ある有限群が与えられたとき、がアーベル群であればの中心はそのものですが、が非可換の場合には中心が自明な場合もあれば非自明な場合もあります。
Q.それでは非可換な有限群の中心は全体と比べてどのくらいの大きさなのでしょうか?
この問いに対して、次のことを示しました。
非可換な有限群の中心の位数
を非可換な有限群、をの中心とするとき、次が成り立つ。
この命題を示すことを目標とします。
尚、証明のステップは次の通りです。
- 剰余群の位数が素数ならばは可換群である。
- が非可換であることから、の位数は4以上である。
各種定義・定理
まずは証明に用いる用語や定理について確認します。
中心の元は群の全ての元と可換である必要があるので、群が非可換である場合はとても強い性質であるといえます。
有限群において、が素数ならば、は巡回群と同型である。
特に巡回群は可換群です。この証明は次のラグランジュの定理を用いれば明らかです。
正規部分群
群の部分群が任意のに対してを満たすとき、をの正規部分群という。
特にはの正規部分群になります。
剰余群
を群の正規部分群とするとき、剰余類の集合は演算を
と定めることによって群をなす。この群を剰余群という。
が正規部分群であることで剰余類の集合における上記の二項演算がWell-definedとなります。特に、の定義によりであるので、右側剰余類でも左側剰余類でも同じものになります。
またこのとき、指数について、
が成り立ちます。
命題1の証明
命題1を証明します。以下、は有限群とします。
【証明】を素数とすると、であるので、定理2より
である。よってあるで
と表せるので、の任意の元は、ある整数とによって
とそれぞれ表せる。すると
より、は可換である。は任意であるので、は可換群である。
【証明(命題1)】は非可換な有限群であるとする。もしなら、となり、なら補題4よりは可換群となるため、いずれの場合も矛盾する。よってである。より
が成り立つ。
不等式の評価について
命題1で示した不等式による評価はどのくらい厳密なものなのでしょうか。
例えば、4次の二面体群は位数の非可換な群です。この群の中心は単位元と変換の2元からなるので、中心の位数は元の群であるのの大きさになっています。これは命題1で等号が成り立つケースとなるため、より小さい値での評価は存在しないことが分かります。
今後の課題として、等号が成り立つ場合や中心が自明な場合に成り立つ条件は存在するか、中心以外の部分群においても位数を評価できるかなどが考えられます。
新しい結果が見つかれば記していきたいと思います。