて下さい。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 各種定義・定理
  2. 命題1の証明
  3. 不等式の評価について