ここでは東大数理の修士課程の院試の2013B01の解答例を解説していきます(ただし解説の都合で少し改変しています)。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
$2$次の一般線型群$\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_p)$の元$g$で$g^p=1$なるものの個数を求めなさい。
この$g$の固有値は$1$のみであるから、$g$は単位行列であるか、行列
$$
\begin{pmatrix}
1&1\\
0&1
\end{pmatrix}
$$
に共役なもののいずれかである。よって後者の個数を考えれば良い。いま$(1,1)$成分と$(2,2)$成分が等しい上三角行列からなる$G=\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_p)$の部分群$H$をとる。ここで左剰余類集合からの写像
$$
\begin{split}
f:G/H &\to \left\{A\in G\middle|\exists R\in G\text{ s.t. } A=R\begin{pmatrix}
1&1\\
0&1
\end{pmatrix}R^{-1}\right\}\\
P&\mapsto P\begin{pmatrix}
1&1\\
0&1
\end{pmatrix}P^{-1}
\end{split}
$$
を考える。これは左剰余類の代表元の取り方に依らないwell-definedな写像であり、定義から全射である。また$P,Q\in G$について同値関係
$$
\begin{split}
f(P)=f(Q)&\Leftrightarrow (P^{-1}Q)\begin{pmatrix}
1&1\\
0&1
\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}
1&1\\
0&1
\end{pmatrix}(P^{-1}Q)\\
&\Leftrightarrow P^{-1}Q\in H\\
&\Leftrightarrow PH=QH
\end{split}
$$
が成り立っているから、これによって$f$は全単射写像である。ここで$|G|=p(p-1)^2(p+1)$及び$|H|=(p-1)p$であるから、$|G/H|=p^2-1$である。よって$g^p=1$なる元の個数はこれらに単位元の分を足した$\color{red}p^2$個である。